第二十一話

「えー、僕が会長の隆太りゅうたです。でも、あんまり僕にたよらないでくださいね。へらへら。

 今年の『おとまかい』の会長は、ななみさんだから、ななみさんに頼ってくださいね。へらへら」


 すると、ななみさんは言いはなった。

「隆太君はちょっと頼りないけど、高等部の三年生はあと隆太君しかいないから、しょうがないのよ……。だから彼も言ったように、今年は私に頼ってね!」


 そして、ななみさんは続けた。

「まず、女子のはんと男子の班を作ります。女子の班は、女子中学生と女子小学生で作ります。また班長はんちょうは、中学部三年の福崎優希ふくさきゆうきさんにつとめてもらいます。

 そして男子の班は、男子中学生と男子小学生で作ります。班長は同じく、中学部三年の寺岡健太てらおかけんた君に務めてもらいます。二人とも、挨拶あいさつをお願いします」


 すると背が高く、ポニーテールの女子生徒が挨拶をした。

「中学部三年の優希です。一生懸命がんばりたいと思います。よろしくお願いします」と頭を下げた。すると、まばらな拍手はくしゅが起きた。


 そして中肉中背の男子生徒も、挨拶をした。

「中学部三年の健太です。がんばります。よろしくお願いします」

 やはり、まばらな拍手が起きた。


 二人の挨拶が終わると再び、ななみさんが話し出した。まずは女子の班と男子の班に、おかずの食材しょくざいを取ってきてもらいたい。高等部の生徒たちはペンションの中を掃除そうじして、ごはんく。また、このペンションには三日分の米があるが、不測ふそく事態じたいが起こった時のために米を節約せつやくする。そのため食事は、朝食と夕食だけ。それでは皆さん、それぞれの班長の指示しじしたがってください、と。


 すると優希さんと健太さんは、声を上げた。

「中学生と小学生の女子は、私のところにきてくださーい!」

「中学生と小学生の男子は、僕のところにあつまって!」


 私は健太さんのところに向かう宗一郎そういちろう翔真しょうま横目よこめで見ながら、優希さんのところに行った。


 早速さっそく、優希さんは指示を出した。

「これから山の中に、山菜さんさいを取りに行きます。なのでキッチンにある、ぬのふくろを持ってきてください!」


 私は、キッチンに行ってみた。すると台の上に、ガスコンロと電子レンジがあった。その下に袋があったので、それを持って優希さんのところにもどった。


 すると優希さんは、号令ごうれいを出した。

「皆、持ってきたみたいね。それじゃあ、山菜取りに出発しゅっぱつします! 山の中に行くから、歩きやすいようにスニーカーなどをいてください!」


 私はいつも履いているスニーカーを履いてペンションを出て、優希さんの後について行った。すると優希さんが、話しかけてきた。

「あなた、今年入学ことしにゅうがくしてきた生徒よね。確か、春花はるかさんよね?」


 私は、頭を下げた。

「はい。中條なかじょう春花といいます。よろしくお願いします」


 すると優希さんは、笑顔で答えた。

「いいっていいって、そんなにかしこまらなくても。リラックスしてね。

 あ、でも山菜を取るのは、がんばってね。じゃないと夕食のおかずが、っちゃうから」

「あ、はい、がんばります。でも、そんな時もあるんですか? つまり、おかずが少なくなることが?」


 すると真剣しんけんな表情で優希さんは、説明してくれた。山菜に関しては、あまりない。毎年、決まったところに生えているから。だから、生えているところをおぼえておけばいい。ちゃんと。あなたが中学生になったら、小学生にそこをおしえる必要があるから、と。


 私は少し、緊張きんちょうしながら答えた。

「はい。しっかり憶えようと思います!」

「うんうん。でも、さっきも言ったようにリラックスしてね。山菜を取ることを楽しんでね」

「はい!」


 すると優希さんは、表情を少しくもらせて話し出した。

「ま、おかずが減る可能性かのうせいは、べつにあるんだけどね……」

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