第8話 時越神社は異空間

みんなと別れた後、僕はシガと歩き出した。たかちゃんじゃないけど、横を歩いているシガは、かなりのイケメンだ。すれ違う女子の視線がいたい。「シガ、悪いがセミになってくれ。君と一緒に歩くと僕が引き立て役のようで嫌だ。」「ヒカル、それ、それだよ。人間ぽくって、それは良くない。他人と比べない。美的価値論なんて人それぞれ。異世界じゃ、会話と同じ、口で話さない。飾り。容姿も異世界じゃ自由に変身できる。究極はスライムだけどね。」「シガ、君の言っていることはわかるが、とにかく、ここは地球で、僕が、僕が今、嫌なんだ。頼む。」「はい。はい。ではヒカルのリクエストに応じて“変身”」シガはセミの姿に変身した。シガは僕の肩に止まった。「ヒカル、これでいいか?」僕は肩の上のシガに「よし。よし。」と返事した。「それでヒカル、どうする?だいたいの事は分かっているんだろう。」「そうだな、藤田さんと双子は、だぶん生まれてすぐに離れたようだ。双子ちゃんは地上に来たようだ。異世界人より地上人のオーラが強い。それにリボンは間違いなくこの町で採れた、蚕の絹のリボンだ。」「ヒカル、そこまで透視できるとはすごいじゃないか。」「シガ、そうなんだ、正直言うと透視というより、あの時、飛んだんだ。」シガが「それは、瞬間移動能力じゃないのか?」「たぶん、それだ。」シガが、セミの羽をブンブン鳴らして。「瞬間移動能力かー。羨ましいなー。」「シガは、できないのか?」「もちろんできるよ。」「じゃー羨ましいーなんて言うなよ。」「わるい、ちょっと言って見たかったんだよね。」「シガも、子どもだな。」「シガ、教えてほしいいんだ。僕は、シガに教えてもらって自分が、異世界人だと気づけた。仮に道ですれ違う人の中に異世界人がいて、分かったりするの?」

「えっ、なになに、ヒカルも異世界人の仲間がほしいの?」「いや、聞いてみただけだ。」セミのシガは笑うように「へー。ヒカルも異世界人に目覚めたかーあ。茶化すとヒカルが怒りそうだから真面目に答えるね。見つけることできるよ。そう、”わかる”っていうのが正しい。前にも言ったけど。この地上の知的生命体は人間だけじゃない。”その他”が、すでに存在していることをいい加減人類は認めてもいいと思うよ。まあ、そんなことは、さておき。明日の計画を立てないと。」僕の頭の中にはある程度計画は立ててある。「シガ、さっきも言ったが、藤田さんとその双子ちゃんが風鈴を盗んだことは間違いない。しかしここで重要なのが”なぜ盗んだのかの理由だ”。その部分で対応は違ってくる。」「そうだな、ヒカルが推理したのと、僕もほぼ同じだ。大事なのはヒカルが言ったように藤田さんと双子ちゃんが”なぜ、風鈴が必要なのか”ということだ。」「そうだな。藤田さんか。」「私のこと呼んだ?」目の前に藤田さんと双子ちゃんが立っていた。「えーっ!」僕は大きな声をだしてしまった。通りを歩く人がチラリと僕を見て追い越してゆく。道の真ん中で立ち止まった。僕らは、とりあえず、端によけた。藤田さんたちも動いた。「どうしてここに?」「君たちが呼んだでしょう。それにヒカル君はさっき私達の時越神社に来たじゃない。私達の方こそ、びっくりしたのよ。急にヒカル君が異世界人で、瞬間移動で神社の結界上で浮いて私達のこと見ているんだもの。」「藤田さん、すまない悪気はなかったんだ。無意識に僕、飛んだみたいで。僕、自分が異世界人ってことをこのシガに教えてもらったばっかりで。正直まだ能力をうまく使えこなせていないんだ。」「じゃ、仕方にわね。」藤田さんより少し強めの口調の双子ちゃんが答えた。僕は双子ちゃんに「君は?」「私は、リナの妹のミクよ。生まれてすぐに夏の異世界でさらわれたの。異世界でも双子は、意志通信能力が強いみたいで。生まれてすぐにね。さらわれてこの地上に来たの。そこで運よく、ここの神社の巫女マーシャに助けてもらったの。」僕は「ミク大変だったね。」「まあーね。それにこの時越神社には異世界への入口があるの。ほら、あの大きな楠。その正面に異空間への入口があるの。今は巫女のマーシャが強い結界で入口をふさいでいるから大丈夫だけど、時々緩むと変な異世界人がウヨウヨこの地上に流れ込んできて悪さをする。」シガが「へーえ、大変で少し複雑そうだね。でも藤田さんに、いや、いや、リナにミク、どんな理由があろうとも夏の異世界の宝の風鈴を盗んじゃいけないな。」藤田さんが、すまなそうに「わるいと思ったんだけど。妹のミクを救って育ててくれた恩人の巫女のマーシャが大けがをしたの。あの、社の屋根が一部落ちてマーシャを直撃。多分悪い、異世界人のせい。犯人は・・・」ミクが藤田さんリナの言葉を遮った。「時間を止めたかったの。時間を止めてマーシャにケガをさせて犯人を捕まえたかったの。時間移動もあの風鈴はできるから。それに盗もうとしたときに風鈴が、”あなた達の味方です。”って言ってくれたのよ。だから、ちっとだけ借りて返そうと思ったの。ほんとごめんなさい。」僕は、仕方ないと思えた。「巫女のマーシャさんの具合はどう?」「まだ動けない。」「それは心配だね。」僕は「それで犯人は?時間移動の風鈴の力はまだ発動していないの?」藤田さん、リナが「それが、ごめんなさい。盗まれたの。たぶんマーシャにケガをさせた犯人の仕業だと思うけど。それで、正直,2人で途方に暮れていたの。身勝手なことした罰なのかな。」ミクが「でも巫女のマーシャがこのままだと、樫の木の結界が緩んでもっと大変なことにもなるの。私達の力じゃ、足りないの。お願い、”助けて”」僕は即答。「助けるよ。力になるよ。」僕はミクの手を握り上下に振りながら「大丈夫だ。僕らがいる。なあ、シガいいよな。風鈴も奪い返さないといけないんだろう。あと1週間だ。」シガがちらりリナを見た気がした。「仕方ないな。じゃ、やりますか。」「そうだな。本気だしますか。」

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