第3話 シガ、僕は誰だ?
1時間もたたないうちにセミのシガは目覚めた。「おはよう、ヒカル。よくねれたよ。ありがとう。ところで久しぶり。僕のこと思い出した?」僕はベットから起き上がり「想い出したよ。5年前の夏祭り。シガ、正直に言うと”ごめん”忘れていたんだ。君と出会った次の日までは覚えていたんだけど、みんな君の話をしなくて。それに藤田さんも転校していちゃったし。ほんとうに、わるい。」シガは残念そうに。「そうなんだ、藤田さん引っ越ししたんだね。」シガは、風鈴を探していなかった僕を責めることなく藤田さんがいないことの方が残念のように見えた。僕は、すかさず「シガ、もしかして藤田さんのこと好き?だったりして。」シガは照れることなく「そうだよ。浴衣姿がとてもキュートで長い黒髪。可愛い。僕は好きだったよ。」「へーえ、あんな短い時間。1回しか一緒に遊んだことないのに?」シガは続けて「好きになるのに時間は関係ないよ。人間界でもよくある”一目ぼれ”かな。でも本当に残念だ。この街にいないんだね。会いたいな。」僕は頭の中で思った。異世界の風鈴よりシガは藤田さんの方が大事なんだ。なんかシガって人間ぽくていいよね。頭の中にシガの声が、『そうだよ、ヒカル。僕ら異世界人はまず目の前の自分に近い方から優先順位をつけるんだ。その方が自然でいいだろう。だから人間のように自分を殺して何かを優先ってことがない。』『なんか、ロボット的だよね。』『ヒカル、そこは合理的と言って欲しいな。でもその分、精神的負担もないし、誰にも迷惑かけないし、でも人間も最近は僕ら異世界人に近くなってきている。そう、君たちヒカル世代はもちろんだがZ世代以降は大半が僕らと同じ感覚の子が多いと思うが。』『確かにそうだね。シガが言うとおりだ。それからシガ、頭の中で話すのよさない。僕には口があるし、口で話したい。』『ヒカルもひどいことを言うよね。僕は今セミの姿なんだよ。口はこのストローのようなものだし音をだすことは大変なんだ。』『えっ?でもさっき朝」網戸から僕に話しかけてきたじゃないか。』『もちろん声も出すことはできるけど、たくさんのエネルギー消耗するから嫌なんだ。それに正直、一言、二言しか話せない。』『そんなもんなの?』『そんなものさ。それに人間ぐらいだよ。口がついてるのって。多分。異世界も色んな異世界が存在しているけどみんな口は飾りで会話は頭の中で話すんだよ。』『それにヒカル、君は何回が別の次元や異世界に転生しているから、この話し方の方が楽なんじゃないか?』『僕が異世界人?』『そういわれれば、そうだ。楽だ。』それに思い出したことがある。僕は小さいころから頭の中で誰かと会話していたようだ。声は突然、頭の中に飛び込んできて、一方通行の時もあれば会話が成立することもある。ちなみに幼なじみ4人は”口での会話”だ。ただ思い出したぞ。藤田さん、転校生の藤田さんとは頭の中で会話していた。転校初日、『初めての学校とても不安だわ。友達出来るかな。』僕は頭の中で『大丈夫だよ。女子のたかちゃんは、いい奴だ。話してみたらいいよ。』『ありがとう。』そうだ、藤田さんとは頭の中でも話せた。シガが「やっぱりな、藤田さん。僕の好きなタイプってこともあるけど、彼女は僕と同じ異世界人。夏だけに現れる花火の扉の世界の異世界人だったよ。ヒカル、気づかなかったかい?』『全く。でも急に転校してきて、また急にどこかいっちゃったから。今、シガから話を聞いて、なんとなく納得。』シガは今更ってセミの顔で僕を小ばかにしている。
『シガ、その顔はないぞ。温厚な僕でも怒るぞ。』『これは、すまなかった。ごめん、ヒカル。』『で、シガ、本題の風鈴の前に教えてほしい。なぜ異世界人のシガや僕がこの地上に今いるの?』『そうか、ヒカルは知らないんだな。この地上と異世界は、ずーっと前からつながっていたんだ。入口はその異世界ごとで違うし、次元でも違う。それでこちら側、この地上にも異世界人は普通にいるんだ。自覚がある異世界人もいれば、何も感じない異世界人もいる。ただ覚えていないだけ。今は異世界PCを持ってきていないからデーター検索、アクセスできないが、ヒカルのことも調べることができるよ。いつの時代にどの異世界から来たってこと。』
『へえー、僕が異世界人ね。楽しそうだ。』シガが真面目な顔で『でも多分、僕らの花火の扉の異世界人ではないようだけど。僕ら花火の異世界人は夏にとても活動が活発になる。夏人間は大方そうさ、それに手のひらに赤い星があるんだ。』僕は手のひらを見た。“ない。”僕の手のひらには別の”星”が二つあった。
『シガ、本題だ。風鈴だ。君の世界の”時間を止める風鈴”の話をしてくれ。』
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