第2話 セミのシガ

僕は、セミのシガをベットから眺めていた。「しゃべれるセミか」なんか楽しそうだ。もしかしたら、夢?まさか僕は机の時計と携帯の時間を見た8時17分。朝だ。起きてから10分もたっていない。それにとりあえず頬をつねった。「痛い」夢じゃない。しゃべるセミ、シガ。現実に起きていることだ。ここ数日、東京は砂漠より暑い日が続いている。暑さで幻覚を見ている?でもなさそうだ。それに今は朝だ。どの角度から考えても”これは現実だ。”受け入れよう。そういえばシガは、5年ぶりにと言っていた。5年前、僕は小学3年。何かどこかでセミではなく、シガとはあった気がする。それに、この状況を僕は、すんなり受け入れる。そうして、早くシガが起きないかな。仲の良い友達を待っている”わくわく”感を抱いている。5年前か。僕は小学3年生。何かがあった気がする。僕は静かに自分の記憶の中に入っていった。小学3年。3年2組。そうだ。担任は武藤先生。そして、えーっと仲のいい友達が4人?いた。1人は2軒隣のたかちゃん。おしゃべり好きで世話焼きで、リトルママって感じ。もう1人は店屋の中島。中島は店屋の子供なのになぜか算数が苦手で。この2人は受験組、同じ私立中学だ。そして字がきれいで習字が得意の坂田君。坂田君は僕らよりもっと頭も良くて付属中学に1人合格。今も変わらず4人で連絡は取り合っている。僕ら4人は、ふたば幼稚園からの幼なじみだ。そしてもう1人、3年の時に転校してきた。藤田さん。そうだ。藤田りなさん。僕らは5人だった。藤田さんは、幼なじみ唯一の女子、たかちゃんと仲良くなってそれで僕らとも遊ぶようになって。そうだ。小3の夏。僕は記憶の中にしまい込んでいた記憶を今取り戻した。あの時の”約束”を思い出した。近所の神社の夏祭り。学校からはお祭りは保護者同伴と注意されていた。しかし僕らは6時までには帰るからと親に約束して5人でお祭りにいった。たかちゃんと藤田さんは浴衣を着ていた。4時に店屋の中島の家に集合。そこから神社までは5分もかからない。ただしお祭りで屋台がたくさん。人も大勢。神社に着くまでかなり時間がかかった。僕らはお小遣いを計算しながら屋台のチョコバナナやリンゴ飴をたべながら神社についた。境内には金魚すくいやヨーヨー釣りがあって僕らはヨーヨー釣りで競い合っていた。そこへ僕らと同じくらいの男の子が1人、参加した。男の子は、僕の隣に来た。僕は気になって「どこの小学校?」「ギル小学校」僕には聞きなれない小学校。きっと夏休みで、遠くから遊びに来た子かな?ぐらいに軽く聞き流した。「僕は、ヒカルよろしく。」「僕はシガ、よろしく。」そしてシガは僕らと一緒に遊んだ。楽しかったなー。その帰りだ。境内の外に出ようとした時、シガが僕は「僕はここから出れないんだ。遊べて楽しかった。」僕は思わず「また。遊ぼうよ。」「一緒に遊びたいけど遊べない。僕は異世界人なんだ。」僕らは「えーっ」とハモった。藤田さんが「ほんなの?異世界人って?」「まあね。ほんと。」僕は、「僕たちと姿形全く同じじゃないか。シガ同じ人間だろう?」「残念ながら違うんだ。今日がお祭りでほら、さっき祭りを祝う花火が上がっていただろう。あの花火が異世界との扉なんだ。」「じゃ、異世界に帰るの?」「いや、まだ帰らない。僕は風鈴を探しに来たんだ。それに帰れないと言うのが正しい。」「風鈴?」「異世界の”風鈴は時間を止めることのできる”不思議な風鈴なんだ。去年の花火の時にどうやらこの地上の世界に落ちたらしい。扉が開くのを待って僕がやってきたってこと。」中島が「なんか、大変そうだね。」「でも大丈夫。時間はある。5年。5年の間に見つければ僕は異世界へ戻れる。」たかちゃんが「なぜ5年なの?」「あー、それはセミと同じさ。セミは約5年土の中にいて地上に出てくる。僕ら夏の異世界人にとって、セミは特別な存在なんだ。だから、セミと同じ5年の猶予があるってことさ。」坂田君が「なんか南仏の人みたいだな。」たかちゃんが「フランス人?」僕は「シガ、なんだか難しそうだけど、要するに”その風鈴”を見つけたらいいってことだよね。」「そう、その通り。」「僕が探してあげるよ。」「私も、私も、僕も」みんなも探すの手伝うねと約束した。そうして、その日の出来事について僕ら5人は、それ以来、触れなかった。そう言えば、その次の日に藤田さんは急に転校していった。彼女との連絡はない。たかちゃんにもないようだ。とすると今この僕の部屋のセミのシガは”あの時のシガだ。”どうしよう風鈴のことすっかり忘れていた。夏祭りは来週だ。時間がない。あの時から5年経ったんだ。

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