夏祭りの花火は異世界への扉

京極 道真  

第1話 退屈な夏休みのはじまり

「あーやったー。」今日から夏休みだ。中1の僕は、夏休みが、うれしくってたまらない。なにも、しなくていい。時間を自由に使える。「ミーン・ミーン・ミー」朝からセミが鳴く。うるさくない。僕の夏休みのはじまりを喜んでの合唱だ。しかし予定がない。部活に入っていない僕には、退屈な40日のはじまりでもある。しかーし、予定なしの退屈だが、僕はやっぱり夏休みが大好きだ。去年の夏休みは、中学受験で夏休みは無し。塾と自宅の往復のみ。小学生最後の夏休みにしては、さびしい限り。現実の小学生は厳しい。プールも海も夏祭りもなにもなく終わった夏。まあ、その僕にとっての、貴重な時間を対価に僕は希望の中学に入学できた。”何か得るための対価の損失”できればこの方程式は崩れてほしい。いつか…まあ、今はこの問題は後回しだ。今、僕はこれからはじまりる夏休みのことで頭は、いっぱいだ。「ミーンミーンミー」またセミがの声が僕に”遊ぼよ“とミーンミーンミーと聞こえた。時計を見る。午前8時。中途半端な時間だ。両親はとっくに仕事に出ている。兄貴も高校のサッカー部の朝練でいない。実に自由で退屈な朝だ。僕の2階の窓から外を見る。空の青さが夏休みの青色。白いモクモク雲もこの時間はまだ出ていない。通りの車もなぜか少なく感じる。いつもの朝なのに夏休みの朝はいつもと違う。”時間の流れるスピードが違う”こう、感じるのは僕だけだろうか?『君もそう感じたことはない?』「そう、思うよ。」えっ?声が聞こえた。部屋には僕しか、いない。僕は見慣れた僕の部屋を見渡した。誰もいない。「空耳?」「違う。ここにいるよ。俺様が見えないのか?」声のする方に近づいた。声の主は僕の窓の網戸に止まったセミ、セミだった。「えっー、セミ。セミがしゃべっているー」僕は、驚いたが、怖くは、なかったし、すんなりこの不思議な状況を受けいれてしまった。僕のいつもの癖だ。基本的にこの社会は学校も含めて”異質”を避ける環境にある。僕としては、僕自身が”異質”だと自負しているため、逆に素直に受け入れられる。だってやっぱりみんな同じは、つまらない。宇宙人でも幽霊でもUMAでもエルフの妖精でもこの次元には存在していると僕は確信している。読んでいる君も多分、そうでしょう。まあー、そのことは、

おいといて、セミだ。セミと僕は、話さなければ。「おい、セミ君、今、しゃべったのは君?」「そうだよ。僕だ。”時間の流れるスピードが違う”当たり前じゃないか。時間は同じように流れているけど、その時間の中にいる者の感情や環境で変わる。例えば同じ45分で学校のテスト中の45分と好きなゲームをやってる45分は、全然違うだろう。」僕は即答で「そう、そのとおり。」セミ君は「そうだろう。地球上の人類は錯覚しているんだ。みんな、なんとなく時間は同じ長さって”思い込んでいるだけさ”」「思い込み?時間は自由に操れる。」僕は、この類の話に興味深々だ。もっと話したいと思った相手は目の前のセミだ。僕は網戸を開けて「セミ君、僕の名前は”ヒカル”よろしく。君は?」「僕はセミのシガ。」そう言いながらシガは、羽根をパタパタさせて入ってきた。そして部屋の中を一周旋回して僕の机の鉛筆立ての一番長い鉛筆に止まった。「あー、ようやく地上に出て来れた。5年ぶりだ。それにしゃべれる人間とあえて僕は朝からラッキー。」僕はセミのシガが前からの友達のように感じる。「ヒカル、君と話したいんだけど、セミに羽化したの今朝、夜明け前で早かったから、ねむいんだ。少し寝かせてくれ。」そう言ってシガは鉛筆立てのえんぴつにとまって寝てしまった。僕はこれから始まる楽しい何かをずっと待っていたような気がする。僕の窓から小さな風が入ってきた。僕はシガが起きるまでと、ゴロンとベットに横になって待つことにした。

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