第5話 身に覚えに無い事

彼女と、その隣にいたかっこいい男性。

第三者から見たら二人はどう見ても…

開いた口が塞がらなかった。

ま、まだ確信はついてない。

まずは二人に話しかけよう。


重い足を1歩

また2歩と踏み出した


好都合なのは二人はちょうど校門の前で止まっている。

残り15メートルぐらいだろうか。

二人がこちらに向かってくる僕に気付いた。

駿「!?」

僕を見た途端、何故か彼女は怒り気味になった。それを見て僕は血の気が引いた

引きつった表情で彼女に話しかけた。

新谷「や、やぁ。久しぶりだね。駿河先」

駿河先「何でこんなところにいるの、新谷君」

新谷「お前に会いに来たんだよ。なんで今までの返事も電話も返さなかった。僕は本当にしんぱ」

駿河先「放っといてよ」

新谷「.....え?」

声に出てしまった。

聞き間違いだと思いもう一度聞く。

新谷「今、なんて?」

駿河先「放っておいてよ!!!」

彼女の怒った声が響いた。


男性「少し外しますね。」

僕達のやり取りを見て何かを察したかのように彼は離れた。 


おそらくあの距離だとここまでの声は聞こえないだろう。 

新谷「お、おい。どうしたんだよ。僕に愛想尽きたのか?やっぱり僕の外見か?正直に言ってくれよ…」

話そうとしても力が抜けて徐々に声量が小さくなってしまう。


そして数秒後彼女の口から衝撃的な発言を聞いた。


駿河先「しらばっくれるつもり?私、知ってるんだよ。新谷君が私と離れた後、別の女性とお付き合いしてるの。」

新谷「・・・え、ちょっと待って!どういうことだよ。僕が浮気?なにかの間違いだ。僕は君と離れ離れになった後、ずっと君のことを思い続けた。一体どこからそんな噂が…」

駿河先「ちょっと待ってて」

駿河先はスッとバッグからスマートフォンを取り出して写真を見せてくれた。そこには

新谷「僕とお、女の人がキスをしてる…」

その写真に僕と金髪のショートボブの女性がキスをしているのが写っている。

写真を見て僕は色々と戸惑った。

彼女目線からしたら浮気がバレているのに気づかれたと思い慌てていると思っているかもしれない。


だが


新「僕はその写真知らないよ!確かに横に写ってるのは僕に見えるけどそんなことなんかしない!」

そうだ。僕はこんな見た目だからこの種類の女性と関わりを持ったことがないし、そもそも近づかない。

駿河先「そうやって。そうやって嘘をつくんだ。これのどこが創くんじゃないって言い張れるのよ!あと私、聞いちゃったの。直接新谷が別れようって言ったのを!」

新谷「ど、どういうこと.....」

意味がわからなかった。僕は彼女に別れようの言葉を言ったことがない。

駿河先「私が入学して2週間後にね、友達にこの写真を渡されたの。最初は偽物だと思って捨てようと思った時に....電話が掛かってきたの。

知らない番号だったから恐る恐る出てみたら知君の声が聞こえたの。それでね、君の後ろから女の子の声が聞こえたんだ。君とその人は電話越しで仲良くしてて.....その後君に、創君に別れようって言われたの。」


え?僕が電話で彼女に別れようと言った!?

そんなわけない。彼女との電話は僕の携帯でしか連絡しないし、そもそも女性と一緒に居た記憶が無い。おかしい。おかしすぎる。


とりあえず彼女の誤解を解こう。 

新谷「この写真、いつ撮れたの?その日にちよっては違うことを証明できる。」

駿河先「………この写真はねこの学校で知り合った友達から貰ったんだ。その子に聞けば分かるよ。その子の名前は」

男性「駿河先さん」

駿河先「杭坂くいさか君」

杭坂くいさかと呼ばれ、先程の男性が戻ってきた。

杭坂「もうすぐで門限だよ。早く中に戻らないと。」

駿河先「それはそうだけど…」

新谷「駿河先のご友人ですか?」

杭坂君に質問した途端、朗らかな表情だったのが一転し、こちらを睨みつけながら返事をした。

杭坂「彼女の傷ついた心を抉るのはやめてくれないか。〈元彼〉君」


!? 


薄々勘付いていたが、やっぱりそうだったのか。

万人受けするルックス、身に付けてるものはブランド品。

僕と真反対の存在だ。

自分が惨めになっていく。

顔を俯いていると彼女が返した。

駿河先「ちょ、ちょっと!どういうこと。私はまだ彼とは別れてないし、大体杭坂君は私のとも」

杭坂「ちょっと待ってね」

杭坂は駿河先の言葉を遮り、元の優しい表情に戻った。

あまりの変わりように驚いていたら杭坂は駿河先を連れて門の横影に隠れた。

数秒も経たないうちに二人は戻ってきて、彼女の口が開いた。

この時聞いた言葉は自分の人生の中で1番の衝撃になったかもしれない。


駿河先「私は今、杭坂君の彼女です。」


僕の背筋に電撃が走った。

新谷「お、おい。さっきと言ってることが違」

駿河先「今日は帰ってくれない?新谷くん」

意味が分からなかった。さっきと言ってることが違うからだ。さっきの数秒に何があったんだ。

杭坂「ということで元彼君は帰ってください。駿河先さんもそう言ってるし、もう門限ギリギリなので」

杭坂君はあの優しい表情のまま、駿河先と共に寮に戻ろうとする。

すぐさま僕は駿河先の手を取った。

まさか

新「ちょっと待ってくれ。彼女に何をした?」

僕は訝しい顔で杭坂に顔を向ける。

一瞬杭坂の顔が歪んだが、すぐさまこういった。

杭坂「なんのことかな?」 

新谷「しらばっくれるな。」

僕もすぐに言い返した。

杭坂「じゃあ証拠はあるのか?」

新谷「・・・」

杭坂の言うとおりだ。僕はなにかしたかという核心を突く証拠を持っていない。当たり前だ。

今現在知り合った男性のことだ。素性も知らない。

一方僕の方は

杭坂「そういう君は駿河先さんがいながら、他の女の子とくっついているじゃないか」

そう彼女から見せてもらった疑惑の写真だけではなく、彼女は僕の肉声を聞いていたのだ。

他の人から見れば僕の言ったことは全部嘘のように聞こえるだろう。


それでも僕は


「僕はやっていない!」

・・・沈黙が続いた

駿河先「帰って…ください。」

僕は歯を食いしばった。

新谷「な、渚!彼に何をされたんだ!?脅されているのか?だったら助ける!だから…」

僕は泣きそうになりながら地面に両膝を着いて呟く。

新谷「そんな・・・そんな顔しないでくれ」

彼女はずっと僕を見続けていた。

しかし僕にはわかる。

目線は僕の方向に向いているが、


僕のことを見ていない。まるで放心状態だ。

[一体僕が…僕が何をしたんだ!]

心のなかで叫び続ける。

すると、ポツリポツリと雨が振り始めた。

杭坂「うわ、今日の予報だと雨が振らないはずなのに。早く戻りましょう。駿河先さん」

杭坂は駿河先の手を掴み、寮内に入った。



[なんでこうなってしまったんだ] 

[どうして彼女は奪われてしまったのだ]

[あの写真は一体何なんだ]

[離れたのがいけなかったのか]

[僕が頼りない人間だったからなのか]

[僕が全部悪いのか?] 


いや


「僕が【無能力者】だからこんな仕打ちに合うのか」 



僕の手元にある水溜りは雨なのか…それとも



雨は止まずに強さが増した。

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アンノウンブレイク 〜底辺逆転理論〜 アズサ @FURO2413

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