第7話

夏の高い空を背景に、晴彦は家族とともに親戚の家に向かった。昨年亡くなった祖父の遺品整理のために、親戚一同がこの家に集まった。祖父は生前は骨董品収集が趣味で、古びた蔵には祖父が収集したコレクションが山ほどあった。晴彦は親戚たちとともにその蔵を開け、骨董品を丁寧に取り出し、価値のあるものとそうでないものに分けることになっていた。


晴彦は優しい祖父の事が大好きだった。小学生の頃に美玲と一緒に遊びに来た時は、祖父は張り切って自慢のクレクションを見せてくれた。


「遊園地行きたいな〜」


子供の美玲にはそれが退屈だったらしく無邪気に言い放つと欠伸をした。


「いけない!つい熱が入りすぎてしまった!」


美玲の失礼な発言に祖父は怒る事なくお道化た表情でパチンと額を叩いた。そんな祖父の姿にみんなが大笑いしたのだった。


そんな祖父ももういない。楽しかったあの日々に2度と戻る事はないと言うことを晴彦は痛いほどに実感したのだった。


蔵の中は、外の爽やかさとは対照的に、薄暗く不気味な雰囲気だった。しかし、真面目な晴彦は文句を言うことなく黙々と骨董品が詰まった箱を蔵の外へ運び出すのだった。


作業を開始してから約2時間後、晴彦の視線はひとつの箱に釘付けとなった。


「こんな箱あったかな?」


晴彦は記憶を辿ったが、見覚えは無かった。箱には「真実の鏡」と書かれ、たくさんのお札が貼られていた。箱を見た瞬間、彼の身体に電気が走ったような感覚があった。運命的な出会いを感じた晴彦は、引き寄せられるように箱を手に取った。すると何故か箱に何枚も貼られていたお札がビシッと言う音と共に破れおち、ゆっくりと箱の蓋が開いた。


箱の中には真実の鏡とのタイトルに相応しい重厚な鏡が入っていた。それは晴彦が知っている現代の鏡ではなく、平で円形に持ち手がついた金属のようなものであった。円形の部分には家紋のような模様が施されており、歴史的に貴重な物と言われても納得の品物であった。骨董品に興味はないものの、歴史的な鏡を手にすると、晴彦のテンションは上がった。


彼はその鏡を手に取り、鏡の面を見てみた。鏡は銅のような素材でその鏡に彼自身の姿が映っていた。しかし、現代の鏡ほど鮮明には映る事はなくぼやけていた。晴彦は鏡に映った姿をちゃんと見ようと思い、鏡を顔に近づけた瞬間、鏡からまばゆい赤い光が放たれた。そして、晴彦の意識はゆっくりと遠のいていった。

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