ロンドン前の両親の一度の叱責
このロンドンに行く片道切符の前に、
両親に叱られたのはたった一回だけだった。
その叱責は、次のような事情のせいで起こった。
今から思えば、
その時やっと7歳位になるかならないかだった。
僕は最初から最後まで、
両親二人の希望に沿うように生きる従順な子だった。
両親の命令に背いたことは一度はなかった。
ある日、僕の母さんは、
僕に何かを尋ねてきた。
「いいえ」って言って欲しいんだろうなぁと思って、
いつものように「いいえ」って言った。
それが母さんの希望だと思っていたから。
ところが、何か間違えたようで、
母さんはびっくりした様子で、
僕が母さんの命令に背いたと思って、
母さんはいきなり僕にとっては、
かなり鋭く厳しく言ってきて驚いた。
母さんは普段は僕には優しく言ってくれたけど、
その時は
「えっ、嫌なの?」
と聞いてきたので、
「うん。嫌じゃないよ。」と言えば、
僕は自分自身にも裏切るし、
母さんに対して嘘をつくことになると思ったから、
僕はまた
「いいや、嫌だよ。」と答えた。
それは母さんに対して、
逆らうようなつもりはさらさら無く、
その時、もし母さんが粘って
穏やかに僕の考えや僕の感情に
寄り添ってくれたら、
誤解は解けて、へだたりなくいつものように進んだだろうに。
ところが、
母さんは僕のことを理解しないまま、
ますます烈火のごとく怒って僕に向かって言ってきた。
それ以前は僕は母さんに逆らったことは無かったから、
そこで、僕が
「嫌だ!嫌だ!」と
繰り返し言うもんだから
母さんは完全にびっくりしてしまって、
最終的には困り果ててしまった。
僕の母さんは、
かつて僕たち子どもたちを厳しく叱ったりはしなかった。
それは世間でも父の仕事だと思われていた。
そうして僕の兄弟姉妹は、
子ども取り締まりの為に、
ムチを振るわれたものだけど、
僕には今までムチを振るわれたことは無かったんだけど、
そして、父さんが呼び込まれた。
母さんが父さんに僕が拒否したことが述べられた。
そこで、父さんは、もう一度、
「母さんが言ったことを聞く気があるか?」
と聞いてきた。
重ねて言ってきたけど、
僕は
「嫌。」
を繰り返すものだから、
問われる度に、
ムチを打たれた。
言うことを聞く気があるか?
しろ!と命令することをする気があるか?
僕は全て拒否した。
最終的には僕は静かに
「嫌だ……!」
と言った。
「たとえ殺されても嫌だ!」と言ったら、
これが最終的和解になった。
それっきり、
僕を叱ることを辞めた。
両親と仲直りをした。
僕はまた、今までのように
引き続き可愛がられた。
僕自身の気持ちで言えば、
それは僕が子どもの時から覚えてるけど、
罰を与えるということは、
ほとんど意味がないもので、
罰を与える人間にとっても、
罰を与えられる人間にとっても、
むしろ非常に激しく有害で有毒なものだと、
僕は疑わないという選択肢はなかった。
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