2度の命拾いとクリーム色の馬

また、別の話をしよう。


胃の火傷から死にかけたことは述べたんだけど、

その事件の少し前には、

僕は父さんの家と隣の間の、

隙間の通路にあった

一枚の大きな扉で過ちをおかした。


そして、なぜかわからないけど、

僕は鍵穴へ向けて指を突っ込んでしまった。


抜こうと焦れば焦るほど、

指は中々抜けず、

あまりの痛さに気を失ってしまった。


どうして抜けたかはよく分からないけど、

いつの間にか目覚めた時には指は抜けていたんだよ。




もう一度、僕には死にかけたエピソードがある。


そして、その時もなぜかわからないけど、

助かったんだ。

なんでかはわからいけど。


ニュータウンの町はセヴァーン川にまたがっているんだけど、

川にはその頃には、何年前に建てられたのかすらよくわからない

木造の橋がかかっていた。


真ん中には車が一台通れるぐらいの空間があり、

両側には狭い歩道があるような橋だった。

つまり、対向は難しい橋だった。


父さんは、お気に入りのクリーム色の雌馬を一頭持っていた。

牧場は橋のあっち側にあった。

つまり、僕たちが住む地区のこっち側と対岸であった。


父さんが馬が必要な時には、

僕がよく町にこの橋を通って取りにいったんだ。


僕はまだ6つか、7つの時のことだった。

幼い乗り手ではあるけど、

ある日、この馬に乗って預けていた牧場から自宅へ向かう途中、

この木橋に通りかかった。


すると、

木橋を半分も渡らないうちに、

向こうから大きな車がどんどん向かってきた。


すれちがう場所が無いので、

無理を通せば、

自分の脚が橋か相手の車に引っかかってしまう。

とはいえ、引き返すという知恵は思いつかなかったんだ……。


つまり、車とギリギリすれ違うことを選択したんだ。


自分の脚が相手の車輪に引っ掛かりそうなので、

鞍の反対側へと片脚を交差させた。

すると、そっちの方へ落馬した。



しかし、落ちながら、

自分が川に落ちないだろうか?

橋の歩道の欄干にぶつからないだろうか?

と気にしてしまったため、

気を失ってしまった。


どうして、助かったかはよくわからない。


その車はとうにどこかに行っており、

僕は傷一つ負わなかった。


この事件があってから、

僕はクリーム色の愛馬に何よりも深い愛着を覚えた。


ひょっとしたら、

僕は何かよく分からないものに

守られてるかもしれないと

そう思った。

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