シックネス校長と僕の読書習慣

僕の住んでいたような小さな町々の小学校では、

人間がすらすらと文章を読むことができて、

文章をはっきりと書くことができて、

算数も足し算引き算掛け算割り算ができていれば、

それで十分な教育だと言われていたんだ。


これが

シックネス校長が他の先生に与える教員の資格だったんだ。

と思うような十分な根拠がある訳でもないんだんだけど。



僕が7歳の頃には、これぐらいの教育は終わっていたかな。

シックネス校長が僕を助手兼助教師にしたんだ。

僕は7歳なのに、学校にいる間は僕が呼ばれたんだ。


その許可を僕の父さんに貰ってね。



そして、校長の助手になって以降、

7歳までに習ってきたことをみんな吐き出すことになった。


僕は9歳まで学校に残っていたけど、

この2年間は僕にとってなんの得にもならなかった。



ただ、自分の知っていることを、

他人に教える習慣をこんなに幼い頃に習得できた経験は、

得られたけどね。



この、7歳から9歳頃までの間、

僕は手当たり次第に読書するのが大好きだった。

しかも、読書には熱い想いを抱えてたんだ。


僕はこの町の有名人で、僕のことを知らない人はいなかった。

逆に僕もこの町で知らない人はいなかったんだけど。


牧師さんや、お医者さん、

さらには弁護士さんという、

この町の物知りたちの本のコレクションが、

みんな優しくて、僕に貸してくれたんだ。

読みたい本はどの本でも自分の家に持って帰っても怒られなかったから、

僕はこの自分に与えられたわずかな自由の時間を十分に読書に使ったんだ。



僕がこの7歳から9歳ごろまでに読んだ本の中には、

ロビンソン・クルーソー、

フィリップ・クオレ、

天路歴程、

失楽園、

ハーヴィの墓場、

リチャードソンの書いた本、

その他の超一流作家の小説をすべて読破したよ。



僕はまだ小さかったから、

小説に書いてあることは全部本当のことだと思っていて、

だからね、すごく興味を惹きつけられたんだ。


それで、だいたい一日一冊は読み終わっていたよ。


それから、クック船長をはじめとする、

船長の世界就航者たちの航海日記も読み始めたり、

世界史だったり、

ロリンの古代史だったり、

その他の哲学者や偉人の伝記の本も読み漁ったよ。


僕はまだ9歳にも満ていなかったのに。

こんなに本を読めたことはかなり贅沢なことだった。

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