理不尽な暴力に見舞われた弱虫な陰キャ高校生の僕が死を覚悟した時、悪者共への無双が始まるのには訳がある~喧嘩も強くてハイスペックな俺の覚醒無双伝~
第3話 察しの悪い彼と彼を恐れるクラスメイト達とその裏に潜む奴
第3話 察しの悪い彼と彼を恐れるクラスメイト達とその裏に潜む奴
「ただいま」
家に帰ってすることはまず挨拶。といっても誰かが返してくれることはないんだけれど。
父さんは仕事で家を離れてるし、母さんは父さんの赴任先について行ってるから、今は誰もこの家にはいない。
「はぁ……。やっぱり寂しいや」
1人になるとどうしても考えてしまう、高校生になったし安心して家を任せられるなんて言われたけど。今まで一緒にいた家族がいなくなるとやっぱり寂しいな。
荷物を置いて、シャワーでも浴びようとお風呂場へと向かう。
脱衣所で改めて自分の顔を見たけど、殴られたせいで腫れが出来ていた。
「これでもちょっとは治まった方なのかな。……あてて。やっぱり触ると痛いや」
それにしても、あの不良の人達は退学処分になるのかなぁ。そうなった方が良いと思うけど。
でも気になるのは、あの人達にやり返したっていう生徒の方。
僕みたいに小さくてひ弱に見えたから狙われたんだろうか? もしそうならちょっと……ううん、とっても尊敬する。どんなに見た目が弱そうに見えてもやり返す勇気と実際に勝てる力があるんだから。
「僕もそんな風になれるかな?」
服を脱いで、上半身裸になると、アザだらけのヒョロヒョロな体が鏡に映る。
「ははっ、情けない体」
こんな貧弱で情けなくて、臆病者の僕が不良にやり返すなんて出来るはずがないか。
「それに、怖い人たちがもういなくなるならそんな心配もしなくてもいいか」
情けない考えだけど、やっぱり人を殴るのは怖い。殴られるのも嫌だけど。
僕をいじめた不良はみんな先輩たちなんだろう。僕たちの学校の制服は学年ごとに少しだけ違うデザインをしている。つまり、彼らは二年生と三年生だ。
「疲れたなぁ。今日は早く寝ようかな」
服を全部脱ぐと、浴室の扉を開いてシャワーの蛇口をひねった。
勢いよく飛び出すお湯が殴られた後に染みてくる。
「つぅ……」
思わず顔をしかめてしまった。
やっぱり、水で冷やすのが一番効くのかな?
と思って切り替えたけど、ちょっと冷たすぎたな。
結局ぬるいぐらいのお湯に変えて体の汗を落とすことにした。
「ふぅ、さっぱりしたぁ」
体を洗って、髪を乾かし終えてようやく一息つく。
今日一日でいろんなことがあった。
入学式に始まって、いきなり暴力を振るわれて気絶させられて、目が覚めたら保健室で、そして――。
「静梨さんに……あんな綺麗な人と会話できて。本当に色々あったなぁ」
さて、ご飯作ろう。
お腹も満たして部屋に戻った僕、パジャマに着替えて後は眠るだけだ。電気を消して布団に入るとすぐに眠気が襲ってきた。
「明日から……どうなるんだろう?」
不安はあるけど、今日静梨さんと話したことで大分気が楽になった気がする。
「静梨さんかぁ……。明日も会えるかな?」
そんなことを考えながら、いつの間にか意識は無くなっていた。
吞気なもんだぜ、ったく。だがやっとここまで来た。もう少しだ。
◇◇◇
翌朝。
まだ体の節々は痛いけど、気持ちよく目を覚ますことができた僕は、ご飯を食べ身支度を済ませて学校の校門をくぐった。
今日からやっと僕の高校生活は始まるんだ。
もう昨日みたいに怖い人たちに絡まれることもないはず、よし。
覚悟を決めて教室へ向かおうと、廊下を歩いていると、突然後ろから声をかけられた。
「おはよう」
振り向いてみるとそこには静梨さんがいた。
「あ、えっと、おはようございます」
「高島君、今日の体調はどうかな。やはりまだ体が痛むかい?」
「だ、大丈夫です。……多分」
せめて情けない姿は見せたくなかったので誤魔化してみたけど、やっぱり痛いものは痛いかな。
「そうか。だが無理はしない方がいい。ところでキミは部活に入るつもりはないのか? と言っても私自身決めかねているが」
「僕も、まだ特に考えてないです」
「そうか。では私たちは部活を決めかねている仲間だな」
「え? あ、そうですね。はは」
「ふふ……」
意外とおちゃめなところな人なのかな? くすりと笑う姿が妙に可愛らしく見えた。
は! ダメダメだ。こんな失礼なことを考えちゃ!
「あ、そうだ。せっかくだし、私も君のことは人の名前で呼ばせてもらってよろしいか?」
「ぼ、僕なんかの名前でよかったらいくらでも!」
「ありがとう。じゃあこれからよろしく頼むよ、耀真君」
「はい! ありがとうございます!」
「ありがとう?」
「い、いえ。こちらこそよろしくお願いします」
な、何を言ってるんだ僕は。静梨さんに下の名前で呼ばれただけで舞い上がってしまった。恥ずかしいぃ。
それからも2人で談笑しながら僕たちの教室へと向かった。
その道中分かったことは、この人は会話が上手と言うか、とても話しやすい人だった。おかげで僕でも緊張せずに話すことが出来たよ。
「ここだな」
着いたのは1年A組の表札がかかった扉の前。
いよいよこの教室に入るんだ。昨日は朝荷物を置きに来て、夕方に取りに来た時の教室。
きっとみんな昨日のうちに自己紹介とか済ませたんだろうな。僕だけ保健室で寝ていて。
やっぱりちょっとドキドキする。
「さあ、入ろうか耀真君」
「あ、はい。……失礼します」
自分の教室に入るのに失礼しますはちょっと違ったかな?
でも、中に入った瞬間にみんなの視線が僕たちに集まってきた。
やっぱり静梨さんのオーラがそうさせるんだろうな。
隣に居るのがちょっと申し訳なくなってくる。うぅ……。
「ん? どうしたんだい耀真君? ほら、君の席は私の隣だ」
そうだったんだ、全然知らなかった。
でも昨日は教室にほとんどいなかったんだから知らなくても当然か。
クラスメイトの視線を感じながらも、僕は静梨さんの案内を受けて自分の席へたどり着いた。
それからも、チャイムが鳴るまで二人で話してたんだけど、他のクラスメイトの視線が刺さって。
静梨さん綺麗だから、みんなの注目を集めてしまうんだな。
僕が昨日教室に来れなかったから、知らない男が静梨さんと話しているのを気になったのもあるのかもしれない。
「おい、あいつが昨日大暴れした奴だぜ」
「病院送りにしたって話だ。正当防衛が成立してるらしいからあの男が処分されることはないんだろうが、人は見かけによらないってのは本当だな」
「私、ボコボコにされた先輩たち運ばれていくのを見たよ。怖かったぁ」
「その先輩達って前から問題起こしてたって聞いた。そんな怖い人たちを一方的にやっつけてしまうなんて……。同じクラスでやっていけるかなぁ」
「不動院も良くそんな奴と話せるよなぁ」
「でもそういう凛としたところたまんないよな」
周りのクラスメイトたちがボソボソと何かを話している。
ちょっとしか聞こえなかったけど、静梨さんについての会話だった。
やっぱりもう注目を浴びてるすごい人なんだ。そんな人と仲良くなれてる、とまでは言わないけど会話が出来てるなんて幸せな事だと思った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます