第二話 案外気に入った

なるほど。ゼラ様は俺がごつい騎士が好きだということでこうしたのか?

でもアンデッドなのが気に食わない。

もしかして人間として他人と関わって生きていくよりもアンデッドととして洞窟の中でひっそり生きていた方が生きやすいと思われたのかな?

そうゆう人間だとゼラ様は判断して気をつかったのか?もしそうなら今すぐ戻ってぶん殴りたいと思う。

そう思い悩んでるとさっきの女が声をかけてきた。

『・・・・・もしもし、話せる?』


『・・・・!、あぁ、どうも・・・・・・何から話せばいいんだろう・・・』


知らない人会話するとどうも気恥ずかしい。特にこんな綺麗な人となると。そして出来るだけ印象悪くしないように丁寧に振る舞うわけだが・・・・・


『なら私から話を始めさせてもらうわよ。単刀直入で申し訳ないかもしれないけど私はあなたにかなりご不満ですわ』


は?なんだこの女。いきなりそんなこと人に言う?あ、俺アンデッドだった。


とりあえず落ち着いて話を聞こうと思う。まるでゲームのガチャで爆死したかのような発狂具合だったし・・・よほどのことなんだろうな・・・・。


『あの・・・具体的にどこら辺がご不満で?』

女は深呼吸をした瞬間、やばいマシンガントークが来ると俺は身構えた。


『まず第一にアンデッドモンスターであることが気に入らない!!折角私の唯一無二のダンジョンの花形であるダンジョンの主なのに、死んだ魂なんて気味が悪いわ!!あなたがアンデッドなせいで私のダンジョンがアンデッド系ダンジョンになってしまうんですよ!お分かりですか?!ああ・・・折角私が夢見たダンジョンがこの時点でダメになってしまったわ・・・・』


やはり、怒涛のマシンガントークだ。彼女が話すたびに周りに風が吹き荒れる。思わず吹き飛ばされそうだ。


しかし・・・なるほど。俺はダンジョンの主としてここに召喚されたのか。じゃああの女はこのダンジョンの管理人?てか、まじであの女俺当てて爆死したのか。なんか申し訳ないけど、なんでダンジョンの主をガチャで決めてるんだ??神様も考えることがよくわからないな。

ゼラ様が言ってた世界を救う手助けをして欲しいって、こうゆうことだったのかな?ダンジョンの主として冒険者達と戦ってアイテムになったり経験値になったり・・・・そう考えると結構身に合った仕事のような気がしてきたな。でも、あの女の反応見る限り事前に打ち合わせたわけじゃないのは間違いない。ゼラ様一体何やってんだ?


彼女のマシンガントークに付き合いながらここまで整理した。それまでへぇへぇと話を黙って聞いていたが、次の女の発言でそれは変わった。


『それに!それに!アンデッドはアンデッドだとしてもなんでよりにもよってリビングアーマーなのよ!!!バインパイアとか英霊だったらせめて人気のあるダンジョンを狙えただろうに!!!騎士なんて旧時代のサビみたいなとろい鉄屑でどうしろって・・・』


『おいババァ今なんつった?』

思わず口に出してしまった。


知らない他人で最初は丁寧に控えめな話し方をしてても、俺の趣味の領域に一瞬でも入れば俺にスイッチが入る。俺の悪い癖だ。ただこんなスイッチの入り方は初めてだ。そしてまずい入り方をした。女性全般に対してババァと言ったら殺されるのは女子とのコミュニケーション能力が皆無な俺でもわかる。


一瞬で女のマシンガントークと共に吹き荒れていた嵐が一瞬止んだかと思ったら、今度はさらに強い暴風を吹かしている。明らかに殺気混じりの暴風だ。


『今・・・なんて言った??下級のモンスターのよりにもよってアンデッドの分際で!!!』


風がどんどん強くなる、いや風じゃないこれはもはや斬撃だ。風刃とでも言うべきかな。構える暇もなくそしてこんな鎧じゃ防げるはずもなく一瞬で傷だらけだ。ただその風刃は一瞬だけだった。流石に向こうも手加減しているのだろう。いつも、いや今までの俺ならここでごめんなさいと謝っていただろう。

でも、今回は思い切って言ってみた。


『あのなぁ、あんたらのお好きな英雄や勇者は確かに強くて、かっこよくて、魅力的なんだろうけどね。所詮戦場に出れば駒の一つなんだよ。とりわけ少ない貴重な駒だ。』


『何を言い出すと思えば、で何が言いたいの?』


『これで何が言いたいのかわからないのなら、よほど幼稚な英雄物語だけ読んで育った馬鹿野郎だな』


『何ですって?』


『戦争を知らなさすぎ、いや舐めすぎなんだよ。』


(なお前田アツキ本人はアニメで見て、知っているつもりのようです。)


『英雄だろうが勇者だろうが、駒として打つタイミングを間違えれば死ぬもんだ。それができるのが戦争だ。そして戦争という盤面は至る所でそれも同時か連続して起こる。それに対して英雄や勇者の駒は明らかに足りないからな、全ての盤面に置くことなんて不可能だ。俺が言いたいことわかるか?戦争である以上、勇者や英雄が生き残り、活躍できるように支えるもはや捨て駒に近い駒、勇者や英雄がいない泥沼な戦場で勝利を得ようと戦う勇敢で数の多い駒が必要なんだよ!それこそが、名もなき戦士達、兵士達だ。そして、騎士達はその硬い鎧で身を包み避けず、逃げずに踏ん張り続け、最も勇者達の尻拭いをする兵士達だと俺は思う。勇者や英雄もそんな彼らの犠牲を必要とする己の無力さを悔しがって、そしてそれらを割り切って戦ってるんだろうけどさ。俺は騎士達のあの頑強さ、粘り強さが大好きだ。そして今、それと同じ姿に転生できたことを誇りに思うよ。』


女の殺気がおさまった。


『・・・・・あなた転生者なの?』


『?うんそうだけど?』


『・・・失礼、あまりにも転生者に対して失礼すぎましたわ。でも、なんで私のガ・・・迷宮主の選定に転生者が紛れ込んだのかしら?』


今ガチャって言おうとしたな、絶対ガチャって言おうとしてたなおい。


『あー、俺結構珍しいタイプの転生の仕方しちゃいました?』


『そうですね・・・魔物、それもドラゴンや上位のものになら転生した者が過去にいることはわかっていますけど、あなたみたいに低級の魔物でさらにダンジョンの主に転生した方はおそらくですが記録上初ですね。』


『てか、ドラゴンとか騎士とかいるんだこの世界。』


『?転生する前に担当の神から説明は受けなかったのですか?』


『あぁ、神様には会ったよゼラって人。ただすでに転生先はほとんど決まってたみたいで・・・なんか急かされちゃった(笑)。』


『・・・・そんな名前の神聞いたことないですし・・・しかもそれかなり怠慢してませんか?』


『・・・?下っ端とは聞いてたけどね。それに俺みたいなやつをわざわざ転生させたくらいだからさ。この転生先も俺がまぁ気にいるとわかってたんだと思うよ』


『いや・・・そもそも低級の神だと人に語る名前などないはずですし・・・。転生先については多少のランダム性が働くとは聞いてましたが、これでは他の神々に対する干渉でありタブーのはずなのですけどね。』


『その言い方、あなたもやっぱり神様なの?てかダンジョン運営する神と転生扱う神は違う部署みたいな感じ?』


『そう、一つのダンジョンを預かる身となって私もようやく人に語れる名を手にしましたの。私の名前はエリカ、ファーストコンタクトは最悪でしたけど改めてよしなにどうぞ。共にこのダンジョンを育てていきましょう。』


『エリカ様、俺が転生者だからって急にかしこまらくてもいいですよ。さっきまでの話し方の方が楽でしょ?俺も気軽に話せるし。』


『・・・そう、じゃあよろしくねアツキ殿♪』


うん、そっちの方が似合ってるぞ絶対。


『まずは・・・この世界について説明しないとね。この世界には人間やエルフ、ドワーフ、獣人、精霊、そして魔物や魔人がいるの。これらはすべて私達の先祖の神々が創造したの。最初は神様達含めてみんな地上に住んでいたんだけど、人々はそれぞれ様々な神を信奉するようになると段々と対立するようになって、結果的にそれは神々同士の争いにも発展したわ。神々が創造した生命達がそれぞれ異なる神を称えて殺し合いをしている現状に責任を感じて、人間とどう関わっていくかで意見が分かれたの。一つは、積極的に介入して人々を平和に管理しよう。もう一つは、そこまで干渉せずに見守ろう。その結果神と人間がそれぞれお互いに長い戦いを続け、人々の管理を唱えた神々は敗北。後に魔界と呼ばれる世界の隅の過酷な環境に信奉してくれた人々と共に追いやられ、神々は邪神、人々は魔人という蔑称をつけられることになるの。』


『んで、今もその争いの名残が残って戦い続けてる感じ?』


『そうね。最終的に勝利した神々もそこからさらに二つに分かれちゃったの。一つは戦いに疲れ、大地に染みすぎた死の匂いに嫌気がさして本来主張していた無干渉論を言い訳に空に新しく大地をつくってそこに逃げた天神。そしてもう一つはそれでも、捧げ物や信奉してくれる人々にそれに見合う恩を返そうとして残った地神。今は天神と邪神の戦いが人類やエルフ、ドワーフ達の連合と魔人による代理戦争で泥沼に続いてるの。天神達は新たに勇者や天使、人々に友好的な魔物を、邪神達は魔王や悪魔、より人々を敵対視する魔物を創造して戦争に投入したの。正直天神達がもう少しテコ入れをすれば勝てるはずなのに、今の状況に対して満足したり、平和なせいで増えすぎた神々同士で見苦しい権力争いをしたりして怠慢してるのよね。人々、特に最も母数の多い人類も同様で内輪揉めや腐敗が蔓延しているの。それで邪神達は生きながらえて時々反撃しにきたりもする。全く・・・この戦争終わらせる気があるのかしらね・・・・』


『いや、あったま悪くないかそれ。人も人ならそれを作った神様も大概ってことか。』


『でも私は違うわよ。ある日とある神が提案したの。人々を鍛える迷宮、ダンジョンを神々で創造しようって。それで生まれたのが現在までに5つある神々のダンジョン。そして!!今ここに!!6つ目のダンジョンが誕生するのよ!!そしてそのダンジョンを管理するのが私、この役職につけるってことは中々エリートなのよ!(エッヘン)』


『・・・相当楽しみにしてたのに、ごめんね俺なんかが来て』


『いいえ、あなたの言葉のおかげで初心に帰ったわ。冒険者を、叶うなら勇者をも鍛えるダンジョンを作るわよ!そのためにあなたにも手伝ってもらうからね!』


『戦闘経験なんか全くないけど頑張るよ。で、その黄色い球は何?』


『あー、これ?これがダンジョンのコアよ。ほら見て私の名前がちゃんと刻んであるのよ!これがないと神ダンジョンは機能しないし、これでダンジョンの管理、運営、そして拡張もするの』


『なるほど。ダンジョンってことは他にもモンスターとかあと宝箱もある感じ?』


『そうね。邪神の創造したモンスターを除く全てのモンスターは一応召喚できるわ。そして、あなたと同様倒されても一定時間後にリスポーンするの。ダンジョンの中ではっていう条件付きというのが注意。あとは罠とかも仕掛けられるわね』


『罠か・・・あんまりそうゆうの好きじゃないな』


『言うと思った。安心して。既にある5つのダンジョンのうち1つに罠だらけのダンジョンがあるからあんまり罠は置かないつもりだったのよ・・・ただね・・・あーやっぱりだ』


『どうしたの?』


『やっぱりだ。あなた以外のモンスターを召喚しようと思ったけどね。これ見て』


と言うわけで、俺もパネルを見てみる。


『あなたはダンジョンの主だから、本来なら一体ずつ契約が必要なんだけど、他のモンスターは自動的にみんなあなたの眷属になるの。そして、あなたの場合同じ種族であるリビングアーマーが眷属ならボーナスがかかったり、召喚コストが安くなったりするの。それで、これ見ればわかるけど、生まれたてのダンジョンが召喚できる初期モンスターはスライム、ゴブリン、コウモリ、お分かりかな?リビングアーマーの中でも一番弱い下級リビングアーマーでもあと1段階拡張しないと召喚できないのよね』


『まじか・・・、なら先に拡張しちゃおうよ。あ・・そういえばさっき召喚コストっていったよね?ダンジョンの拡張にもコストはかかるのかな?』


『そうね。じゃあそのコストってどうやって稼ぐの?ってたぶん聞いてくるだろうから先に答えるわ。一つはダンジョンを賑やかにさせること。この理由はあとで教えるわ。そしてもう一つはシンプル。ここみたいな洞窟だと魔石の鉱脈くらいあるだろうからそこまでダンジョンの一部として取り込むこと。ちなみにだけど、自然界には魔石の鉱脈を元に魔物が異常に生成されてできた天然のダンジョンが数多くあるわ。あと取り込んだ鉱脈掘っちゃうと吸収する魔力が減っちゃうから掘るのはダメよ』


なるほど。ある程度今後の方針がわかったような気がする。意外となんとかなりそうで安心した。


『それじゃあ、まずはこの洞窟の出口探さないとな。ちょっと探索してくるよ。あ、できるだけ上に拡張よろしくね。うっかりダンジョンの外でリスポーンできませんでしたは笑えないからさ』


『待ちなさい。まだ話は終わってないわよ。あなたのダンジョン拡張についての話のせいでそれたけど、あなた達リビングアーマーの問題点について話させてもらうわよ』




『・・・・・え????』





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