第一話 お待たせしました転生です。

なんか変だ。突然声が聞こえた。視界は真っ暗で何も見えない、いや真っ暗であると認識できている。死んだというには違和感があった。


『こっちこっち。少し話をしようよ。』


振り向くと青年がいた。俺と同じくらいの若さに見える。ただ俺より遥かに美形で金髪とエメラルドグリーンの瞳が輝いている。こんな変な空間でこんな人物、目星がついたので試しに聞いてみた。


『もしかして神様だったりしますか?』


『(笑)こうゆう状況も想像したことあるのかな?まぁ半分は正解だよ。半分しか合ってないのは僕が君の思っている以上にえらい神様じゃないからさ。』


『その言い方、俺の頭の中でも覗いたのか?最初に尋ねてきた言い方からして俺の最期を見ていたのはわかるが、人の頭の中に勝手に入るなんて感心しないな。それに偉くないって?神の世界にも序列があるの?』


『そうだね、僕は下っ端で転生予定者と対面して転生先の説明、希望する能力の聴取とかやらされてるんだ。本来転生者って重要な存在なのに上司の神がめんどくさがり屋でね。』


『なるほど、窓口やらされてるんだ。ん?待って転生だって??』


『そう、君は死んだ魂の中から選ばれたんだ。僕たちの世界に転生する権利をね。』


『気は確か?頭の中見ておいてその判断するとかだいぶイカれてると思うけど。』


『いやいや、君みたいに尖った人間じゃないと転生させる意味ないよ。召喚者だったら向こうで支えてくれる人がたくさんいるだろうけどね。』


『?あ、そうか転生だから向こうで新しく生まれるのか俺。』


『そっ、時々召喚もするけどそっちの方がコストかかるからね。転生した後で生前と同じ暮らしをしようと思ったらできるけど、こっちとしては困るし。それに君の場合たぶんそれは叶わないしね。』


『その言い方、生まれる先が決まってるみたいだけど俺何に生まれ変わるの?』


『それは後でのお楽しみ♪まぁ世界を救う勇者になれとは言わないから安心して、ただ君にはその手伝いをして欲しいんだ。』


『さらっとお願いされたな。手伝いと言っても世界を救うのを手伝うんじゃ気が重いなぁ。てか、転生先勝手に決められてるけど本当に大丈夫?ふざけたものに転生してたらキレるよまじで。』


『さっきも言ったでしょ。僕は君の頭の中を覗いたんだから、きっと君も喜んでくれるよ。能力については君の好きなように拡張できるから好きにするといいさ。そ・れ・に、あの子と最期話すことができるようにしたの誰のおかげだと思う??』


うわ、気づかない間にかなりの恩を受けていたみたいだ。でもそこまでこっちの世界に干渉できるなら・・・と思ってたら、何だか空間が、いやこの黒い空間の外側からつつかれるように騒がしくなってきた。


『おっと、もう時間切れのようだね。それじゃ、前田アツキ君。君の第二の人生に成功と祝福があらんことを。』


周りが光りだす。どうやら本当に転生する見たいだ。


『あ、そうだ最後に。』


『?』


『下っ端の神様でも名前くらいあるでしょ?名前なんていうの?』


『・・そんなこと気になるのかい(笑)・・・ゼラ、僕の名前はゼラだよ。』


『そう、ゼラさんありがとうね。頑張って出世しろよ〜』


そう言った後で目の前が光に包まれた。



やっぱり面白い子だったな。さて、君の物語どう綴られていくのかな?



眠りから覚めるように気がついた。視界の周りは・・・・岩?ん?岩しかない?え、これ外じゃないな、洞窟か。そう思った途端に後ろから女の発狂した声が聞こえる。


『ハァーーーーー!!?!?!嘘嘘嘘!!!なんでなんで!!!壊れてんじゃないの?!もう一回やり直させてよ!!』


振り返ると背の高い女がいた。オレンジ色の髪は床につくくらい長くて服装も変だ。明らかに洞窟探検するような姿じゃない。てか・・・少し光ってるし浮いてる?

彼女は同じような嘆きを言いながら眩しく光るオーブを両手で振ったり叩いたりしている。


『・・・・あの?大丈夫ですか?』


『?!?!?!』


俺が話しかけた途端彼女は一瞬で表情を変えて岩陰に隠れる。


『嘘・・・喋った・・・ダンジョンの主だからって・・・喋れるようになるの???』


『????あの俺一応人間のつもりなんだけど、あまりにも失礼すぎません?その言い方。』


『うん、まぁ・・・元人間なんだろうけどね・・・』


いや、転生者だからねって問題なのか?そういえば転生先の世界のことなんも聞けてなかった。言語とか大丈夫なのかな?


『いや・・・まさかね。下級アンデッドのリビングアーマーが喋れるわけないじゃん。』


は?何アーマーだって?アンデットだって????そういえば体がやけに重いし、全身に違和感がある。


『あの・・・鏡とか持ってますか?』


『鏡?あぁ、ほら』


そうすると女は両手でカメラを撮るポーズをしたかと思えば、両手を対角線上に広がる。すると両手に沿って長方形の光る板が現れた。

そしてそこに新しく生まれ変わった俺が映る・・・はずだった。中世の甲冑それもrpgゲームで城の門番をやってそうなひ弱なものだ。それしか映らない。?????兜を外そうとするが外れない。というか、兜に僅かだが肌のような感覚がある。


『スキルボード見てみたら?』


女に言われて手探り探りで頑張ってスキルボードを開く。

前田アツキ

レベル1

種族 リビングアーマー


リビングアーマー


ゾンビやスケルトンなどの下級アンデットの一種。鎧の内側にコアを持ちそれが本体。死んだ騎士の霊がコア化して、着ていた鎧を新しい体として憑りこむことでリビングアーマーとなる。またそこら辺の鎧にゴーストが取り憑いてリビングアーマーになることもある。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・アンデッドって死んでるよな?俺転生したんだよな?転生した先で早速死んで蘇った系のモンスターやるってどゆこと?


こうして俺の転生生活が始まった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る