第12話 お買い物

#1

ぬっと、キーアンとアックスの間から、

大柄なおじさんが顔を出す。

口ひげが印象的だ。

「キーアンとそれから、あー…ぼんぼん、

食べ終わったなら、ちと手伝ってもらえるか?」


「ぼんぼんってなんだよ!

俺はぼんぼんじゃねえぞ!」


アックスが即座に反応するが、


「はっはっはっ!

お前がぼんぼんじゃなかったらなんなんだ、え?

ま、元気なのはいいことだ、

宿代分働いてもらうぞ」


と言い、おじさんは笑う。


「おじさん、宿代、本当にいいんですか…?」


と、キーアン。

そう、私たちはなんと、

おじさんのご厚意で無料で

泊めていただいているのだ。


「お前らは俺たち夫婦の

子供みたいなもんだからな。

当然じゃないか」


おじさんはにっこりと笑った。


「でも、ちゃっかり労働はさせるんだな」


とアックスがつぶやいたのを聞き逃さず、


「家族はお互い助け合うものだろう?」


と、おじさんはウインクする。


「あの、私も手伝います…!」


私は進み出たが、おじさんが首を振った。


「いや、君みたいなお嬢さんに力仕事を

させるわけにはいかないよ。

旅に慣れている様子じゃないし、

疲れているだろう。今晩はしっかり休みなさい。

横のお姉さん、お嬢さんを頼んだよ」


「はーい」


カエデは楽しそうに返事をし、

アックスに悪戯っぽく目配せした。

それに対して、アックスは顔をしかめて返す。

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