#2


空の皿を全員で宿の厨房に返した後、

キーアンとアックスはおじさんにつれられて、

また庭に出て行ってしまった。


「さてと…

私たちは、お店が閉まる前に

買い出しに行こっか!」


カエデはそう言って

宿の正面玄関に向かおうとするが、

私は慌てて、

「無理だよ、私お金持ってない…!」

と引き留める。


村では物々交換が主流だったので、

女性はお金を持つことがあまりなかったのに加え、

着の身着のまま飛び出してきてしまったため、

一文無しなのだ。

すると、カエデは鞄から

麻でできた巾着袋を取り出した。


「じゃじゃーん。

ここに、昨日今日で倒した魔物が落としたお金、

全部入ってまーす」

巾着袋の中には、数十枚の硬貨。

私は所持金が0なのに、

魔物ですらお金を持っているのか。

少し悲しくなったが、

ひとまず買い物はできそうだ。




宿に隣接して建つ、宿とそろいの三角屋根の、

1階建ての小さな木の建物。


「ごめんくださーい」


「あ、さっきのだね!買い忘れかな?」


その入り口の扉をカエデが開けると、

入ってすぐのカウンターに立つ

若い男性から声がかかった。

中の空間は左右に長いが奥行きはなく、

奥行きを半分に仕切る形でカウンターがある。

手前側の空間には何もなく、

カウンターの奥の壁のフックに、

商品の見本が掛かっている。

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