#6


この黒い水面には、

まったく命のようなものは感じられない。

冷え冷えとして、

何者も受け入れないという拒絶すら感じる。

恐ろしくすらあり、逃げ出したいくらいだ。


「何もない…潜れない…」


「そう…。適当なところで、目を開けていいよ…」


カエデの許しが出たので、私は目を開けた。

光がまぶしく、思わず目を覆う。


「ま、今回は形がみえただけでも上出来ね!

繰り返しやっていればできるようになるから大丈夫」


カエデがにっこりとして言う。


「俺もやったことあるけど、なんも見えなかったぞ」


アックスが口を挟むと、カエデが呆れたようにつぶやいた。


「この世界の人は、

練習すればみんなできるはずなんだけど、

たまに集中力が無い人はダメみたいなのよね…」


「まあまあ、魔法が全てじゃないからな。

アックスは魔法を使わなくたって十分強いじゃないか」


キーアンがとりなすと、アックスはふんと笑った。


「そうそう、俺はつえーからな!

魔法なんかいらねーよ!」


魔法を使えるようにならなかったことで、

落胆が無いといったら嘘になる。

あの水面はとても恐ろしく、

何度も練習するのは正直気が乗らないが、

忍耐強く向き合い続けるしかないようだ。


「このハープ、ロナが持っていた方が良いかもね。

鞄を買ったら後で渡すね!」


そう言って、カエデはハープを自分の鞄に再びしまった。


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