#4


「あんたも、ちょっと若いけど、

いいんじゃないかと奥さんと

話していたところだったんだよ」


「へあえ!!??」


予想外のことに、思わず素っ頓狂な声が出る。


「声が大きい!!」


ひそひそ声のままどうしたら

そんなに大きな声がでるのか、という声量で、

母は私の頭をはたく。

理不尽だ。


「村の外側の畑に出ている村の男たちによれば、

最近は村のすぐ外まで魔物が来るというし。

少し前にあった大きな地殻変動以来、

テンセーシャとかいう、見た目は人間そっくりの

不届きものの輩もうろついていて、

物騒だと聞くもの。

1か月も帰ってこないってことは…」


最後の言葉を、母は濁した。


キーアンは、私の4つ年上の男の子だ。

栗色のツンツンとした髪の毛に、

大きな明るい緑色の瞳は、

いつも微笑んでいるように目じりが下がっていた。

小さい頃から口数は少なかったが、

それでも家が隣のこともあり、

私がまだ幼い頃にはよく遊んでいた。

線の細い、優しい、でも芯の強い男の子。


やがて成長してキーアンの背が高くなり、

声も低くなってからは、

急にお互いよそよそしくなってしまった。

私は村の他の女の子といることが増え、

キーアンはたまに、知らない男の子と

村の外に出かけたりしているようだった。


村の筋肉自慢と並ぶと華奢だが、

ほどよく引き締まった体と

すっとした目鼻立ちから、

周りの女の子の中には、

キーアンに恋愛感情を持っている子もいた。

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