#3


「ただいまー」

「あら、ロナ。おかえり」


木の戸を開けると、

ちょうど母が火をおこしているところだった。


「お母さん、何かすることある?」


物音を聞きつけて、

軽快な足音を立てながら、

妹のケイトリンが2階から降りてきた。


「姉さま、おかえりなさい!

ケイトリンもお手伝いするわ!」


ケイトリンはまだ7歳ながら、

とてもしっかりしている。

肩までのブロンドの髪を

ツインテールに結った、

角のようなシルエットが特徴的だ。


「ケイトリン、

この本を2階の本棚に戻してくれる?」

「もちろんよ」


ケイトリンはずっしりと重たい本を抱えて、

それでも軽々と階段を昇って行った。


「あんたは玉ねぎをむいてくれるかい?」


私は頷くと、壁に埋め込まれた

レンガ造りの釜戸の向かいにある

机の上で、玉ねぎをむき始めた。

後ろでパチパチという音が大きくなる。

火が安定したようだ。

母が私に顔を近づけ、

ひそひそと話しかける。


「お隣のグリフィスさんち、

かわいそうにねえ…。

18歳のちょうど働き盛りで、お嫁さん探しも

張り切っていたところだったのに」


お嫁さん探し、というワードに

ドキリとしながら、「へえ」と相槌を打つ。

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