#2


3つ目の分岐で、私は右に曲がった。

道の右手に、2軒の家が近接して建っている。

奥が私の家だ。

ちょうど手前の家を通りかかったときに、

自分の母親と同じくらいの年の女性が、

木の戸を押して出てきた。


「おばさん、こんにちは」


私は声をかけた。

女性は沈痛な面持ちで、

この1か月の間に皺が増えたようだった。

しかし私が声をかけると、

すぐにパッと明るい表情を浮かべた。


「あら、ロナちゃん。

今日も読み聞かせ?立派だねえ」

「いえ、そんな…」

「うちのキーアンは、

どこをほっつき歩いているのやら」


私は何も言えなかった。

この女性の息子であるキーアンは、

1か月前に姿を消したきり行方不明なのだ。


「ま、あのバカ息子のことだから、

そのうちひょっこり帰って来るでしょう。

そうしたら、

ロナちゃんも歓迎してあげてね」


楽観的な言葉とは裏腹に、

おばさんの目は暗く沈んでいる。


「帰ってきますよ、きっと」


それが、私に言える精一杯だった。


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