#2


「長い闘いの末、勇者は大剣の力で魔王を封印し、

地下深くに閉じ込めました。

その時、大剣から7つの宝石が弾け飛び、

再び各地に散っていったのです。

残った大剣は、青白い光を放ち、

その輪郭は徐々に揺らいで、

ついにはと大きく形を変え、

巨大な瑠璃色の球となりました」


「ロナ姉ちゃん、瑠璃色ってどんな色?」


話を遮り、一人の男の子が訊く。


「そうねえ…。

広い海のように、深くて鮮やかな青色のことよ」


「じゃあ、ロナ姉ちゃんの髪の毛は瑠璃色だね」


そうかしら、と、

私は自分の長い髪を手櫛ですくって見やり、

その男の子に笑いかけてから、

おはなしに戻った。


「その時突然、空色の竜が現れ、

瑠璃色の球をさらって飛び去って行きます。

勇者たちは、その竜がどこから来たのか、

そして瑠璃色の球がどこに行ったのか、

知る由もありませんでした。

瑠璃色の球は、この世界のどこかの山に

眠っていると言われています」


そして私は本を閉じた。

「おしまい」


わっと子供達が賑やかになる。


「ねえねえ、竜はどこに行ったのー?」

「勇者さん、剣無くなっちゃったね」

「でももう魔王はいないんでしょ?」


楽しそうに話す子供達を眺めていると、

スカートが引っ張られた。

ふと見ると、4歳くらいの小さな女の子が、

こちらを見上げている。

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