第3話
一ヶ月後、ぼくは手術台の上にいた。そして横には手術着にゴーグル・マスクといったフル装備の一宮さんがぼくに話しかける。
「それでは、御坂さん、これから全身麻酔をかけて手術を開始します。よろしいですか?……今ならまだ引き返せますよ。」
「この土壇場でその言葉はズルいですよ。……大丈夫です。お願いします。」
「……わかりました。それでは御坂さん、手術内容は先程お話したとおりです。麻酔により意識が徐々に落ちていきます。その後の事はお任せください」
「わかりました、お願いします。」
「……意識レベルの低下を確認しました。脈拍正常です。いつでも行けます。」
「了解。これより脳の摘出手術を開始する。」
執刀医がボソリと一宮にしか聞こえない程度の声量で呟く。
「……仮想現実の世界で生きる、か。小説や映画の中でしか起き得なかった事が現実になるとはね。」
一宮もその耳が言葉を脳内で反芻し、執刀医に聞こえるか聞こえない程度の声量で返事をする。
「目の前に被検体がいるのに、実感が湧きませんね。」
「我々にとってはそんなものなんだろう。そして、この人にはそれが救いか何かだったんだ。これはきっとそういうことだろう。…始めるぞ。」
無機質で規則正しい機械音が鳴り響く中、手術は進んでいく。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます