匙休め13 白き小麦酒

 普通のビールのほとんどは〈大麦〉で作られ、ギネスのような黒ビールもまた、黒くなるまでローストした〈大麦〉で作られている。これに対して、白ビールが原料としているのは〈小麦〉で、つまり、黒ビールを含んだビール一般と、白ビールとでは、原料それ自体が異なっているのである。


 原料が異なれば、当然、味も違う。

 だから、大麦で作られたビール独特の〈苦味〉が苦手なカレー・ラヴァーも、カレーと合わせるアルコールとして、白ビールという選択肢を視野に入れても良いのではなかろうか。


 白ビールは、小麦、あるいは、小麦を多く使っているのだが、小麦の特徴は〈グルテン〉というタンパク質を多く含む点である。つまり、このタンパク質などによって液体が白く濁るため、小麦を使ったビールは白くなるのだ。

 もっとも、白ビールの白さは、牛乳やカルピスのそれとは違っており、または、茶色だよね、という印象の、あまり白さを感じない〈白ビール〉も存在するのだが、これは、色が濃いビールに対して、相対的に色が薄いものを「白ビール」と呼んでいた時代の名残であるそうだ。

 

 つまり、〈白ビール〉とは小麦を使った、薄い色味のビールの事を指し、数多くの国で様々な白ビールが作られているのだが、黒ビールの代表がアイルランドのギネスであるように、白ビールの代表をベルギーのヒューガルデンとみなしてもよいように思われる。かつて書き手が、カレーと合わせた白ビールも、実は、この銘柄であった。


 「ヒューガルデン ホワイト」とは、ベルギーの「ヒューガルデン醸造所」で製造されている白ビールで、そのビアスタイルは〈ベルジャンホワイト〉である。

 

 〈ベルジャンホワイト〉、〈ベルジャンホワイトスタイル ホワイトエール〉は、〈ベルジャン〉とあるように、ベルギー発祥のビアスタイルで、麦芽化していない小麦を主原料とし、さらに、オレンジピールとコリアンダーシードを副原料としている。

 しがたって、ベルジャンホワイトは、小麦原料ゆえに泡の保ちがよく、さらに、副原料のオレンジピールの柑橘系と、コリアンダーシードのスパイスの風味のおかげで、あまり苦くはなく、ほんのりとした酸味が感じられる爽やかな味わいになっているのだ。 


 カレー店で提供されたヒューガルデンはジョッキに入れられていたのだが、スーパーなどに置かれているヒューガルデンの缶は〈白〉で、この容器の色それ自体が、ヒューガルデンが〈白ビール〉の代表である事を強く主張しているように思われる。


 書き手は、ヒューガルデンを提供しているカレー店が割と多い印象を抱いているのだが、つまりそれは、この小麦酒がカレーに合う事の証左なのではなかろか。

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