第参章 夜の咖哩をしないかね

参ノ一 西神田を飛び巡る夜鳥の如く

第26匙 日曜日には黒い麦酒で黒麦酒豚カレーを:ピッグテイル(B09)

 ガイドブックで、今回の「スタンプラリー23」に参加している一四二店を眺めていると、営業時間が〈夜〉のみという店も割と認められ、そういった店の業務形態は概ね〈居酒屋〉ないしは〈バー〉なのだ。

 そこで、書き手は、そういった夜営業の飲み屋を訪れて、カレーと共にお酒も楽しむ、という自主企画を立てたのである。


 ガイドブックから、居酒屋やバーをピックアップしてみると、千代田区の西側、神保町や九段下界隈、こう言ってよければ〈西神田〉に何軒かの、カレーを提供する飲み屋を見付けたので、まず、西神田のカレー料理を提供している飲み屋を、〈ハシゴ酒〉ならぬ、〈ハシゴカレー〉してみる事にしたのだった。

 そういった次第で、書き手が〈一軒目カレー場〉として訪れたのが、神保町の例のデルタゾーンの左辺に位置している「豚バル ピッグテイル」であった。


 この店の定休日は、月曜日と祝日、そして第三日曜日で、これに対して、開店日時は、火曜から土曜の十七時〇五分から二十四時、日曜日に関しては、一時間閉店が早い、十七時〇五分から二十三時である。

 とまれかくまれ、日曜日に開いていない店が多い中、日曜日の、そこそこ深い時刻まで来店できる点は非常にありがたい。

 そこで書き手は、敢えて、その日曜日の夜に、「ピッグテイル」を訪れたのだ。

 

 ピッグテイルは、店名の頭に「豚バル」という語が付き、さらに、店名の横文字は〈豚の尻尾〉と訳せる分けで、すなわち、これらが象徴しているように、このバーで提供されているのは、「やみつきポークポテト」「肩ロースの鉄板グリル」「豚ロース肉の黒胡椒グリル」「ローストポーク」「豚串盛り」といった豚料理が主である。


 書き手は、昨年も、この「ピッグテイル」を訪れ、その時には、「名物!豚フィレフォアグラカレー」を注文した。

 この名物料理は、トッピングとして、ソテーしたフィレ肉やフォワグラが使われている、非常に贅沢な一品であった。

 この品は非常に美味だった記憶があるので、書き手は、再び注文したい気分に駆られもしたのだが、今回は別のカレー料理を頼もうと最初から考えていた。


 メニューは、「温玉チーズカレー」「おこり豚カレー」「まるごとトマトの豚カレー」「黒ビール豚カレー」「黒ビール豚野菜カレー」といった料理も並んでいたのだが、〈夜にカレーと共にお酒を楽しむ〉をテーマとしている書き手の目に止まったのは、「黒ビール豚カレー」や「黒ビール豚野菜カレー」であった。


 メニューの説明書きによると、「黒ビール豚カレー」とは、「黒ビールを飲んで、音楽を聞いて育ったブランド豚『富士ヶ嶺ポーク』のロース肉をジューシーに焼き上げてカレーのルゥをかけ」、「ルゥにも各種スパイスの他、黒ビールを使用し」た品であるらしい。 

 この〈富士ヶ嶺ポーク〉とは、「山梨県、富士ヶ嶺」で飼育されている豚で、「ストレスフリーな環境」の下、「黒ビールを飲ませ」られ、育てられているらしい。


 こうした黒ビールを飲んでいる豚を具材としたカレーに、黒ビールが使われ、、いわば、〈黒ビール〉尽くしのカレーを注文するのならば、この料理を食べる者もまた、黒ビールを飲むべきであろう、と書き手は発想し、お酒は、スタウト、すなわち、黒ビールたる〈ギネス〉を注文する事にしたのである。


 黒ビール尽くしの豚カレーをギネスに合わせる、というのは実に乙なのではなかろうか。


〈訪問データ〉

 豚バル ピッグテイル:神保町デルタゾーン

 B09

 八月六日・日・二十一時十五分

 黒ビール豚野菜カレー(一〇八〇)ギネス(九〇〇):一九八〇円(クレカ)

 北斗の〈券〉:No.04 トキ


〈参考資料〉 

 「豚バル ピッグテイル」、『神田カレー街 公式ガイドブック 2023』、六十九ページ。

〈WEB〉

 「店舗情報」「自慢のお料理」、『豚バル ピッグテイル』(オフィシャルページ)、二〇二三年九月十四日閲覧。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る