第27匙 牡蠣と香辛料:三月の水(A12)

 二夜連続して、書き手は〈神保町デルタゾーン〉にやって来た。


 今回の企画は、夜にカレーを提供する飲み屋を巡る〈ハシゴカレー〉なのだが、この時展開していた〈西神田〉のターンは、一夜のうちに数軒の店を渡り歩く、といった類のものではなく、数夜連続で飲み屋の敷居を跨ぐ、といったものなのだ。

 そして、前夜の「ピッグテイル」に引き続き、二軒目酒場として書き手が訪れたのは、神保町デルタゾーンの左辺の左側に位置し、ピッグテイルの斜向かいに在るバー、「三月の水」であった。


 「三月の水」といえば、二〇二二年の「神田カレーグランプリ」において「準グランプリ」を獲得した店で、さらに、小学館から刊行されている漫画、『カレーマン』に、実名で幾度となく登場している。


 いつものカレー・ガイドブックのこの店における「カレーへの思い」という項目には、ベトナムの「マイルドで辛いココナッツカレー」が好きで何度も現地に足を運んでいる、という店長の林さんの言があり、事実、「無水ココナッツシーフードクリーミーたまごカレー」「無水ココナッツ豚バラ角煮カレー」というメニューには、「ココナッツ」というタームが入っているので、「三月の水」のココナッツカレーは、ベトナムのカレーがベースになっているのかもしれない。

 さらに、スタンプラリーを巡っている者の為に、「ハーフカレー」も用意されており、この店に来る数時間前に別のカレー店を訪れていた書き手は、ハーフでいただく事にしていた。


 書き手は、前回、二〇二二年の「スタンプラリー22」の際には、「漫画『カレーマン』連載記念メニュー」であった「無水ココナッツ豚バラ角煮カレー」を頼んだのだが、今回の二〇二三年では、「漫画『カレーマン』第二巻発売記念」である新メニュー、「無水ココナッツ牡蠣カレー」を注文する事にした。


 今回、新メニューの具材に〈牡蠣〉を使ったのは、「牡蠣そば」が名物料理である、マスターの御実家の「漢陽楼」へのある種の挑戦であるようだ。

 その事は、件のガイドブックの店紹介ページにも書かれているし、そもそも、「三月の水」が入っているビルが「漢陽ビル」なのだ。

 その「漢陽楼」といえば、一九一一年、明治四十四年に創業された、周恩来ゆかりの老舗店で、漫画『カレーマン』に出てくる「カレーマン」こと「神谷正人」の実家の「歓天楼」は、おそらく、「漢陽楼」をモデルにしているのは間違いなかろう。


 実は、今回の訪店の際に、マスターとお話しする機会があったのだが、書き手は、上記の『カレーマン』の話を話題の種にしたのであった。


 ところで、「神田カレーマイスター」の称号を獲得した者に対して、マイスター特典として、何らかのサービスを提供している店もあって、「三月の水」では、二〇一五年から二〇二三年までの全グレードの全マイスターに、「オリジナルスパイスカクテル」か「オリジナルスパイスジュース」のいずれかがサービスで提供される。

 バーでカレーを頼む時にはお酒も、というのが今回のテーマなので、もちろん、書き手は、オリジナルスパイスカクテルをいただく事にした。


 実は、香辛料を使ったカクテル、書き手は初体験であった。


〈訪問データ〉

 BAR CAFE 三月の水:神保町デルタゾーン

 A12

 八月七日・月・二十時半

 無水ココナッツ牡蠣カレー(ハーフ):一〇〇〇円(QR)

 マイスター特典:オリジナルスパイスカクテル

 北斗の〈券〉:No.11「シン」


〈参考資料〉 

 「BAR CAFE 三月の水」、『神田カレー街 公式ガイドブック 2023』、四十二ページ。

 『カレーマン』第一〜二巻(はしもとみつお、作:宮崎克)、東京:小学館、二〇二二〜二〇二三年。

〈WEB〉

 「神田カレーマイスター特典ショップリスト」、『神田カレーグランプリ』、二〇二三年九月十五日閲覧。 

 『BAR CAFE 三月の水』、二〇二三年九月十五日閲覧。 

 『漢陽楼』、二〇二三年九月十五日閲覧。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る