第28匙 シンデレラの魔法が解ける、その前に :J.Tipple Bar(E06)

 西神田エリアでの〈夜カレー〉も三夜目を迎えた。


 その東端の神保町のデルタゾーンは〈Δ〉のような形状になっているのだが、三角形の頂点に在る「ピッグテイル」でお酒とカレーを楽しんだ後、富士見坂を少しだけ下り、ピッグテイルの斜向いに在る「三月の水」を訪れ、それから、坂道を下りきり、〈靖国通り〉まで至った所で、坂の麓の辺り、すぐ右の〈鈴華通り〉に入る。この平坦な小道は、〈白山通り〉という大きな通りと、〈11〉、こんな感じで平行して走っているのだが、この右側の〈鈴華通り〉を、水道橋方面に向かって進んでゆくと、三夜目の目当ての店である「J.Tipple Bar(ジェイ・ティップル・バー)」が、通りの左側に面している建物の二階に入っている。


 このバーは、日曜と祝祭日は休業なのだが、平日と土曜日は、十七時から二十六時、深夜二時まで営業している。

 この店に近接している駅はJR水道橋駅で、千葉方面行きに関しては、千葉行の最終が〈〇時三分〉、津田沼行が〈〇時三八分〉、対して、中野方面に関しては、三鷹行が〈〇時二〇分〉、中野行が〈〇時三八分〉である。

 一方、東京メトロの最寄りは、神保町駅なのだが、半蔵門線の平日の最終は、渋谷行が〈〇時二五分〉、清澄白河行が〈〇時〇六分〉である。

 つまり、JRにせよメトロにせよ、「ジェイ・ティップル・バー」は、終電が終わった後でも、カレーとお酒が楽しめる貴重な店なのだ。


 この日の書き手は、敢えて、二十三時半頃という深めの時刻に、このバーに駆け込んだ。それは、深夜に営業している店は、真夜中前後に訪れてこそ、店の本質に触れられるのではなかろうか、と考えたからである。


 さて、このバーで注文できるカレーは、「J.Tippleチキンカレー」一種だけなのだが、件のガイドブックによると、このカレーは「パキスタン直伝の本場のカレーをアレンジした」ものであるらしい。

 でも、そうは言っても、バーのカレーでしょ、と思いながら、出てきたカレーを口にしてみたのだが、その時抱いた印象は、スパイスがかなり効いて辛味が強く、具のチキンの骨がゴリゴリっとしており、こう言ってよければ、このソヴァージュな触感が、書き手の予想以上に、実に、〈パキスタン〉なカレーっぽかったのだ。


 お酒に関しては、この店ならではの「手作りジンジャーサワー」を頼み、この手作り酒をカレーに合わせる事にした。そのジンジャーサワーは、割と甘めになっており、辛さに支配された口内を緩和するには、ジンジャーの甘みが丁度よい感じであった。


 しかし、じっくりとカレーとお酒を楽しんでもいられず、常よりも、食事と飲酒のスピードを速め、時計の針が天辺を越える五分前に会計を済ませるや、書き手は、最終列車に乗るべく駅に急ぎ向かった。


 店から最も近いメトロの駅は神保町駅だったのだが、書き手が使っている路線は東西線なので、乗り換えの時間も考慮に入れて、神保町駅ではなく〈九段下駅〉まで向かう事にした。

 九段下から出る東西線の中野行の最終は〈〇時一八分〉だったのだが、小走りで急いだ事が功を奏し、五分以上の余裕をもって九段下の改札を通る事ができた。


 店を出る間際にワタワタしてしまったのは確かなのだが、神保町エリアで飲み食いをした場合、深夜零時前に店を出さえすれば、終電に間に合う事が証明できたので、〈シンデレラの魔法が解けないうちに〉を今後の行動基準にしよう、と思う書き手であった。

 

〈訪問データ〉

 J.Tipple Bar:水道橋エリア

 E06

 八月八日・火・二十三時半

 J.Tippleチキンカレー (一二一〇)手作りジンジャーサワー(九九〇):二二〇〇円(クレカ)

 北斗の〈券〉:No.20「ヒューイ&シュレン」 


〈参考資料〉 

 「J.Tipple Bar」、『神田カレー街 公式ガイドブック 2023』、三十五ページ。

〈WEB〉

 『J.Tipple Bar』、二〇二三年九月二十一日閲覧。

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