弐ノ三 困った時には此処に行け

第23匙 DDカレー店:東京カレー屋名店会(D05) 

 例えば、どこのカレー店に行くかで悩んだり、仲間内で何処でカレーを食べるかで揉めてしまったとする。


 そういった場合には、「東京カレー屋名店会」に行く事をおススメしたい。

 この店は千代田区に二店舗、秋葉原と有楽町で展開しており、秋葉原店は「アトレ秋葉原」、有楽町本店は「イトシア有楽町」に入っている。


 「東京カレー屋名店会」(以下、「名店会」と略記)というその店名それ自体が端的に表わしているように、「日本のカレーの魅力をより多くの人に一つの場所で楽しんでいただきたい」というコンセプトの下、「歴史と実績」を誇る東京のカレー料理の名店がここに集結している。

 名店会のホームページを参照すると、その旗印の下に集っている参与店の中に、湯島の「デリー」、神保町の「エチオピア」や「共栄堂」、半蔵門の「プティフ・ア・ラ・カンパーニュ」などの名があった。


 名店会では、その〈一致団結〉の表われとして、「名店会オリジナルカレー」、例えば、「名店会チキンカリー」や「名店会牛すじカリー」といった、名店会の独自メニューの提供も行っているのだが、やはり、この店のウリは、例えば、湯島や神保町まで行かなくても、「1店盛り」というメニューを注文しさえすれば、湯島のデリーや神保町のエチオピアのカレーを、秋葉原か有楽町で食べられる、という点であろう。


 ただし、例えば、デリーはカシミール、エチオピアはチキン豆カリー、共栄堂はスマトラポークカレー、といったように、提供可能なメニューは絞られており、他の種類のカレーを食べたい時には、湯島や神保町にまで足を運ばなければならない。  

 それならば、足を延ばして、湯島や神保町まで行くわ、という考えを抱く方もいるであろうが、そもそも、この店の利点は、デリーにすべきか、エチオピアにしようか、でも、共栄堂もいいな、と悩んで、店を決められない場合や、同行者の間で店の選択で揉めたケースにこそ、有効性を発揮する。

 つまり、Aさんはデリー、Bさんはエチオピア、Cさんは共栄堂といった選択が、名店会ならば可能なのだ。


 しかし、どんなに〈自己〉との対話を交わしても結論を出せない、そんな孤独なカレー愛好者も、きっと存在するであろう。

 そんな優柔不断な方向けに、「2店盛り」というメニューも、名店会は用意しており、これは、二つの店のカレーを一度に食べられる、というコンセプトのメニューなのだ。

 この品に関して、名店会は、例えば、エチオピアと東京スリランカ、あるいは、デリーと東京スリランカ、エチオピアと共栄堂、共栄堂とプティフ・ア・ラ・カンパーニュといった組み合わせを提示しているのだが、自分の好きな店を組み合わせる事もできるし、名店会の「カレーソムリエ」に相談すれば、客の希望に沿った組み合わせをアドヴァイスさえしてくれるらしい。

 むしろこの異なる店のカレーを同時に食べられる、という点こそが、店の真髄であろう。


 だがしかし、である。

 〈DORE〉も〈DAISUKI〉過ぎて、二店に絞れない、そんなカレー・ラヴァーもきっと存在するに違いない。

 でも、心配する必要など、まるでない。


 名店会では、エチオピア、東京スリランカ、デリー、共栄堂、そして、プティフ・ア・ラ・カンパーニュという五店のカレーを一度に楽しめる、「5店盛りコンボカレー」という、どれも大好きな〈DD〉用のメニューさえ用意されているからである。


〈訪問データ〉

 東京カレー屋名店会:有楽町

 D05

 九月一日・金・十九時四十五分

 2点盛りD 共栄堂 スマトラポークカレー、プティフ・ア・ラ・カンパーニュ 欧風ビーフカレー:一四八〇円(現金)

 北斗の〈券〉:No.07 サウザー


〈参考資料〉 

 「東京カレー屋名店会」、『神田カレー街 公式ガイドブック 2023』、六十五ページ。

〈WEB〉

 「コンセプト」、『東京カレー屋名店会』、二〇二三年九月七日閲覧。

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