第42匙 選べるごはん:だしごはん(D07)

 千代田区の東端に位置する岩本町の路地裏に「だしごはん」という店がある。


 その営業時間は、平日の十一時半から十四時半のわずか三時間のみ、さらに、ごはんが無くなってしまった場合、予定よりも早く閉店になってしまう事もある。

 もっとも、そういった情報は、店側がSNSで発信してくれるので、チェックさえ怠らなければ無駄足を踏む事はないのだが、実は、行こうと思った矢先、売り切れのために予定を変えなければならなかった事が二度ほどあった。

 そういった事情もあって、色々とリスケをした上で、書き手が正午頃に「だしごはん」を訪れたのは、八月末の金曜日の事であった。


 実を言うと、会社員一般の昼休憩に先んじ、可能ならば〈開店凸〉したい気持ちがあったのだが、諸々の事情でそれは叶わなかった。とまれ、正午頃には店着できたので、三度目の正直とばかりに、今回は売り切れの憂き目を見ずに済んだ書き手であった。


 ところで、かくの如く、岩本町界隈で人気の「だしごはん」とは如何なる代物なのか、実は、店に行かずとも、ホームページによっても、それを知る事ができる。


 まず最初に「ごはん」を選ぶ。

 ごはんは、「だしごはん」「やきだしごはん」「忍者やきだしごはん」の三種である。

 もちろん、店名にもなっている「だしごはん」が基本で、これは、店独自の出汁でごはんを炊き込んだ醬油ベースのものだ。

 「やきだしごはん」は、だしごはんを、さらに炒めた〈炒飯〉風のもので、「プレーン」「ケチャップ風味」「カレー風味」の三つの味付けがある。

 そして、「やきだしごはん」に〈忍者〉という冠がついた「忍者やきだしごはん」とは、「やきだしごはん」に「かつお粉」を加え、味をしっかりさせたメニューで、「忍者」は、「プレーン」「ケチャップ風味」「カレー風味」「スパイシーカレー風味」の四種がある。


 もちろん、「やきだし」にも「忍者」にも、「カレー風味」という味付けはあり、これらによってもカレー味を楽しむ事ができるのは確かだ。だが、スタンプ・ラリーを巡っているような〈カレー猛者〉には、こうした単なるカレー味に、いささか物足りなさを覚えるかもしれない。


 無論、味の好みの問題もあるが、書き手が「だしごはん」さんを訪れた時に注文するのは「スパイシーカレー風味」で、これは、ノーマルな「カレー風味」にスパイスを加えたもので、さらに、辛さも十段階の中から選べるようになっている。書き手は、この日が三度目の来店だったので、〈辛さ三〉を選んだ。しかし、侮るなかれ、十段階の三でも、かなりパンチが効いた辛さなのだ。ちなみに、いきなり〈十〉を注文する初見のお客さんに対しては、そのやばさについて店員さんから指摘が入るそうだ。


 そして、ごはんの量に応じて値段も変動し、「小盛」「並盛」「大盛」「特盛」が用意されている。つまり、カレー提供店を〈ハシゴ〉する場合に量の調整ができるので、これは、スタンプ・ラリーを巡っている者にとってはありがたい点であろう。


 出汁とスパイスが効いたカレー味の炒飯を食べたい者にとっては、ごはんの選択の時点で目的は果たせるであろうが、ここからさらに、「炒り卵」「温玉」「味玉」「スクランブルエッグ」の中から好きな〈卵〉のトッピングが選べ、さらに、〈お肉〉に関しても、「とりそぼろ」「やきぶた」「塩からあげ」「醤油からあげ」から選ぶ事ができる。


 こんな風に、順繰りに客が選択してゆく注文スタイルは、『サブウェイ』、あるいは、香川のうどん屋に似ており、こうした選択の自由度が、人気の秘密の一因かもしれないな、と思う書き手であった。

 

〈訪問データ〉

 だしごはん:秋葉原・岩本町エリア

 D07

 二〇二三年八月二十五日(金)正午

 スパイシーカレー忍者、辛さ3:八三〇円(現金)

 小盛、炒り卵、やきぶた

 

〈参考資料〉

 『公式ガイドブック』、六十三ページ。

〈WEB〉

 『だしごはん』、二〇二四年七月二十四日閲覧。

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