第40匙 活カレーも為せる時に為せ:エスぺリア(B12)
地下鉄の神保町駅の「A2」番出口から三十秒ほどの場所に、一九七二年創業の、老舗のビア・ダイニング、『エスペリア』がある。
エスペリアは、書き手が訪店した二〇二三年八月中旬には、ランチもディナーも営業していたのだが、スタンプラリー参加のカレーは、ランチ・タイムのみに提供されている品であった。これは、ディナーの方は、酒類提供をメインにしている事が理由なのかもしれない。
とまれかくまれ、エスペリアは、昼のみ営業の店ではないものの、この店でカレーを食べる事ができるのは昼〈だけ〉なのだ。
しかも、である。
スタンプラリーのスマフォ版が提供している情報を参照してみたところ、エスペリアのランチタイムの開店時刻は十一時半で、ラスト・オーダーは十三時となっていた。つまるところ、カレーの注文可能時間は、わずか〈一時間半〉なので、もしかしたら、エスペリアは、今回のスタンプラリーの中でも、最も攻略難易度が高い店のうちの一つと考えられるかもしれない。
そういった事情もあって、書き手は、なるべく早い時期に、このエスペリアを訪店する事にしたのである。
今回の「スタンプラリー23」においては、エスペリアは、「キーマカレー」にて参加しているのだが、そのキーマカレーは、楕円形の白い皿の中に、小島のようなライスがドンと存在しており、その米の島に、茹で卵や茄子が寄港しているようになっていた。そしてさらに、通常のキーマよりも汁っけが多めの、ドロっとしたカレーの沼が、〈白米島〉の周りを取り囲んでいる状態になっていた。
前回、「スタンプラリー22」における、エスペリアの〈オムカレー〉は、島の如きオムライスカレーがカレーの沼に沈んているような状態になっていたのだが、今年のキーマは、白米島がカレーの沼の上に浮いているようになっていた。
思うに、このようにカレーを沼のようにするのが、もしかしたら、エスペリアのカレーの特徴なのかもしれない。
*
やがて—―
二〇二三年の秋、書き手は思った事があった。
例えば、〈推し活〉では、しばしば「推しは推せる時に推せ」と言われる事があるのだが、気になったカレーも「食える時に食え」なのだ、と。
というのも、エスペリアでは、店の諸事情によって、二〇二三年の十月十六日の月曜から、ランチ営業を停止し、ディナーのみの営業にする事が、WEB版の「神田カレー街食べ歩きスタンプラリー2023」における「エスペリア」のページ内の「重要なお知らせ」(二〇二四年十月十四日付)にて知らされたからである。
したがって、カレーメニューに関しては、ランチのみ提供の「エスペリア風キーマカレー」を、我々は食べられなくなってしまったのだ。そして、店側からは、十月半ばの段階において、新たなカレーメニューを開発中との告知も為されていた。
さらに、こういった事情もあって、エスペリアでは、カレー以外の、いかなるメニューにおいてもスタンプの押印を可能としたそうだ。
たしかに、スタンプを集めるという〈押し活〉という観点においては、嬉しい店側の対応なのだが、実のところ、カレー・マニアにとっては、スタンプをもらえるのならば、カレー以外でも構わない分けではないのだ。
とまれかくまれ、書き手は、運よく、ランチ・タイム停止前の八月に訪店できたので事なきを得たのだが、〈押し活〉目的だとしても、〈カレーの推し活〉、こういってよければ〈活カレー〉もできる時に全力で臨むべきだ、と思った次第なのである。
〈訪問データ〉
エスぺリア:九段下
B12
八月十八日・金・十一時四十分
エスペリア風キーマカレー:九〇〇円(クレカ)
〈参考資料〉
「エスぺリア」、『神田カレー街 公式ガイドブック 2023』、五三ページ。
〈WEB〉
『エスぺリア』、二〇二四年五月四日閲覧。
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