永遠に
獣が人間の国を襲ってから数日。
人間の国は、国としての形とあり方がなくなっていた。
建物は壊れ果て、暮らしていた人間たちは帰らぬ人となった者が多く、生き残っていたとしても生きる場所がなくなっているのが現状だった。
そんな中を二人の少年少女は歩いていた。
「これってあなたが原因なのですか。」
「違う、俺は関係ない。でも、このことを引き起こした原因は人間だ。人間どもが獣の森に火を放ったり、群れの一匹を煽るように目の前でなぶり殺しにしたりと、俺からしてみれば自業自得だ。」
衝撃とまではいかなかった。
原因が人間だったことには驚いたが、それが嘘だとは思わなかった。そうなのかと、なら自業自得だなと納得もできるようになっていた。
「あれ、今回は反対しないんだな。あんたは人間に憧れていたんじゃないのか。」
「そうですね。でも、私も理解したんです。人間と言う生き物をそして、自分が本当に憧れていたものに。」
「本当に憧れていたものね。俺もこの国から離れて、それを理解したつもりだ。」
「やはり、私たちはにているのですね。」
「もしかしたら、それすらも一緒だったりしてな。」
笑いながら、そう答えるとシロも笑ってくれていた。
人間たちから離れても、満たされなかった俺の何かに、変化があるのを感じた。
やはりか、
こうやって、クロと話しているとさっきまでの事を忘れていられる。それどころか、再び人間になりたいと思えている。
それはなぜか、答えは分かっていた。
「クロはあれから、獣の森に行っていたのですね。」
「そうだよ、あそこは一日中張り詰めた空気間だったけど、ここよりかはましな空気だったぜ。」
「そうなんですか、なら私もまた今度でも行ってみましょうかね。」
「シロが行けば、森中の獣たちが膝まづくんじゃねぇか。」
「そんなことないですよ。だって私にはもうあの力はないんですから。」
「そうなのか、なら一歩、人間に近づいたんじゃねぇか。」
そうなのかもしれない。
クロに言われるまでその考えが頭に浮かばなかった。
シロの不思議な力がなくなって何とも思わないが、シロが一歩人間どもに近づいたという表現は、今言うべきことではなかったのかとも少し考えてしまった。
「えっと、その、人間に近づくって言っても、シロはシロのまんまだから別にあいつらと似ているとかそういうんじゃねぇからな。」
「えっ、あぁ、気を使わなくても分かっていますよ。それよりもそいう考え方もできるなと感心していただけですから。」
「そうなのかよ。黙り込むから気にしてるのかなと思って心配したわ。」
「心配? なぜ私が気にしているとクロは心配するのですか?」
「いや、別にそこまで心配したわけじゃねけど、何となくだな。何となく。」
「どうして、そんなに焦っているのですか、なぜですか。」
「あ~なんか、おなかすいたな。」
「どうして急にそんな棒読みみたいな話し方になるのですか。」
「うるせぇな。ほらなんか食えるもん探そうぜ。」
「何か隠し事してるみたいに見えますよ。教えてくださいよクロ。」
二人は世界から嫌われていた。
それは生まれながらに、生きていながらに。
そんな似た者同士の様で境遇も、憧れも、生命の存在理由でさえも違った二人には求めている者があった。クロは化け物に、シロは人間に、そう願った二人の願いは今後も叶うことはないだろう。
なんせ、気づいたのだから、憧れることで救われるのではなく、心が通う者を見つけることこそが、救われることなのだと。
人間たちは絶望を迎えた。
それでも人間たちが嫌った二人は幸せを迎えた。
これは誰にも共感が得られない幸せなのかもしれない。でも、二人にとっては永遠に続けていたいような幸せな時間だった。
エテルネル
永遠とも読むその言葉は今の二人、シロとクロに見合った言葉だった。
エテルネル 三田見多 @takmimita06232329
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