第5話

「む…村上さんにお兄ちゃんいたんだ….」


身長が高い以外は、雰囲気も顔も全然違う気がするので僕はつい驚いてしまう……


「うん お兄ちゃんいる事言ってなかったかな?

それにしても塩宮君、ちょっと驚きすぎじゃない? 私にお兄ちゃんいる事、そんなに意外だった?」


村上さんは、そう言って可愛らしく頭を傾げる…


「あ…あぁ…ごめん いや…身長が高いのは似てるけど、それ以外は雰囲気も顔も全然似てない気がするからさ……」


「えぇ〜何それ〜 塩宮君….それはちょっと失礼なんじゃないの〜?」


村上さんはそう言って、僕にイタズラな顔をしてくると…….


「そ….そうだぞ!! 君!!僕と僕の可愛い可愛い夏樹が似てないって!? 僕と夏樹は兄妹じゃないって言いたいのかい!!? どうなんだい!? あぁん???」


「兄貴うるさい」


「あ…はい…すみませんでした…… あの…良ければもっと僕を叱ってください」


村上さんは自分のお兄さんに真顔でそう言うと、お兄さんは縮こまってしまった…….でもお兄さんは喜んでいるようにも見えた……


何だろう……何だか村上兄妹の見てはいけないものを見てしまった気がする…


でも確かに……村上さん達と知り合って間もないのに僕が村上さんと村上さんのお兄さんが似てない発言をしたのは、不味かったかも知れない……


謝っておこう……


「村上さんとお兄さん……その…僕がさっき村上さんとお兄さんが似てないって言ったのは……失礼だったかも知れません…….すみませんでした……」


僕はそう言って2人に頭を下げる……


「そ…そんな真面目に謝らないでよ〜 こっちもちょっとふざけて言っただけだからさ〜」


「いや…こういうのはしっかりと謝らないとバチが当たる気がするからさ」


悪いと思った事はキチンと謝らないと行けないしな….


「真面目なんだね〜塩宮君は」


「真面目に謝る事は良い事だと僕も思うぞ!! よし!! 君の性格の良さは分かった!!その性格は相談部で役立つだろうから、君は相談部に入る事に決定だ!!」


「あ…そういえば…そうだった…」



村上さんにお兄さんがいる事が驚きで、つい忘れてしまっていたが、僕は村上さんのお兄さんに相談部に誘われていたんだった……



「ん!? 何だい!? その反応は!? まさか入らないなんて言う気じゃないだろうな!!

アァン??」


「あ…いや…そ…その〜…」


お兄さんの物凄い勢いに僕は押されてしまい、困っていると…….


「ちょっと兄貴!! 何で塩宮君を強制的に入部させようとしてんの!! 塩宮君は本当は入りたく無いかも知れないじゃない!!」



村上さんが、そう言ってお兄さんを止めている… ここは僕がハッキリしないといけないのでは無いだろうか….


「あ…あの…すみません!! 僕…今…部活に入ろうとは思っていなくて…だから申し訳無いんですが、入部は拒否させて貰おうかな…と……」


「……………」



「……ムム〜….そうか… 残念だが、仕方が無 い……強制は出来ないしな……」


僕が真剣にそう言うと、お兄さんはキッパリと諦めてくれた……


「ってか兄貴…ちょっと良い? 何でそこまでして塩宮君を入部させようとしたの?」


「ん? それは決まっているだろう? 部を存続させる為だよ」


「え? 存続って…… 部活のメンバーは兄貴以外に誰がいるの? 」


「いや…僕だけだよ…去年までは先輩が沢山いたんで、部が消えようとはしなかったが、その先輩方も卒業してしまったからね〜 僕一人になってしまったんだ…….」


お兄さんは苦笑いしながら、僕達にそう告げる……


「顧問の先生も…流石に僕一人だけだと部を存続させる事は難しいって……だから…1ヶ月間….猶予を貰って…こうして部活勧誘をしているんだ…この相談部は……何としてでも残しておきたかったからね……」


「ちょっと待ってよ…兄貴が部活に所属してて、部活の勧誘してる事は知ってたけど、まさかそこまで暗い雰囲気になってたのなんて知らなかったんだけど……」


村上さんは驚いた様子だった…… 部活の存続危機については何も知らなかったんだろう……


「あの……ちょっと質問良いですか?」


「ん? 何だい?」


「何で部活を残しておきたかったんですか?」


僕はお兄さんにそう質問する…… 単純に気になったからだ……


僕はお兄さんの「この相談部は……何としてでも残しておきたかったからね……」という言葉に引っかかったのだ…….


どうして何としてでも残して置きたかったんだろう……そこまで必死にさせる出来事が、お兄さんの身にあったのだろうか……?


「僕はこの相談部に感謝しているんだ……!!」


「…….感謝?」


「そう…僕はね……この相談部のおかげで人として成長する事が出来た気がするんだ…… 色んな人の相談に乗る中で、こんな人も居るんだって勇気付けられた」


そう言ったお兄さんの顔は物凄く輝いて見えた……


「相談部があったからこそ……今の僕がいる……!! だから僕は恩返しとして相談部を何としてでも残して置きたいんだ……!!」


僕は今……お兄さんの言葉を聞いて…….心を打たれていた……


そして同時にこの部活に入ってみたいとも思った……


僕も失恋して泉にばかり、いつまでも引きずっていないで、僕も人として成長したかったんだと思う……


「あの…….お兄さん……やっぱり僕….入部拒否取り消します…… 僕…相談部に入部します…!!」


「「え!!」」


2人は驚いたように僕を見る……


「え!! 入部してくれるのかい!?」


「 塩宮君…大丈夫なの? 無理なら無理で良いんだよ? 強制じゃないからね?」


「うん…….ちゃんと自分で考えた結果さ…… 僕…村上さんのお兄さんの言葉に心打たれたんだよね…だから思ったんだ……相談部に入ってみたいって……!!」


「うぉおおお!! ありがとう!! 最初は僕と妹が似て無いなんて、失礼な事言うやつだから殴ってやろうかと思ったが……そんな事無かった!!君は何て良いやつ何だ!! 」


感激したそうで……そう言ってお兄さんは僕の手をしっかりと握ってくる……


「ふぅん……そうなんだ……心打たれたんだ……塩宮君が入るなら、私も相談部……入ろうかな……?」


「え? 村上さんも相談部入るの?」


「うん 私…部活何もしてないし、それに部のメンバーが2人だけなのも部活は持たないでしょ?それに兄貴…何かこの相談部残しておきたい見たいだしね〜」


「お〜我が可愛い可愛い妹も入ってくれるのか〜!! 兄は感動したぞよ〜!!」


そう言ってお兄さんは村上さんに抱きつき始めた……


「ちょっとやめてよ!! キモイ!!そんな事するならやっぱり部活入るの辞めようかな〜?」


「グハッ……!!キ…キモイって言われた… だが……それも……快感……!!」


「「……………………」」


僕達は村上さんのお兄さんに若干引きながらも相談部に入部する事が決まった……

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