第2話 異世界に 移動して 妖精と会う 後

 呆けてしまったように見えたのだろう。

 そんな僕にモルフォは慌てて補足する。

「あ、コーに天地開闢しろって話じゃないから!」

 そんなこと出来るもんか、と僕は思う。

「無理難題過ぎて出来る気がしないのだけど」

 そう言う僕にモルフォは言う。

「いや、出来る筈。貴方なら」

「なんでかな? 僕はそんな特別な人間じゃない」

 好奇心と食欲が強いだけの中年だ、そう付け加えるとモルフォは言う。

「世界を越えるヒト、その当人である貴方だから縁を辿れるの」

「……その言い方だと君は地球の妖精ではないのかな?」

 モルフォは視線を逸らした。

 どうにも彼女も僕と同類の世界を越えられる奴らしい。

「コーほど多様な世界に行けないもの」

 ふーん。

 そう思って僕は紅茶を口にし、モルフォに確認を取った。

「でも、僕の役得がないだろう」

 そう言うと彼女は慌てた。

「待って待って待って! 悪魔みたいに騙そうだなんておもってないのよ!」

「悪魔も知ってる…?」

「ゴメン、本当に待って! 私だけの問題じゃないのよ!」

 僕は彼女の必死さに引っかかりを覚えた。

「……アレか、故郷がーとか?」

「わかっちゃったりする?」

 モルフォの言い方に僕は天井を見上げ考えた。

「……キンキンの問題?」

「出来れば早いと嬉しいけど、ひと月とかの話じゃないわ」

 モルフォは言う。

「それに、そのね役得だってあるのよ?」

「例えば?」

「多分、コーってヒトとしかお話しできないでしょう?」

「ああ、うん。そうだね」

 ゴブリンにキノコ焼きをご馳走になった時も言葉での意思疎通は出来なかった。

「私が通訳になってあげる」

「うーん」

 まだ弱い。

「えっと魔法も使ってあげる!」

 ちょっと心惹かれた。

「お願い! あと私を……なんでもない!」

 何を言い出すのやら……僕にフィギア趣味はない。

「わかった」

 僕はモルフォは言う。

「あんまり力になれないかも知れないけど、手伝うよ」

 女の子からの頼み事は断らない。

 それが僕の処世術だからだ。



 なお後から聞いた話だ。

 妖精界と言うか、妖精の星と言うか、モルフォの暮らす世界に罅が入ったそうだ。罅って何ぞ? と思うのだが、ファンシーな彼女の話をまともに僕が理解できるとは思わなかった。

 まだ猶予があるのと、モルフォが僕を連れて、まだ飛べないとのことで、見てから判断したいと思う。彼女も一度目視して確認して欲しいと言ってるし。


……しかし一応理系だけれども、ひも理論的なことを言われても困る。


 三角関数や微分、積分で許して欲しい。

 で、本人曰く世界の旅人であるモルフォからしても、僕のテレポートは凄まじいらしい。異世界(空腹)漂流術の使い手だとかなんとか。


……あと不死鳥の卵料理というのは神様だとかなんとか。


 スケールのデカい話過ぎるが、彼女曰く「なんとかなる」との事。

 どうなるんだろう?

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