第10話 自宅…
気がつくと私は自宅のベッドの上にいた。
警察から返されたのは、妹の伊織のお陰だろう。
あれだけ、ソックリで瓜二つ、しかも警察官である伊織の言葉は誰もが信じるだろう。
健太が私にピッタリのラバースーツを持って来たのも伊織を採寸して作った事は明白だった。
でも、なぜ私にラバーを重ね着させて脱げないようにして、あんな目に合わせたのだろうか。
考えてみてすぐに分かった。
それは伊織の今彼である健太が私と浮気をしていたからだろう。
でも、そうなると、健太は私との関係を楽しんでいた訳で、妹の伊織が私を助ける理由が見当たらない。
むしろ、妹の伊織から嫌がらせをされて、健太が私を助けるのが筋だと思う。
どうも納得いかない私の元へ、伊織と健太が現れた。
「目が覚めた?お姉ちゃん」
伊織の言葉に私は頷くが、私の視線は伊織の体に釘付けになる。
それは伊織が私の着ていた赤いラバースーツに、ワンピース、パーカー、サイハイブーツまで履いていた。
マスクこそ被ってはいないが。
「お姉ちゃん、私たちに協力してくれない?」
伊織が話した内容はこうだった。
私の夫、東條 達彦(とうじょうたつひこ)は私と出会う前に伊織と交際していたのだが、とんだクズ人間で働かずにギャンブルに明け暮れていた。
ギャンブルで負けてお金が無くなると、伊織に泣きついていたという。
伊織からも散々真っ当に生きるように言われていたのが嫌になったのだろう。
就職のための準備金が欲しいと頭を下げたそうだ。
高額だったのでお金を引き出す為の通帳と印鑑の保管場所を達彦に見られたのがまずかった。
同棲に近い状態だった伊織と達彦。
伊織が家に帰ると達彦は姿を消し、通帳も印鑑も消えていたという。
その後、達彦の消息が分からず伊織が諦め掛けた時、健太と出会った。
健太は私の結婚のタイミングでお別れをした。
そんな健太は私にソックリな伊織に惹かれたのだろう。
達彦もまた私の中に伊織を見ていたのかも知れない。
達彦は私には会社経営者であり、ギャンブルも女遊びもせず、仕事一筋に頑張ってきたと嘘をついていたのだった。
私は伊織と健太から、なぜ私をラバースーツや衣装を脱げなくした理由を聞いた。
私をラバー人形にして置いておけば、夫である達彦がラテックスアレルギーでも自分の事を顧みず助けると考えていた。
妻のゴム人形のような姿を他人には見せられない。
達彦本人が脱がせるしかない状況に追い込むために厳重にちょっとやそっとでは脱げないようにし、喋れなくし、視覚も奪ったのだという。
妻がこんな目に合わされ、自分もアレルギーで酷い状態になったところで、伊織と健太が登場しお金を返してもらう手筈だった。
ところが、達彦はゴム人形と化した妻を置きざりにして逃亡。
さらに、視覚を奪われた私は外出しないと思い込んでいたという。
私の予想外の行動がコンビニに迷惑をかけて警察に厄介になるという結果を導いたことになる。
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