第30話

明は彩華と初心者向けのなだらかなコースを歩いたあと、残りは列車に乗って下り、駅近くに点在する土産屋や観光地、街並みを見てからはカフェで話していた。そんな穏やかな2時間半の終わりに、スタンツから焦った様子で電話をもらって来てみると、スタンツの言葉通りミカエルが登山口の近くで片膝をつき、汗だくでぐったり疲れた様子になっていた。


シーズンだからかベンチは満員で、ミカエルは足を挫いたスタンツを座らせていた。ベンチに座っていた一部の客からミカエルの様子を見て譲られそうになったり心配されても、大丈夫、と首を振っている。当然、スタンツに譲られそうになると強く首を振り断る。


「ミカエル!!大丈夫?立てる?

カフェでたまたま近くにいた体格しっかりしたかたを連れてきたからさ。俺と一緒にお前に肩貸してもらうよ。彩華はスタンツの荷物軽いから手伝ってあげてくれる?」


明は小柄で華奢な彩華に頼むのは気が引けたが、他に人員もおらず頼む。


「これくらいは大丈夫よ。わかったわ。

スタンツ、ミカエルは2人が見るから大丈夫よ。行きましょ。」

彩華は折れそうな華奢さながら快く引き受け、スタンツから荷物を預かりながら声かける。


ミカエルは明が連れてきたミカエルより少し高い身長で、体格はミカエルよりずっと良い男性の肩は借りたが、明には掴まらずに立ち上がるが、さすがのミカエルも疲労が激しいのかふらつき、明がミカエルの片腕を掴んで肩を貸した。



「失礼だな、全く。いくら俺がドイツだと小柄な女の子程度の身長でガリガリとは言え、元気な時は平気だからさ、これくらい。

ヴィオラはフルートよりケースがずっと重いんだからなめないで欲しいね。

、、列車で下ってくれば良かったのに?」


明が声かけて肩を貸し歩き出すと、ミカエルは珍しく少し微笑んだ。



「ミケ、、大丈夫かな、、あたし話に夢中になって足元気をつけなかったから、、

ミカエルに元気になってほしくて来たのにあたしってやっぱり駄目だな、、。」


コンスタンツェは足を挫いたものの、ミカエルが応急手当てもしてくれたらしく、湿布や包帯を巻かれて、ベンチに座ったりミカエルに背負われたのもあり、ゆっくり歩いている。


「、、ミカエルって、、自分の顔があんまり好きじゃないのよ。それにああ見えて意外と自己評価低いんじゃないかしら。、、だから、貴女がミカエルを受け止めてたくさん褒めてくれて、楽しく文学や風景の話してくれただけで、とても嬉しかったはずよ。


私はアンサンブルで音楽作るための会話とか以外しないし、、明は穏やかに見えて少し皮肉屋だから素直に褒めたりしないし、、。私はそう思っていて。」


彩華は、ミカエルとは友人ではあったが親密ではないながら、ミカエルの表情やこれまで話していたこと、様子から推察してコンスタンツェを励ました。

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