第28話

明は、前にミカエルとコンスタンツェを歩かせ、後ろから彩華とついていき、山頂から登山初心者でも使うなだらかなコースを下っていた。


ミカエルは鉄道では表情が硬かったが、率直だが人を見る目が鋭いコンスタンツェに自分の何気ない行動を褒められ、その無口で無愛想な点や、重い悩みがあることも受け止められて、はっきりと表情が明るくなっていた。

ミカエルは無愛想なので笑ってはいないが、明たちを怪我させないようにという責任感、最近トラウマが思い出されたこと,コンスタンツェとどう接したらよいかわからない,そんなことからか暗かった表情が暗くなくなっている。


ミカエルは今、声が出ない上、もともと対人関係が下手だ。しかも登山中に筆談は無理だ。だから少し心配だったが、コンスタンツェの話題の豊富さや明るさもあり、ミカエルは声がでないなりにボディーランゲージ等で反応している。

この状況下で声以外で反応する必要もあるからか、いつもより笑った顔も見られる。


「はあ。俺はちょっと疲れてきちゃったかなあ。この辺りで少し休んでまた鉄道に乗るか乗らないかして下るよ。

2人は、、ゲーテの使ったコースで下るの?俺たちは使うならあっちの初心者向けコースにするよ。」


明はゲーテのコースか、初心者コースかに別れる手前で呆けた声を出し、わざと近くのベンチに座り込んで話す。彩華は察してくれたのか、明の隣にちょこんと座った。


「そうなの?大丈夫?明も今日は体調良さそうだけど、、」


「体調は元気だよ。ただ普段こんなことしない、、って言うかこれが上りなら医者から雷が落ちるところだし、、だから持久力はなくて慣れてないんだよね。スタンツはせっかくだしミカエルに色々案内してもらったら良いよ。」


ミカエルが明を心配げに見たので明はコンスタンツェに説明する。本当は、まだ下りで緩やかなのもあるし、事前に医者にも許可は得ていてバテてはいない。


「、、明は体調は良いわよ。悪い時は私わかるもの。、、私も、このくらいの道なら転んだりしないわ。危なければ列車で下るし、、。

宿でバーベキューするから、19時くらいに宿前に集合にしましょう。

あと3時間あるからゆっくり見られるわ。」


彩華は、色々と不安らしく2人を見つめるミカエルを催促するように提案する。

ミカエルはようやく頷き、2人の座っている近くの岩にコンスタンツェに座るように手招きしてから、自分は膝をついて地図を広げ、地図に筆談しつつコンスタンツェとルートを相談し始めた。

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