第27話
4人は、まずは登山鉄道に乗ってハルツ山地のブロッケン山の山頂まで向かった。脚ではなく鉄道で頂上まで来たので、ハイキングは全くしないであろう彩華や、心臓病がある明も含めて、全員が全く疲れてはおらず、ミカエルは何度か脚で登った山の山頂からの景色に湧いて互いに写真を撮るなどして騒いでいる。
「ミカエルも撮りましょうよ。明が撮ってくれるって。日本から持ってきた良いカメラらしいわよ。」
コンスタンツェはすでにスタンバイし、明がカメラを持って構えている。彩華は先にコンスタンツェと撮ったらしく、ミカエルを見上ながら話す。
「私は、何度も来ていますから。写真も明よりも普段から山で撮ってるので慣れてますよ。三人並んでください。」
ミカエルが明の横に行き、ケータイに打って見せる。
「、、せっかく4人で来たんだからそれなら4人で撮ろう。、、すみません、写真お願いしても?」
明は近くで風景を見物している中学生くらいのドイツ人と、その父親らしき壮年男性に話しかけた。壮年男性は快く引き受けてくれた。
ミカエルはやはり嫌そうにしている。
「なんで?演奏会のあとは普通に映るじゃんか?、、あのお父さん撮ってくれるらしいから早く並ぼう。」
明はミカエルが嫌がるのに疑問を持ちながらも、背中を軽く押して並ぶように催促する。
ミカエルは、4人の中で背が高いのもあり、あまり映りたい気持ちもせず、3人の後に後退りして下がった。
「へえ!じゃああたしは明より少し背が高いからミカエルの横ね!あたしが小っちゃい彩華の後ろなら全員見えるね。」
コンスタンツェは勝手に配置を決めると後ろに逃げるように並んだミカエルの横に並ぶ。彩華はそれに微笑んで、明の片腕を持って前に並んだ。
ミカエルは、それでも頑なに映りたがらず、コンスタンツェに前に出るようにボディーランゲージする。
「ねえ、スタンツって呼んでね?あたしの名前長いからさ。みんなそう言うんだ。もう結構仲良くなったし。ミカエルは〜、、ミカ?ミケ?どっち?」
「昔、母がミケとは呼んでいました。」
ミカエルはケータイの画面にコンスタンツェの質問にきょとんとしながら打ち込む。
コンスタンツェのフレンドリーさと話の推進力に驚いて、ミカエルは目を見開いてしどろもどろ答えた。
「じゃ、ミケにする!!
あと、前髪で顔隠れすぎ。前も言ったけど彫刻みたいな綺麗な顔なのにもったいないよ。こんな感じ。うんうん、良い感じ!
じゃ、お願いしまーーす!!」
コンスタンツェは更に、ミカエルが片目を隠している長いプラチナブロンドの前髪を払い、横分けにするとやはり勝手に、先ほどの撮影してくれる登山客に手を振り、撮るよう合図を出した。
「ぷっ、、はははは!!ミケって、、日本じゃ猫の名前だよ。ミカエルは三毛ではないけどね。でもなんとなく犬よりは猫っぽいかもね。ははは、、」
明が笑うと、彩華も日本語ネタが分かるので一緒に笑い出す。
「ふふふ、、!!そうね。ミカエルが猫なら白っぽい金の毛で、青い瞳の、見た目は綺麗だけどなんだか愛想が悪い猫なのかしら?」
「ちょっと、金髪のそこのイケメンのお兄さん!少しは笑ってくれないかね。確かに怒っててもハンサムだが写真なんだからね?私たちも君たちに撮っでもらいたいんだがね。」
撮影している壮年男性に言われ、ミカエルは仕方なく努力して微笑する。
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