第23話

コンスタンツェが去ってから、明はパソコンで大学の課題をチェックしながら、横でフルートの手入れをしているミカエルに話しかけた。


「、、スタンツは俺とは単なる友達だよ。日本からの学生が珍しいから絡んできただけだし。お互いそういう目では見てない。

っていうか、スタンツって勉強と学内誌にしか関心なくて、化粧っけもないしなんか、、男に関心なさそうじゃない?」


「彩華だって化粧は濃くないじゃないですか。美人だからそれで良いのですが。まあ彩華はファッションセンスも素晴らしいですよね。あなたの服装がダメすぎて最近は選んでますもんね。

、、コンスタンツェはスタイルも顔も良いから素朴でも綺麗なんです。あれで良いです。」


ミカエルは少し前まで明に態度が尖っていたのが嘘のようにサラサラと筆談する。


「別にオシャレじゃないから彼女を批判してるんじゃないよ、言う通り俺は自分じゃ黒と紺しか着ないし着回してるから人のこと言えないし、、

ミカエルってああいうタイプが好きなのか。なるほどね〜。」


「でも私は女性は苦手ですし、、何を話したら良いかあなたみたいにわかりません。

そもそも彼女が恋に関心がないなら私の出る幕はないし、、。

心臓のことは配慮しますから彩華も一緒にハイキングにはずっと同行してくれませんか。

私は今声が出ませんし、登山慣れしていない彼女を呼び止めたりもできない。安全性からも不安があります。」


「嫌だね。実際にあんまり長く山道歩くと発作起きるかもしれないし。みんなより息だって上がりやすいんだ。

俺がぶっ倒れて介抱するのなんか嫌だろ?

だれか違うやつ連れてけよ。」


「、、、でも、そういうわりには坂道も結構スタスタ歩いてませんか?」


いつも強気なミカエルに上目遣いで見られ、しかしさすがミカエルでよく見ているらしく矛盾を指摘され明は返答に困った。


(くそ、、こいつやっぱり鋭いな、、よく見てるな、、心臓のこと言えば押し切れると思ったのにな〜。

スタンツだってミカエルに興味はありそうだし、2人とも文学が好きなんだし、話さえできるようになれば少なくともかなり仲良くはなれそうだけどな。ミカエルなら声が出なくてもスタンツをきちんと危険から守りそうだし、、そんなミカエルにスタンツが惹かれたり、、しないかな?)


「、、それはそうだけど、色々演奏や試験の予定もあるし、体力温存したいんだよ。

、、、じゃあ、、2人がスムーズにやれてきたら、俺たちは抜けてカフェででも待ってるからさ。それで良い?」


明はミカエルに視線を合わせ、身振りをつけながら、微笑んで提案する。


ミカエルが抱えている両親に愛されなかったという孤独感や、母親に似ている自分の顔が嫌いであること、どこか肩肘張ったような生き方も簡単に直せはしないが、今回の失声や過呼吸をミカエルが過去を思い出すたびに繰り返すのも見ているのがもどかしい。


コンスタンツェと仲良くなることが少しでもミカエルが前向きになるきっかけになれば良いと思う。

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