第19話
明は、ミカエルと列車に隣り合って乗ってから、ミカエルの声が出ないのもあり、しばらく黙って譜読みしたり窓を見たりしていたが、同じく譜読みするか寝るかをしていたミカエルを振り返る。
ミカエルは視線を察し、何だ、と言いたげに明を見た。
「、、、ブリギッテさんからさ、聞いたよ。
ミカエル、過呼吸には昔もなったことあるんだって?
、、、ディートリヒさんが昔から厳しくてミカエルに色々結果を出すように求めてきて、、学校や幼稚園のテスト前にたまになっていたって。。これまでは出てなかったの?目覚めたときも話だけどさ、フルートやってるのに緊張とかでいちいちそんなの出たら困るだろ?
病院できちんと定期的に診てもらいなよ。」
明は、ミカエルの様子がしばらく落ちついているので、また過呼吸にならないかよく観察しながら切り出す。
ミカエルは体調に変化はないが、明を睨み、不愉快そうな顔をしてから明を無視して譜読みに戻ってしまう。
「、、そんなとき、この飴をよく食べさせて落ちつかせたって、、。
俺が持ってても仕方ないし受け取ってくれないか?
、、、嫌なら一緒に共有して食べようかな。
有名なドイツの菓子メーカーの飴だよね。フルーツの果汁がしっかり入った。。
、、ブリギッテさん出て行く前に、俺にこれを渡してさ。
、、、お前が気にするから、自分からなのは言わないほうが良いかも、貴方が買ったことにしてって言われたけどさ、、それは提案はされただけで約束したわけじゃないし、、
やっぱり、、ブリギッテさんの気持ちを伝えないのは違うかと思った。
、、いいよ、受け取らないなら別に部屋に置いといて俺もたまに食べるだけだから。」
明はミカエルに引き続き無視されていたが話続け、受け取らないのを見て再び自分のカバンにしまうと、まだ宿題があるためカバンから別の小さな箱を出す。
ミカエルはまだ話があるのかとうんざりしたような目を明に向ける。
「、、そうだよ、まだ話はあるんだ。
、、、これはロベルトさんから頼まれたからきちんと渡さなきゃならない。
ミカエルに取って嫌なこと思いださせるかも。だから覚悟して聞いてね。
、、、、、過呼吸発作はうちの弟が、、昂がよくなっていたから起きても俺が介抱する。だから安心して。、、じゃあ、話すよ。
、、、これね、ブリギッテさんが、、お前が9歳の時家出したときにはもう買ってあったみたいで、その日から一週間後のお前の誕生日に渡したかったんだって、、。本当は。
、、、嫌なら、これも俺がお前が受け取れるまでは持っておくよ。、、ロベルトさんは渡すつもりはなかったみたいだけど、、今回の件で、ミカエルにはブリギッテさんを嫌な思い出だけにはしてほしくないと,思ったんだって。
、、なんで俺に渡させるのかは意味がわからないけど押し付けられたからさ、、なんか断ったのに貴方がタイミング見て渡してくれって力説されて。」
明は、話しながら、ミカエルに過呼吸が起こらないかを引き続き見つつ、小さなケースをそっと開く。中には、スワロフスキー製のカナリアのガラス細工が入っている。
「!!!、、、。」
ミカエルは、カナリアのガラス細工を見ると、切れ長のアイスブルーの瞳を揺らし、見開いた。それから、眉間に皺を寄せて目を伏し目がちにし、カナリアから目を逸らす。
「、、ごめん。やっぱりタイミング悪かったか。俺が焦りすぎたわ、、自分がこんな高そうなものずっと保管しとくのもなんか気が引けたし、、大丈夫?ミカエル?」
「母がきっかけで私はフルートをやろうと思ったんです。」
ミカエルは少しだけ目を潤ませ、ケータイに文字を打つ。
「そうなんだ?」
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