第4話 奴隷制度

 ただ、それは一般的な国家においてであって、宗主国、つまり、封建的な国家の警察は、国家の中でかなりの権限を与えられている。基本的な政府は、国連の機関から委任されている政府なので、政府にはかなりの限界があるのだ。

 彼らだけでは治安がなかなか守られないため、まるで、

「軍と警察の中間」

 というくらいの組織を置くことになった。

 普段は、表に出てこないが、何か不穏な動きがある時は、国家から、かなりの権限を与えられ、治安を維持するという目的をもって、行動する組織があった。

 アメリカなどでいえば、

「FBI、CIAなど」

 がそうであろう。

 FBIは国内向け、CIAは国外向けという、いわゆる諜報活動などの、特務機関というわけだ、

 大日本帝国においては、

「特高警察」

 と呼ばれるものが、それに当たるのではないだろうか。

 大日本帝国における特高警察というと、戦時中などで、戦争反対などを訴える人を、

「危険分子」

 として、逮捕、拘留、さらにその間に拷問を行うという、あくまでも、

「国家のための警察」

 いや、政府の特定の人間のための警察というところにまで行っていたりするくらいである。

 本当は、私有化などできなおはずなのだろうが、当時の治安維持法では、総理大臣などには、それくらいの力があったのかも知れない。

 とにかく、

「国家総動員」

「治安維持法」

 などというものがあることで、政府の方針に逆らう人間は、まるで、国家反逆の罪とでもいうような裁きとなって、特高警察に連れていかれて、拷問を受ける。

 特に、共産主義であったり、平和主義のような人間は、戦争遂行の意味で、士気が下がり、下手をすれば、反戦運動などが起こっていると、政府の存続が怪しくなる。

 対外戦争をしているのに、尻に火がついてしまうなどというのは、本末転倒も甚だしい。「大日本帝国では、主権は天皇にある。天皇のために、一致協力して、戦争遂行に邁進するというのが、国民の義務だ」

 とまでの押し付けを、国家ぐるみで行うのだった。

 国民の人権は、ほとんど制限されている。国民の人権などは、優先順位でいけば、かなり下の方になる。

「確かに、国民の人権だけを優先して、国家が崩壊してしまうというのは、本末転倒なことだ」

 と言えるだろう。

 それでも、民族性によるものなのか、それとも、洗脳という形のプロパガンダがよほど素晴らしいものなのか、日本人が真面目過ぎるのか、今の日本からは、想像できないものだった。

 横田少尉が、その島を去った後、一時期、その島の話題が上ったが、すぐにすたれてしまった。

「まったく我々からは想像もできないほどの原始的な社会」

 ということで、ブームが去れば、忘れ去られるだけだった。

 だが、これはミステリーの基本であるところの、

「一度警察が捜査した場所は、もう誰も調べようとしないので、絶対に安全な隠し場所となるのだ」

 と言われる通り、警察には、

「一度捜査したから、もうそこにはありえない」

 という固定観念のっようなものがあるのだった。

 それに似た感覚で、

「一度ブームが去ってしまうと、しばらくは、誰も見向きもしない」

 という法則のようなものがある。

 そのため、横田少尉が帰国してから、ひと月ほどは話題に上がったが、ブームのようなものが去ってしまうと、その島の存在自体が忘れられていくようだった。

 宗主国も、それくらいのことは分かっていた。そこで、彼らは特高警察を使って、原始的な島を支配しようと、最初は考えたのだった。

 一度は、国家の財政不安から、切り離したところであったが、少し考えが変わってきたのだ。

 国連から委任統治されいぇいることで、警察能力には限界があるということで、民間で、治安維持のための警察組織を作ったのだが、その警察を束ねている企業は、裏に反政府主義の組織を持っていた。

 やつらは、組織が大きくなりすぎて、所帯を抱えきれなくなっていた。

 本来であれば、隠密な組織のために、巨大になってはいけないのだが、いかんせん、人海戦術のため、人がどうしても必要となった。

 したがって、彼らの拠り所になる組織を作らなければいけないのだが、組織を作るというのは、sんなに簡単なものではない。目的を持った組織でないといけないし、何よりも、裏で動いている組織でなければいけないのだ。

 つまり、そこで警察組織に目をつけた。

 今の警察組織は、警察という組織は、一定の大きさでなければいけないのに、警察官となっている連中は、実際には少ない。それだけに、警察といいながら、できることは限られている、そのために、一人一人の警察官の権力を大きめに設定したのだったが、そうなると、権力を勝手に行使する輩が増えてきて、

「治安を乱すのは警察だ」

 ということになり、本末転倒になってきた。

「そこで、警察官になる人間を増やし、教育する必要がある」

 ということになったのだが、なかなか、表では難しい。

 そこで、表の仕事を裏で行うようにして、裏の警察官の権力を大きくしようと考えたのだ。

 そこには、鉄壁の戒律を持った組織である必要があり、権力は持たせるが、乱用できないように、取り締まるということになってきた。

 彼らが大日本帝国においての、特高警察のような役割であった。

 次第に特高警察が大きくなって、陰で暗躍できなくなってくると、今度は、原始的な島の方で暗躍することになった。

 一度は手放した島であったが、後から考えると、資源の問題、労働力としては、実に金になるものを手放したことになり、少し後悔があった。

 そこで、

「我が国が養成してきた秘密警察を、そちらの島の治安維持に役立てたい」

 ということで、国連や、委任統治委員会の許可を得て、晴れて、島に派遣することになった。

「ここまで権力を与えなくてもいいのではないか?」

 という、国連の常任理事国の連中からも意見としえは出たが、しょせんは、他国のことであり、下手にいうと、

「内政干渉だ」

 と言われかねない。

 下手に内政干渉をしてしまうと、

「そんなにいうなら、貴国が、我々に変わって、統治をお願いしたい」

 と言われると、どこの国も、他国に支配を広げられるほどの余裕はなく、自国の安定が一番大切であるということで、余計なことは癒えなくなってしまうのだった。

 そんなぐうの音も出ないような状態を作りあげると、あとは、他の国に承認させるのは、難しいことではなかった。

 何しろ、警察を派遣しようと言っている国というのは、国連の機関によって、委任統治されている国家ではないか、他国がとやかく言えるような立場でもなければ、とばっちりを受けてしまうのも、困ったものだったのだ。

 委任統治されているという国家のわりに、国連でのここまでの強気な態度に、他国はすでに萎えていたといってもいいだろう。

「先手必勝」

 相手をビビらせてしまえば、その時点で、こちらの勝ちなのだ。

 秘密警察が政治に絡んでくると、本当は危ないということは他国も分かっているのだろうが、彼らが何を考えているのか想像もつかないので、今、この国を責めても、どうにでもなるものではない。後々になって、自国の災いのためにでもなってしまうと、それこそ、本末転倒なことである。

 国連でも、何とか通過させることができると、あとは簡単だった、

「国連が許可した」

 ということで、もう誰も、そんな原始的な島のことを気にするところもないだろう。

 後は、国家ぐるみではなく、民間企業に、国家レベルの仕事をさせればいいのだ。

 形は民間であるが、国営のごとき権力を与えた企業。他の国にはそんな企業はないかも知れない。

 国営にしてしまうと、国家が金を出さなければいけなくなるからだ、

 ここは、金を出すことはしないが、国営としての権力を与えるというもので、なぜそんなことができるのかというと、他にライバル的な会社がないからだった。

 そうなると、外野には、

「何かおかしい」

 と感じる人はいなくなる。

 つまり、ここでは、

「いかに、陰のように、秘密裏に進めるか?」

 ということがカギになってくる。

 他の企業とはまったく正反対の動きをすることで、怪しまれないような状況を作るという、一種、不可思議なことによるカモフラージュだといえるのではないだろうか。

 実は、今もう一つ、暗躍している国家があった。

 その国家は、最近までは後進国であり、やっと発展途上となった国で、これから世界に出て行こうとするところなのだが、それはまるで、明治維新の頃の日本と似たようなところであった。

 今から十数年前まで、その国は鎖国をしていた。

 といっても、日本や朝鮮がしていたような鎖国ではなく。元々、他の国の属国であったものが、独立国になったことで、鎖国せざる負えなくなったのだ。

 というのも、元々の国が、別れた国と貿易をしないように、他の国に働きかけた。

 その国から他国は大切なエネルギーや資源を供給されていたので、逆らうことはできなかった。

 そのため、別れた国と、国交を結ぶわけにもいかず、結局は鎖国同様になっていたのだ。

 だが、時代が変わって、資源を供給していた国の勢いが弱くなってきた。

 資源を供給してもらえるといっても、時代は進み、彼らの資源やエネルギーはすでに古いものとなってきていて、しかも、資源に限界が見えてきたのだ。

 そのため、必ずしもその国のいうことを聞かなければいけないという立場関係ではなくなってきた。

 そのため、それまでの発言力は次第に低下していき、その国は孤立に突き進んでいたのだった。

 その国とは、次第に犬猿の仲になってしまい、国交を断絶するところも出てきた。

 そうなると、鎖国させたその国を、開国させることを考えるようになった。

 普通であれば、攘夷ということで、今までの歴史から言っても、開国を迫るのは、強引であろうが、悪いことではなかった。

 日本が結んだような、不平等条約ではなく、普通の通商条約が結ばれた。

 だが、明らかに、他国との差は歴然である。経済や世界の覇権というものが渦巻く中で、今のままでは押しつぶされてしまうということになる。

 そこで、急速な方向転換が必要になる。

 それが、昔の日本でいうところの、

「富国強兵」

 であり、

「殖産興業」

 となるのだ。

 ただ、先進国からすれば、この国が発展し、軍が強化されることは望ましくなかった。

「出る杭は打たれる」

 というべき状態において、先進国が頭から抑えつけておこうという考えがあからさまに出ていたのだ。

 そうなると、先進国に対して、

「もう少しで先進国の仲間入りができるかと思ったが、実際に、その距離は思ったよりも遠い」

 と考えた、発展途上で、先進国に近い国は、この急進国を使って、自分たちの優位な世界を作ろうという暗躍があった。

 急進国の方も、そんなことを知らないまま、暗躍して自分たちの力を蓄えようとしているのだから、まわりから見ると、ちょうど、先進国に近い国がオブラートになって、暗躍している急進国の様子が隠れて見えないという、効果も表れていたのだった。

 彼らは、進んで他の世界を見分することにした。自分たちの国を富ませて。、他の国とも対等になろうとした。もう資源にばかり頼っているわけにもいかなくなったことで、

「技術を輸入して、成果を輸出する」

 ということを考えた。

 そのため、彼らは、まるで奴隷のごとく、海外ではひたすら下手に出た。

 相手は、自分たちが上だと思っているから、下手に出られると、態度としては、

「それが当然だ」

 という澄ませた顔をしながら、心の底で、喜んでいる。

 そのギャップが相手に油断を生むのだ。その油断というものが、

「まさか、相手が欺こうとしている」

 などということを思わせるわけもない。

 彼らは、文明が遅れてはいたが、人間的には先進国の人間に勝るとも劣らない頭を持っていた。

 むしろ、相手を欺くということにかけては、類を見ないほどの力があるようだ。相手をさらに油断させて、そこから切り込むことが天才的にうまいといってもいいだろう。

 そのおかげで、技術だけでなく、いろいろな情報に対しても、苦もなく手に入れることができるようになった。

 それは彼らにとって有意義なことで、少なくとも、輸入できるのは、技術だけではなく、情報も手に入れることができるということが分かったというのm、大きな効果であった。

 そのおかげで、

「どこの国が、どういうものを求めているというのが」

 ということが、分かってくると、その国にピンポイントで、必要なものを売り込みにいける。

 相手は、こちらがどうしてそれを分かっているのかということにはあまりこだわらず、ほしいものが手に入るということを手放しに喜んでいるようだ。

「やはり他の国が気にしないのは、それだけ、こちらを下に見ているからに違いない。これでいくらでも、相手を手玉にとれる」

 と思い、他国の中枢機関に、人材として送り込むことができる。

 相手国も、自分たちの情報が簡単に漏れているとも知らずに、簡単に受け入れていたのだ。

 だが、それから数年が経ってくると、今度はさすがに相手国も、情報が洩れていることに気づいたのだった。

 しかし、どこからどこに漏れたのか分からない。それだけ、輸入する方も、そのあたりに抜かりはないということだ。

 とりあえず、相手国は、ガードを掛けるしかない。今までのギリギリのセキュリティだったので、うまく盗むことができたが、相手が本気でセキュリティを強化し始めれば、もう盗み出すことは難しいだろう、

 しかし、基本は盗むことができた。

 ここから先は盗んだ基本を自分たちで加工して、開発していけば、独自のものができあがる。却ってそっちの方がよかっただろう。

 基礎は同じでも、開発能力で差がつけば、それこそ、

「競争に勝った」

 と言えるだろう。

 正直、加工開発に関しては、自分たちの方が優れていると思っているだけに、負ける気はしない。

 しかも、相手がセキュリティを掛けてくれたおかげで、自分たちは盗み出すことができたが、もうここから他の国が参画しようとしても、できるわけはない。そういう意味で、セキュリティの強化はありがたいことであった。

 セキュリティにかけては、この国でも、独自の方法を開発していた。ここまでくれば、もう急進国などと呼ばせない。先進国への足掛かりは整った、いよいよ、次のステップに進むわけで、ここで必要になってくるのが、人間だった。

 この場合の人間というのは、

「人材」

 ではない。

「人海戦術に必要な」

 いわゆる、人足というものである、

 労働力ということなので、頭を必要としない。一般企業でいえば、

「正社員は必要ない」

 ということだ。

 そこで白羽の矢が立ったのが、原始的な民族のいる、あの国だったのだ。

 最初は、宗主国の壁があったが、その国を突き崩すのは、さほど難しいことではなかった。実際の政治は国連の機関である。国連が相手なら、いくらでも対応方法があるというものだ。

 しかも、委任政府というのは、別に自分の国ではないという、しょせんは他人事という意識がある。手玉に取るくらい、簡単なことだった。

 ただ、基本的に

「人身売買」

 は禁止されている。しかも、

「奴隷制度」

 も、あってはならないことであった。

 奴隷というわけではなく、早急な人材を確保するには、その壁をぶち破る必要がある、

 そこで考えたのが、

「不当就労の抜け道」

 であった。

 不当就労というのは、基本的なところは、国連も見ているが、基本的にはそれぞれの国によっての国内法で決まってくる。

 それを、他の国も、国連も、文句が言えるわけではないが、下手をすると、人権問題を盾に、外交が難しくなることもある、下手にすると、国益を損なうことになるのだ。

 彼らにとって、それが狙い目だった。

 最初は国内への入国を実に簡単な手続きで入れるようにしておいて、普通に働かせて、いかにも自由な国を印象付けておく。

 その感覚を持ったまま、最初は短期の入国だったので、滞在微差が、二年くらいで切れることになる。

 それでも、雇い主の方は、

「少しくらいは大丈夫だよ」

 と言って、数か月超過して働かせる。

 外人たちの方としても、

「国に帰るよりも、こっちの方がいい。できるだけ、長く稼いでいたい」

 と思わせることで、やつらを安心されておく。

 そして、いきなり、会社に通達が来たと言って、やつらを呼び出す。

「君たちの就労期間がとっくに過ぎていてビザも切れているということになっている」

 と言われる。

「そうすればいいんですか?」

 と会社の人事部長に聞くと、

「このままでは、強制送還になる。そうして、一度自国に帰ってしまうと、一度違反をしたということで、二度とこの国への入国許可は得ることができない。しかも、他の先進国も同じで、国連を通じて。通達され、ブラックリストに載るんだ」

 と言われ、黒人の顔が真っ白になった。

「どうすればいいんだ。せっかく、この国にこれたことを喜んでいたのに……」

 というと、

「一つだけ、方法がある」

 というではないか。

「どうすればいいんですか?」

 と聞くと、

「君たちが我が国の国民になるということだよ。この国の国民になると、今までのような、外国人だから、余計な手続きや確認が必要だったと思うが、そんな煩わしいことも減ってくる。もちろん、完全な我が国の国民というわけではないので、一定の制限はかかることにはなるけどね。このまま強制送還させられると、下手をすれば、帰国後すぐに逮捕ということもありえるんじゃないかな? それでもいいと言えばそれでもいいんだけど、こちらの国で、少々の制限を受けたとしても、ここで暮らしているうちに、徐々に権利を取得できるようになる。数年で本当のこの国の国民になれるんだよ。どっちがいいかな?」

 と言われた。

 このままなら帰国させられて逮捕などということになると、とんでもない。答えは決まっていた。

「君たちのような連中はたくさんいるんだ。仲間がたくさんいるということは、それだけでも安心だろう?」

 と、言われ、背中を押された気がした。

「確かに過去にも例があれば、悪い話ではないだろう」

 と、ここで普通は皆、シャッポを脱ぐことになるのだった。

 そうやって、皆、この国の国民になるための契約書にサインをする。それが、いわゆる人身売買契約書だ。

 名目としては、

「外国人身分保障証明書」

 といういかにもという名前であり、表向きの内容は、完全な平等な契約だった。

 しかし、それに付随して、

「即時帰化者就労契約書」

 というのも同時に書かされる。

 そちらには、就労に関しての取り決めが書かれていて、そこには、たくさん厳しい制限が書かれていた。要するに細かい、労働に関しての取り決めであった。

 なぜ別れているのかというと、建前上は、

「雇用側が、業種も様々で、これだけ細かい行動制限まで記された契約書を作るのだから、契約書は、一つとして同じものは存在しえない」

 ということで、本当に細かく記されている。

 起床時間から、就寝時間までのタイムチャートから、してはいけないことや、少ないが権利の認められていること、そして、それを破った時の処罰の仕方まで書かれているのだ。

 こんな契約書は、土地建物売買契約にも、ここまで書かれているわけではない。そして、罰則も厳しいものだった。

 そうやって、表向きの、

「外国人身分保障証明書」

 に対しては、雇い主は、あくまでも、

「滞在保証人」

 ということでる。

 外国人は、未成年よりも、制限が厳しい。そのすべてを代理人の許可がなければできないのだった。

 ただ、代理人が認めればほぼ問題なく、国家によって裁かれることはない。

「政府による外国人就労不介入の法律」

 というのも成立していた。

 ということは逆にいえば、

「外国人が、代理人から迫害を受けていたとしても、国家が介入できない」

 ということで、彼らは、代理人という立場の雇用主から、逃れることはできなくなるのだ。

 これが、この国における、

「奴隷制度」

 であった。

 この国自体が、民間に口を出してはいけないという体質になっていて、国家は、ほとんど介入できない。

 彼らは雇い主である企業から、死ぬまでこき使われることになる。

 入国時は、気軽に声をかけ、この国の人間は親切だということを印象付け、実際には、不介入を盾に、奴隷として扱う。

 国家にはどうすることもできない。

 できないどころか、企業とグルなのだから、

「奴隷は死ぬまで奴隷だ」

 ということになるのだ。

 そんなやつらを雇うことができるようになり、国家が口出しをしないということで、企業側から、国家に闇金が回るのだ。

 これが、

「国家ぐるみの人身売買であり。そこに人権などというものは存在しない。そもそも外国人は、入国した時点で、人権などないのだ。

 さんざん甘い口を開いておいて、実際には奴隷としてこき使うことができるような体制を作っていたのだ。

「俺たちは、騙されたんだ」

 と、すぐにはピンとこないようなカラクリになっているのだろうが、いかんせん、彼らの頭脳は天才レベルであった。

 奴隷としてこき使われるのは、本当は嫌だったが、本国に強制送還させられるのも嫌だった。

「これだけ、この国の素晴らしさを見せつけられたら、もう、元の国に戻ることもできない。一度踏み出してしまった足を退かせることもできず、自分が、騙されているという感覚にならないように、最初から計算された自体だった。要するに、気づいた時には、もう遅いということであろう」

 そんな風に、奴隷たちは感じることだろう。

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