第34話 線路はどこまで続く
竹林を越えた先に線路があった。線路はボロボロで、草木も刈られずに生え放題の伸び放題という有様だった。こういう線路のことを廃線路と呼ぶのだろうか? 涼真はよく知らないが、周囲が緑に囲まれた場所に線路が延びていることに少し違和感を覚える。
自然の中に明らかな人工物が混ざっているのだから違和感も持つだろうが、それよりも奇妙なのは自然物と人工物が当たり前のように混ざり合ってそこにあることに違和感があるのかもしれなかった。
「これ、どこに続いているんだろう」
涼真の言葉に翠が反応する。
「もちろんどこまでも」
いや線路は続くよどこまでも、は歌の話だ。どこまでも延びている線路は存在しない。
「電車の気持ちになってみようか」
翠が線路を指さして言う。
「線路を進むってことだね」
独特な言い回しだなと思いながらもそれを理解している自分に驚く。
線路の上を歩く。木の葉の隙間を通り抜ける陽光が地面にまだら模様を描く。葉の擦れる音が立体的に響いている。
列車が通ることはないが、たまに後ろを振り返ってみる。
昔はこの場所を列車が走っていたのだ。その歴史を重ねて今を歩いていく。
目の前にいるのは後ろ向きに歩く翠の姿だ。危ないなあと思いながらもそれを指摘することはない。錆びた線路を踏み、伸びた雑草をかき分けていく。
それはどこまでも続いていくかのように思えたが、線路は二十分は歩いたところで途切れていた。
「意外と短かったね」
「そうだね」
翠の言葉に同意する。
「まあでも、もう少し歩いてみようか」
翠はそのまま線路の途切れた先に歩いていく。
列車は線路の上を辿ることしかできないが涼真たちは違う。自分の足でどこまでだって歩いて行ける。
涼真は翠の後ろ姿を追いかけて、線路の外れた道を歩きだす。どこに向かうのかわからない。
だけど涼真は翠に追いつき、横並びに歩いていく。
この道はきっとどこまでも続いていく。
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