第30話
薬を飲み始めて、一月が経った頃である。常に眠気が襲ってくるのでぼんやりとした毎日を送る。
「本当にこの薬きているの?」
という疑いがどうしても拭えない。
母親も
「里莉ちゃん、何だか薬を飲めば飲むほど何だか逆に元気がなくなったみたいね。」
お医者にも、そのことを話すとあなたの症状が重くなっているので、薬を飲まなかったら更に症状が重くなるとのことだった。挙げ句、更に薬の量が増えたのは言うまでもない。
そんなわけで、診察に行く度に症状は重くなるは、症状が重くなれば薬は増えるはで、気がついたときには4種類、一日14錠も飲む羽目になった。いつかは復学したいと思っても、眠くてしょうがない。こんなことでは、復学はおろか布団から出るのも至難の業となってしまった。
何だか頭の中に、ごみがはち切れんばかりにたまって今にも吐き出しそうである。たまに沙羅からメールが来るのが唯一の外界との交信となっている。沙羅の方は順調に恋人との交際も勉強も部活も充実しているようだ。
風呂に入るだけでも一仕事になりつつある。服を脱いでいくのが本当にめんどくさい。それでも、心の何処かで
「身だしなみだけはきちんとしなければ。」
という、古くさい考え方かも知れないが女性としての「最後の砦」だけは失いたくない。
「薬はもううんざりだ。」
そう思った私は思いきって薬をゴミ箱に捨てた。もうあの病院にも行くつもりはない。自分でなんとか治すんだ。そう思うと心の中に、大学にも復学できるかもしれない。一縷の望みが出てきた。
休学してから、初めて気付いたことなのだが、普通に大学とか高校とか職場とか、毎日出かける目的があることがどれほどありがたいことかと思う。毎日無目的に生きることが、これほど辛いとは夢にも思わなかった。
確かに、薬をやめた翌日からは、あの嫌なだるさや眠気が全く襲ってこない。やはり、薬は副作用があるから怖いのだ。
「これなら、来週にでも復学届を出そう。」
「すぐにでも、学校に行きたい!」
そう言って、母と話していたその晩・・・
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