第12話

「アーセタちゃん、聖人様を手伝ってるんだね。昨日よりも聖人様の雰囲気が柔らかかったのは、アーセタちゃんのお陰かな?」

 町で買い物をしていた近所のおばちゃんが、にっこりと笑って応援してくれた。

「そうだといいんだけどね。あの人が辛くならないようにがんばるね」

 アーセタは笑顔でおばちゃんに返すと、手を振って分かれた。

「おお、アーセタちゃん。さっきの接客は気持ちが良かったよ。ああいう風に言ってもらえると、ちょっとくらい待たされても我慢できるよ」

 さっき教会を訪れた、畑仕事の最中に腰を痛めてしまったおじいさんが、微笑みながら手を振りながら声を掛けてくれた。

「ああ。待たせちゃってごめんねぇ。もう大丈夫?」

「ああ、もう大丈夫だよ。ありがとう」

 アーセタが笑顔で答えると、おじいさんは穏やかな顔で笑ってくれた。喜んでくれるおじいさんを見ていると、自分も嬉しくなって、アーセタも破顔すると、手を振って答えた。

 アーセタはその後も、教会に来てくれた人々や町の人と挨拶を交わしながら山へ向かった。

 湧き水が出ている場所は、苔が多くて滑りやすかったり、岩場で足場が悪かったりと、危険を伴う場所が多い。ここは岩の中が刳り抜かれて湧き水が噴水のように噴出している、アーセタが見つけた安全に水が汲める安全な場所だ。アーセタはペットボトル数個に水を汲んだ。

「これでよし」

 綺麗な水を太陽に透かして見つめると、透明な水に満足して微笑んで呟いた。

 ペットボトルをバッグに詰めると、山を下って教会に向かった。

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