第6話 災禍のデート(後編)

 急に現れた過ぎ去った厄災。溜まったストレス。メイへの申し訳なさ。頭がぐちゃぐちゃだった。


 すぐにその場から離れ、なんとか死体と火事の件からは逃げきることができた。


「メイっ、ごめん遅くなった!」

「恵梨さん、大丈夫ですか?そっちの方から火事が······、」


 「大丈夫」と言って遮り、受け取っておいてくれたクレープを貰う。


「気を取り直して、行こうか。」


 不幸中の幸いか、それ以降は特になにもなくデートは順調だった。


 新しい服を買った後、唯一のデートプランを進行した。


「ここ、来てみたかったんだよ。」

「綺麗ですね!」


 冬季限定開催のイルミネーション。告白したときとは違う場所だが、華やかさはそれ以上だった。


 白と青で彩られた木々には赤いリボンがくくりつけられている。このリボンは恋人との幸せを祈るものらしい。


 2人で新たなリボンを結び、なるべく高いところにつけた。


「素敵なイベントですね。」

「毎年大人気らしいよ。」


 歩きながら、タイミングを窺う。するとメイの靴紐がほどけた。


 今しかない。この好機を逃すわけにはいかない。


 メイが結び終わり、立ち上がったとき、すかさずその細い首に手を回し、それを着けた。


「っ!」

「プレゼント。受け取って?」


 白色の三つ葉の形のネックレス。先日ふと立ち寄った店で見つけ、この日のために買ってきた。


「記念日でも特別な日でもないけど、なんとなく。日頃の感謝ってところかな。」

「······ありがとうございます。」


 優しい笑みを浮かべ、恥ずかしそうに耳を赤くした。可愛らしくて、こちらも照れてくる。


「そろそろ帰ろうか。」

「そうですね。素敵な思いでもできましたし。」


 メイは体を寄せて私の左腕に抱きついて歩く。私は左腕に全神経を集中させつつ、歩調を合わせた。


─帰宅後────────────────


 一緒にベッドに横になったとき、メイがまだネックレスを着けているのに気づいた。


 メイはもう寝てしまっている。それをいいことに、私はメイの首にキスをした。


 今日は面倒事もあった。今後が憂鬱になるが、少なくとも今日は、いい夢が見れそうだった。

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