第23話 ここで生きてく理由



 一心不乱の総勢の立ち回りに突き動かされる様に魂からのテレパスの檄を飛ばすルナ。


《ガンバレ―ッ》


 狂おしい程の熱を帯びたテレパスを受け、更に勢いづく少年少女たち。


 全員戦いの手を緩める事なく、腹を見せて弱った魔物へ業火を浴びせかける。

 しかしその間にも反撃の触手に数人が刺されて倒れる。


 その最中、炎の攻撃が腹にヒットした時だけ触手の攻撃をやめ、脇の下らしき部位を締めてることに気づいた仲間が射手にテレパス。


《その脇に耳みたいのがある! 多分それで俺らを感知して狙って来てるっ!》


 と受け止めるや、決死のダイブでその三体の感覚器官をすかさず射ぬく。


『ピギィ~~~~~ッ』


 腹を上にバタつく異形の魔物達。それは弱点でもあった。更にジャミングの追い打ちにより魔力が霧消し、急速に動きが萎えて間もなく潰えた。



「「「 やったあ!!! 」」」


 思わず全員で歓声を上げる。その瞬間ステータスも大きく上がり、ルナも


《キミ達、やったね! エラいよ!》


 とテレパス、つい涙混じりの笑顔が弾ける。

 全員が晴れやかな達成感で見渡し合う。


 ―――そこへ妙な気配に気付くルナ。


 ……これは魔法の転移!……


 魔界瞬間移動で加勢にきた巨体の魔導師が出現。

 即座に治癒魔法で異形を復活させた。

『あんなに苦労して……』

 血の気が失せる若者たち。


 魔導師はその隙にパーティーリーダーを術で宙高く持ち上げ、悲鳴を上げさせる間さえ与えず叩き落とす。 地面へ激突寸前、


 ピシュンッ――――ズザザザザ……


 まるで滑るように割り込んで受け止めるルナ。


《アイツ、魔力のステータスが三万……キミ達の手に余る……ボクがやるよ……》


《でも……》

 悔しそうにしながら、諦めない強い意思を見せる少年達。だが厳しい眼差しのルナ。



《ボクは武道をやってた。段違いの人とやらせてもらえる程甘くなかったよ。戦いたければ実力付けてからにしろと叱られた。

 ――――それが勝負の世界だ!

 それにキミたちは素晴らしい活躍をした。目標もちゃんと達成したんだよ! だから無理はダメだ》



《分かりました……お願いします》


 ……それだけじゃない、ボクが今後この世界で魂を込めて戦う意味……


 セイカちゃんを救う為だけじゃない。

 ボクがここで生きてく理由に目覚めさせてくれたんだ! それこそがキミ達のここでの最大の活躍なんだよ!!


 熱い想いで鼓動ビートを刻み始める心臓。


 そう、この世界の敵達にとってその活躍がサイコーに嫌なものだったと思い知らせてやりたい!



 ――― 今のボクは…………強いっ!



「いくぞ最大倍速っ! 素手で充分! ソニック連打っ!!」


 ドゴオォォォォォ―――――――ンッ


 突如巻き起こる爆圧と震動。

 全く見えない速さの突きからの後ろ回し蹴りで瞬時に異形の怪物三体がバラバラに。




[ ▼挿絵 ]

https://kakuyomu.jp/users/kei-star/news/16818093075462676708




『スゲェ……』


 あまりの猛威にパーティーメンバーは思わず声を漏らす。


「ヌヌ~……」

 慌てた魔導師は警戒し、先程と同様に遥か天高く離れ、そして


「ヌゥン!」


 とルナを魔術で宙高く持ち上げる。

 ルナは腰の鞘からロッドヌンチャクを逆手に取り出し、


 死の鉤爪リーサル・クロウ! 〈裂閃ティア――ッ 〉



 フィジカルステ―タスばかり突出している……

『絶対に届かぬ筈』と、その油断へ制裁の一撃。


 ブシャッ……


 見えない超速のムチと超振動のカギヅメの猛威が百M以上先の魔導師を一瞬でバラバラに裂く。

 それはあたかも手を振り出すと同時に遥か先でモノが散る手品を見ているよう。


 そのまま落下したルナは何事もなく猫のようにクルッと降り立つ。

 万倍フィジカルでの体術・耐力はどんな高さからの落下でも物ともしない。


 そして死の鉤爪リーサルクロウの射程距離が伸びたのは、ルナの魔力の潜在能力ポテンシャルが少年達の熱い想いによって引き出されたものだった。



   * *



「危ないところ有難うございます。サスガです!」


「礼を言うならこっちの方。それに力を合わせる強さも知れた……。絶対にキミたちは強くなる。そしてその想いはきっとこの世界をも変えてゆくよ!

 けどステップアップは着実にね。悲しい思いだけはさせない方がいいに決まってる!」


『はいっっ!』



 そうして10人全員から代わる代わる讚えられ、少し照れるルナ。皆と連絡先を交換する。

 こんな体験。ルナにとって掛け替えのない時間を共有した。




 その後、パーティ同士でも労をねぎらい称え合う姿が。ホッとするひと時。

 生死を賭けて共闘した者だけが得られる同胞感に包まれて、また頑張ろうな、と励まし合っている。

 

 それを見て少し羨ましく思うルナ。

 力を合わせる有意義さをまざまざと感じたルナは、このパーティへの加入希望を申し出る。


 しかし。


「嬉しいけど力が未だつり合わないから……」

 と、やんわり辞退された。そっか、と言いながらぎこちない作り笑顔で寂しさを隠すルナ。


 そこで再びの共闘を約束し、大きく手を振って別れていった。


 別れ際、振り返ってルナを見送るパーティーメンバーの少女がそこに見たもの。あのルナの先程までの雄姿は何処へやら、その背中は驚くほど小さく、そして淋しげに見えた。

 


   **



 家路の途中、ルナは異世界への転生先は神の意思で決まると神官が言っていた事を思い出す。


 自分が徳を持ってこの世界へ送られたその意味、そして少年少女の見せた決意のテレパスを思い返し、今一度噛み締め直していた。



 この世界に転生うまれてきた意味!

 ―――誰かの為に生きて、死ぬ。

      だから戦うんだ!



 お兄ちゃん……そう思ってくれてたんだね。やっとわかったよ。


 やっぱり恩返し、しなきゃだね……。


 そして今日はちょっと強くなれたよ。

 だから、少しだけ……褒めて貰えますか……?




[ ▼挿絵 ]

https://kakuyomu.jp/users/kei-star/news/16818093075462683855




 その仰ぎ見る夕焼けの空。

 まるで見守る様に一番星が輝いていた。








< continue to next time >


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マイナスからスタート地点にやっと戻れたルナ。

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