第22話 この世界に転生(うま)れてきた意味



 後日―――

 アジト地図を頼りにまた別のパーティーに出逢うルナ。


 同じくアジト潰しだ。それはかなりの若人で構成されたパーティーだった。


 転生後、仲間同士で訓練をして来た好印象な10人組で、前世ではボランティア活動で徳を上げた、あどけなささえ残る青少年たちだった。



[ ▼挿絵 ]

https://kakuyomu.jp/users/kei-star/news/16818093075597613902




 当時送迎のバスが崖から転落、惜しくも若い命が絶たれた悲運の境遇だった。それ故この世界に集団召喚された、今も正義の心が行動原理の若者達である。


 ステータスは各種倍率をかけた状態で〈魔力、サイ、物理フィジカル〉の平均が〈三千、四百、十〉といった数値だけ見ればかなり未熟な者達だ。転生してまだ日も浅いと言う。


 にしても得意ステータスが平均三千程度の魔力って……

 こんなので大丈夫かな……


 ルナの心配とは逆に、小さなステータスでも百%使いこなせればかなりの事が出来る。故にこの若者達の力でどこ迄やれるのかもルナにとっては勉強の対象だった。


「初めまして、新参者のルナです! 本日はよろしく!」


「はい。私達も経験がまだまだのパーティーなので、何かあったら助け合って行きましょう……ってその名前、確か国境戦で有名になった凄いフィジカルの人! 心強いです!」


 ウン、ガンバるね、と言って前回同様に最近の危険な魔物召喚の傾向を伝えると、


「うん、ありがとう、十分気を付けます。ただワガママ言わせてもらえれば少しでもステータスを上げたいから、今回は危ない時だけお願い出来るとありがたいのだけど……」


「了解。ボク、こないだも先に色々見れて勉強になったし、必要な時いつでも呼んで!」


 アジト付近へ到着し会話をテレパスに替え、この人数でも意志は余さず共有。先日のグループと違った意味で連携に優れていた。


 突入準備で魔法の蚊を飛ばして偵察すると、その映像は魔法の鏡に映し出される。拐われた者はいなかったが……。


 3M近い異形の魔物が通常サイズの人に化けてゆく姿が。


 今から街へ人拐いに行く所だ。3体のそれと地下側勢力についた邪妖精ゴブリン2体がバッテリーカーに乗ってまさに出ようとする。


《よし、今だ!》


 後部ウィンドウに爆裂魔法で攻撃開始。

 

『ドゴォォン』


 その穴から車内へ、更にバッテリーにも全員魔法で集中放火。


 小さい魔力も合わせて強化し、引火させ爆発炎上。出発を阻止させて邪妖精2体は即死。


 だが魔物3体はそれに耐え、怒りながら元の異形に戻って襲い掛かって来る。僅かに人型を保った真っ黒なその体はグモグモと部分変形して魔力に溜めを作っている。




[ ▼挿絵 ]

https://kakuyomu.jp/users/kei-star/news/16818093075462689761





《喰らえっ!》


 若き剣士ソードマンが穿つ魔剣も刃が立たず、逆に幾つもの触手を弾丸並みの勢いで体からヤリ状に射出、


〈〈マルチバリアッ!〉〉


 剣士の危機に仲間数人の多重バリアで防御。

 更に後方支援からはジャミングと魔弓で援護。

 

 それにより隙が生じる。即座に位置を変える魔物。

 無数の槍状触手が再び襲う。

 それから突き飛ばし仲間を庇う少女。


〈〈治癒ヒール!〉〉


 次々刺傷する仲間達を間髪入れず治癒ヒールする後方組。

 援護で数人合わせた火炎攻撃が炸裂。

 更に風魔法で炎を煽ると10倍に勢いを増す。

 高速移動のバリア係りの陰から魔弓で牽制。


 烈しく入れ代わり立ち代わり縦横無尽に攻撃。

 間断なく仲間を気遣い合う攻と守。


 ――――それは見事な連携。




 スゴイ……皆が皆を見てる!……

 こんな小さな力でもあんなにも戦えてる!


 凝望のルナ。鳥肌が立ち、心が震える。


 ……ボクには無い力……



 そのせめぎ合いは一進一退だが油断もなく士気が衰える様子もない。心を動かされるも、気を揉むルナは身を乗り出して出動体勢で構える。


 つい口から意志が漏れ出る。


「ねえ! もう行ってもいいっ ?!」


 触手槍に腕や脇、頬を切り裂かれ小さく呻きつつも


《未だ……あと少しやらせて下さい!》


 怯まず立ち向かい火炎魔法を浴びせる少女。

 同時に水魔法、そして圧搾空気を数十個所。

 スチーム爆発で覆い、視聴覚を撹乱。

 遥か上空に備えていた大岩玉をマッハで落とす。


 つたない力に対しその戦い方は堂々としていた。


 その強烈な猛撃によりダメージを食らい、身体槍化が鈍る。気圧されて動きが半減する化け物。更にジャミングで動きを完全に止めた。



 隙をつき力をためる一同。

 ―――そして凛と響く決意のテレパス。



《それでも私達は闘うのよ!……だって、さらわれた可哀そうな子たちを考えたらっ!》


《そうさ、人の役に立ちたいその一心で集まっていたのに死んでしまったオレ達。でも召喚により再びそのチャンスが与えられた。だったらその死を無駄にしたくない!》


 決意のリレーと共に、パワ―サプライのパス回しで超振動魔力波ヴァイブショックウェーブのエナジーを寄せ合ってグングン増大させて行く。


《だから例えどれだけコイツらにおびやかされようと、アタシ達が何もしないで逃げ回ってこの異世界で生き延びたところで何になるのっ!》


《前世の記憶のある僕たちが、徳を持って転生うま

 誰かの為に生きて、死ぬ。だから戦うんだ!――》



 愕然と息を止めたルナ。

     その一瞬、兄の笑顔がよぎった。


 ――この世界に生まれてきた意味、

     ルナが教えてくれたんだよ―― 




 支え切れないほど巨大化した魔力塊がそのアンカーの手から爆裂発動され魔物へブチかまされると




[ ▼挿絵 ]

https://kakuyomu.jp/users/kei-star/news/16818093075597599774





 ズヴュ―――――――――――――ンンン


 魔物らは全身が千切れる程激しく振動・痙攣、青黒い血を吹き出して卒倒した。


 ルナは刮目したまま涙を流し、想いを溢れさせた。


 あの日、分からなかった兄の真意。

 胸にいつまでも引っ掛かっていたもの。


〈そうか……そうか!……そう言う事だったのか!

 私の為に生きて……戦って……そして……死……んくぅ……〉




[ ▼挿絵 ]

https://kakuyomu.jp/users/kei-star/news/16818093075597606596




 奥歯を噛み締め涙を呑みこみ、キッと前を見据えると、ルナの今出来る全力の激励の念の叫びを飛ばす。


《ガンバレ――ッ!》



 今すぐにでも飛び出したかったが拳を握りしめ必死にこらえ見守るルナ。









< continue to next time >


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兄の真意の一つをやっと理解したルナ。

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イメージBGM   (youtube)

▼『ERAM』

https://youtu.be/OtlrhzqXPTE

(この少年少女パーティーの決意のテレパスが、この後のルナに大きな影響を与える。この子たちの知恵と勇気を現す勇壮な闘いぶりに余りにもピッタリな曲。潜入から敵撃破までに)

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