第24話 秘策

 あれから様々なお店を訪ねてみた結果、俺は付け髭とメガネをすることになり、香織は化粧で誤魔化す事となった。


「おまたせー!」


「いや、全然待ってない…!?」


 化粧をして誤魔化すと言ったが、流石に厚化粧過ぎないか? 見事なまでに真っ白だ、例えるなら京都の芸者さんの様な姿に近い。


「えっと…自分でやったのか?」


「うん! 初めてのお化粧だったから緊張したよ」


「大野さんに確認は取ったか?」


「えっ、お姉ちゃんに? これから取ってくる所だけど」


「そっか、逝ってらっしゃい」


 確実に雷が落ちるな…


「うん!行ってくるね!」


 香織が立ち去って数分すると、大野さんの少し大きな怒声が聞こえてきた。


 〇


「こうなるって分かってたなら教えてよ!」


 見事なまでに綺麗な化粧をした、香織が怒りながらやってくる。


「いやいや、大野さんから見てもらった方が絶対に上手くいくと思ったから!」


「確かにそうだけど…」と拗ねたように言う。


「あっ、それと聞きたい事があるの」


 さっきとは打って変わり、頬を染めて質問をしてくる。


「化粧とか、初めてだから分からないけど、その…どうかな?」


 なんて破壊力なんだ…! 最近こういった場面に多く遭遇した気がするが、今回は桁違いだ。何せ、今の香織は普段の美少女っぷりに更に磨きがかかっている。化粧をしてない時でさえ、俺の心にグッと来たのに、今の状況で、この表情は反則すぎる…!


「綺麗だと…思う」


 俺は赤くなった顔を見られないように俯きながら返す。それに気づいたのか香織も更に赤くなり、お互い無言のまま大野さんが来るまで、目を背けあっていた。


「何をしてるのよ」


「い、いや! 別に何もしてないよ!」


「そ、そうですよ」


 慌てて弁明をする俺達を呆れた顔で見る。


「緊張感がないわね」


「すいません····」


「仲がいいのは嬉しいけれど」



 〇



「俺は後からビルに向かってもいいですか?」


「あら、何か作戦でも思いついたのかしら?」


「大体そんなところです」


「一時間よ。それまでにビルに戻ってきなさい」


「分かりました」


 俺と大野さんが二人で話していると香織も話に加わってきた。


「何話してるのー?」


「怪盗の作戦についてだ」


「作戦····!」


 目をキラキラとさせた香織に作戦の内容を話す。


「確かに、それなら上手くいくかもね!」


「セカンドプランも考えているから安心してくれ」


「セカンドプラン····!」


 これも琴線に触れたらしく、さっきよりも目に光が増す 。俺はそんなに香織を後目に、作戦のため街へと向かうのだった。



 〇



 という事で無事に一時間以内に戻ることができ、今からビルに入る所である。気になる作戦は是非とも実際の現場でお披露目させていただきたい…って、一体俺は誰に、これを言ってるんだ? まあいいか…

 そして、今から香織と夫婦としてパーティーに参加する訳だが、かなり緊張するな。香織も夫婦らしく振る舞う事に緊張しているのか握った手が震えている。


「よし行くぞ」


「うん…!」


 いい顔になったな。さて、今から1000万円が動く大仕事だ。緊張の中に確かな興奮がある事を知り、薄く笑みが浮かべる。先ずは受付からだな····


「Thank you for coming.Please present your invitation.」


「off course」


 招待状を差し出す。しかし香織は首を傾げながら、返事をしていた。


「おーけー?」


 そう言えば、香織は勉強が苦手だったな…


「招待状を見せて欲しいだってさ」


「なるほど····英語は苦手だから、相棒に任せるよ····!」


「ここではダーリンだったね」と付け足す。

 普通に名前で良くないか?


「ここから先も英語で話すなんて大変だね」


「色々な国籍の人が来てるから仕方のない話だな」


 二人で話しながらビルの中に入る。後ろの方に山口達が見えたが、今の俺達は完璧な変装をしているので大丈夫なはずだ。


「今から始まるね!」


 少し興奮気味に話す


「ああ、show timeって奴だな」


「英語はやめて」


「あっ、悪かった…」


 先程の興奮はどこに行ったのか、冷めきった様に返された。これから先も英語を使うのは気を付けよう····

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