第23話 予期せぬ出会い
夕食を食べた後、長旅の疲れからか寝てしまい。ハワイでの初めての朝を迎えた。
「あー、よく寝た」
俺は朝日でも浴びようかと廊下を歩いていた。
「おはよう!」
「ああ、おはよう」
どうやら香織も起きていたらしい。
「大野さんは?」
「休みの日は基本お昼まで寝てるからまだ寝てるよ」
意外と私生活はだらしないのか? 俺は失礼ながら、そう考えてしまう。
「昨日お姉ちゃんから聞いたんだけど、朝ごはんはバイキング形式で好きに食べに行っていいらしいよ」
「マジで?」
バイキングとか最高じゃないか、俺はスキップでもしたくなるような軽い足取りで食堂へと向かった。
〇
食事はかなり美味しかった。何より初めて食べるラウラウという料理が、最高だった。
ラウラウとはハワイの伝統料理でタロ芋の葉でお肉を包み蒸し焼きにしたものだ。それ以外にもロコモコやガーリックシュリンプも、満腹になるほど食べた。
「美味しかったねー」
「確かに美味かったな」
さて食事は終えたとして、これから何をしようか、食事中に聞いた話だが、アロヒビルでのパーティーは17時以降から開催らしく。それ以外の用事でビルに入ることはできないらしい。
となると、夜まで待つしかないと言うのが現状だ。
幸いにも、まだまだ観光したい場所は沢山あるので、暇つぶしには困らないが、大野さんに何も告げず勝手に出ていって大丈夫なのだろうか?
「そう言えば、お姉ちゃんから伝言があるよ。16時にはホテルに帰ってきて欲しいけど、それ以外の時間は、自由にしていいって」
マジか…つまりはハワイを楽しんでいいって訳だ。
「それなら海にでも泳ぎに行くか?お昼まで遊んでご飯を食べて、それから観光や買い物でもするのはどうだ?」
「おお!いいね!」
そうと決まれば善は急げだ。俺達は事前に準備してきた水着や着替えを取りに行き海に向かうことにした。
〇
「もしかして香織?」
俺達は海に向かう途中で思いがけない出会いをしてしまった。
「え····? もしかして寝子か!?」
「ええ!? な、何でここに居るの!?」
「それはこっちのセリフだけど····用事があるから旅行には行けないって言ってなかったっけ?」
どうやら香織は寝子から旅行に行くことを誘われていたようだ。
「え、あ····うん用事で来てるだけだよ····?」
「それなら何で晶もいるの?」
「俺か? えっと····それはだな」
俺が話そうとすると寝子と一緒に来ていた人達もやって来たようだ。
「そこで何をしているのかな」
「海に行かないの丘咲さん」
やってきた人物は来栖と山口だった。
「って、ええ!? 何で晶がいるの!」
「溝口くんに大野さんじゃないか」
最悪のブッキングだ。というか、日にちまで被るなんてことがあるのかよ!?
「もしかして、もう付き合っていてデートとか?」
山口よ、その怖そうな顔はやめてくれ。
「それは私も思ってた。ねえ、どうなの?」
便乗して寝子も詰めてくる。
「そ、そんな! デートなんかじゃないよ····?」
香織が照れながら否定する。というか照れているせいか余計にデートっぽく捉えられる気がするんだが。
「ふーん、やっぱりデートなんだ?」
「違うんだ!」
「別に隠さなくてもいいじゃん」
「本当に違うからな!」
何か言い訳を探さないと、素直に怪盗の用事でなんて話すのは絶対ににダメだからな。
ここはどうすべきか····
「お····お姉ちゃんがハワイで警察官の仕事をするんだよ! それで将来警察官になるっていう晶くんに見学に来ないかって話になって」
香織ナイスだ! 俺も話合わせるように口を開く。
「ほら! あの後、個人的に話を聞くってなってただろ? その時に気に入られてさ!」
どうだ····! この言い訳は!
「何か怪しい気がするなー?」
「仕事の見学ならしょうがないね」
「え?」 「え?」 「え?」
山口から俺へ、そして香織の順番で声を出す。
「ちょっと! 何で二人まで驚いてるの!」
「いや、別に驚いてないけど?」
寝子の奴、チョロすぎないか?
「え?何か変だった?」
「別に変じゃないよ!」
寝子と香織が二人で言い合っている。するとパンっと手を叩く音がして、皆が音のなった方向へと目を向ける。
「まあまあ、デートでもそうじゃ無くてもいいじゃないか」
来栖さん!
「ところで、親戚がアロヒビルの所有者でね。もし良ければだけど、今夜のパーティーに来るかい?」
もしかして、パーティーでも出会うことになるか!? それはヤバいぞ、もし出会ったしまったら言い逃れがもうできない。
「あー、俺達は今日の夕方の便に乗って、日本に帰る予定なんだよ。警察の仕事っていうのも昨日見学してさ」
嘘をつくのは心苦しいが、俺は「すまない」と頭を下げる。それにしても向こうで会わないよう細心の注意が必要になるな。
「誘ってもらったのにごめんね!」
香織も便乗してくれたようで、一緒になって謝ってくれる。
「そうなのかい? それじゃあ、まだ学校でね」
「もう少し、香織ちゃんといたかったけど残念…!」
「二人とも、また夏休みのどっかで遊ぼうね」
どうやら今の危機は脱したようだ。これはかなり大変なことになるな、俺と香織は一旦海に行くのはやめて、近くのカフェで一休みする事にした。
〇
「それで、変装をする道具を貸してほしいって?」
あれから俺達はカフェで一休みをしてお昼頃にホテルに戻ることにした。部屋を尋ねると大野さんが起きていたので、知り合いに会った事を伝える。
「申し訳ないのだけれど、空港の荷物検査で引っかかる可能性があったから、持ってきてないわ」
現地調達するしかないわねと大野さんは言う。
「この辺にそんなお店ってありますっけ?」
「それは探してみないと分からないわよ」
「それなら、ホテルの人達に聴き込むしかないね!」
こうして変装道具を探すため、夕方まで時間を費やす事となった。
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