第14話 これはデートのお誘いか?

「ねぇ映画に行かない?」


 香織が転校してきて一ヶ月が過ぎた頃、俺は丘咲から映画の誘いを受けた。すぐにYESと答え、今は明日に備えて出かける準備をしている。


 そうしていると大野さんから連絡が来た。

『今夜、密輸などをしている大手の会社に予告状を出すわ、日時は次の日の夜になる予定だから時間を開けておいてちょうだい』

 なるほど次の仕事が決まったみたいだ。


 明日か…そうなると朝から映画を見て、その後にお昼ご飯を食べ少し話などをして解散になるな。俺は丘咲に夜までには家に帰るとメールで伝えておく。そしたら丘咲からも『了解』とメールが帰ってきたので、俺は寝ることにした。



 〇



 朝起きてすぐに準備や着替えなどを済ませて、朝ごはんを食べていると父親が見ているニュースが目に入った。そこには昨日の予告状のことが取り上げられていた。どうやら警察官のお偉いさんがインタビューで、絶対に捕まえると宣言しているようだ 。テレビを尻目に朝食を終えて、俺は待ち合わせ場所まで向かった。


 〜移動中〜


 俺が待ち合わせ場所に着くと既に丘咲が待っていた。


「悪い待たせた」


「気にしないで私が早く来ただけだから」


 そう言って楽しそうに映画のパンフレットを眺めていた。それにしてもフードの着いた黒いパーカーに白いズボンか…少し男っぽさもあるが似合うなと思いながら「他は誰か来るのか?」と聞いた。


「誰も来ないけど」


 それを聞いて俺は咄嗟に「デートみたいだな」と口を滑られせてしまった。


「うっさい…!」


 照れたのか丘咲は顔を赤くしながら、前を向いて歩いていった。それを見て可愛いなと思いながら後を付いて行くことにした。


「映画って何を見るんだ?」


 そう俺は映画に誘われたが二つ返事で答えたので何を見るかまでは聞いていなかった。


「そういや言ってなかったね」


 そう言って丘咲はパンフレットの映画を指さした。これは確か、最近上映されたサスペンスものだった気がする。


「ほら私達って警察官を目指す仲だからさ

 その…勉強になるかなって」


 それと面白そうだったからと付け足した。


「俺もサスペンス系統は好きだし楽しみだな」


 そう答えると丘咲はよかったと呟いて嬉しそうにしていた。その後も話は続き、どんな映画が好きなのかというやり取りで盛り上がってた。すると上映の時間がやってきたようで、アナウンスが流れ始めた。

 俺達はそれに従ってシアターの中へと入っていったのだった。



 〇



 無事映画を見終えた俺は丘咲と一緒にファミレスでお昼ご飯を食べに来ていた。


「結構考えさせられる映画だったね」


 映画に出てきた犯人は罪を犯したが、その背景には悲しい過去が関係していた。というサスペンスものだとよくある展開だが、これまでそういった類の映画やドラマを見てこなかった丘咲にとっては新鮮なものに映ったようだ。


「でも実際にこんな事件ってあまりないよね」


「確かに」


 勉強になるかと言われると難しいところだな。


「まあでも面白かった」


 それなら良かったと返し、俺達は注文した料理を食べていく。


「この後、暇?」


 丘咲は少し深刻そうな顔をして、俺にそう問いかけてきた。夜まで予定は無いので暇だと答えた。


「よかった…相談したいことがあってさ」


 お店を後にした俺と丘咲は近くの公園に来ていた。

 公園のベンチに腰掛けて砂場で遊んでいると子供たちを二人で眺めていると、丘咲はぽつぽつと話し始めた。


「駅前の二郎坊っていう居酒屋でバイトをしてるんだけどさ、そこの先輩がちょっと変わっているというか怖いんだよね。

 この前も電話番号とかメアドしつこく聞いてくるし、挙句の果てには家まで着いて来たりさ。今日もバイトがあるから気を紛らわせたくて映画に誘ったんだ。」


 私の都合で誘ってごめんと丘咲は俯きながら呟いた。


「それは別に気にしなくていいけど大丈夫なのか? 警察とかに相談した方が…」


「警察にも相談はしたけど、証拠が云々とかで取り合って貰えなかった」


 まあそうだよな、警察が動く頃には既に事件は起こっているなんてよくある話だ。


「何かあったら連絡してくれ」


 俺はそう言って泣きそうになっている丘咲の頭を撫でた。暫くそうしていると丘咲は突然立ち上がり


「今日はありがとね。私の都合に付き合ってくれて」


 元気が出たと笑って、それじゃバイトに行ってくるねと言って公園を後にした。


 俺はベンチに座りながら、今夜の怪盗のことを考えていたが、頭の中から丘咲に関する嫌な予感が消えてくれなかった…

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