第13話 学校案内
「学校を案内して!」
放課後になったから帰る準備をしていると。香織が後ろの席から声をかけてきた。
「ちょっと待ってろ」
俺は香織にそう伝えるて、担任の先生から学校の構内図を貰ってくる。
「まずはここが図書館でここが運動場だ」
「何で学校の案内図なの!?」
お前と歩いたら目立つからだよと伝えたかったが、流石にそんなことを言ったら調子に乗りそうなので、「めんどくさいから」って言っておく。
「めんどくさいって····」
香織が悲しそうに項垂れていると、後ろから声をかけられた。
「女の子をいじめるとかサイテー!」
「うわっ!山口かよ!」
うわって何よ! と怒りながら山口が香織に声をかける
「私はこいつの幼馴染の山口麻耶よろしく!」
「私は大野香織っていいます
よろしくお願いします!」
山口に声をかけてもらったからか尻尾の幻影が見えるほど嬉しそうにする。そんな香織を見て山口は肩を震わせていた。
「どうしたんだよ?」
「この子····この子····」
うわ言のようにこの子····と呟いていると突然爆発するかのように、走り出し香織のことを抱きしめた。
「この子可愛すぎるんだけどー!!」
どんなテンションなんだ! 俺は山口の初めて見せる姿に驚愕した。
「でへへ」
香織のやつ凄くだらしない顔をしているな。
「はっ!すいませんバブみを感じてました」
バブみとか言うな
「うんうん!今日から私があなたのママだから!」
そして何だこの光景は…俺の邪悪な心が溶かされていくように感じる。そう思いながら二人を拝んで眺めていると山口から声がかかった。
「全く! こんなに可愛い子にいじわるするなんて酷い奴ね!」
そうだ! そうだ! と横で虎の威を借りている香織に、ムカつくので軽くデコピンをしてやった。
「それなら山口が案内したらどうだ?」
「今日は用事があるから無理、だからしっかり案内してあげなよ」
私の娘を泣かしたらしばくと一言残して山口は教室を出ていった。そう言われたら仕方が無いので案内することにする。
「それじゃあ、案内するから行くぞ」
「やったー!」
少し可愛いと思ってしまった····
〇
「ここが図書館だ。ちなみに図書館は本を借りる場所だ」
「そしてここが食堂だ。食堂ではご飯を食べることができるぞ」
「次に紹介するのが運動場で運動をする広場みたいな所だ」
分かりやすい案内を心がけていると、突然香織が話しかけてきた。
「さっきから私のことバカにしてるよね?」
「バカにしてるなんてとんでもない」
「いやいや! 紹介した後に一言つけてるけど、みんな知ってる事だからね!」
「てっきり知らないのかと」
「私の事を何だと思ってるの!?」
ポンコツだけど…そう言ったら泣いてしまうかもしれないので、俺はそっと香織の頭を撫でる。
「あっ気持ちいい…じゃなくて…! 誤魔化されないよ!」
「悪かったって」
「もういい!」
プンプンしながらも、後ろを離れずに着いてくる香織に笑みを浮かべながら、構内の案内を続けて行った。
〇
「そういや友達とかはできたのか?」
「友達?」
少し考えた後、意外な人物を上げた
「寝子ちゃんとは仲良くなったよ」
それに山口さんとも仲良くなれたと嬉しそうに話している。
「丘咲と仲良くなったんだ意外だな」
「そうなの?」
丘咲に同士認定されている俺やコミュニケーション能力がバグってる岸本は置いといて、基本的に丘咲が誰かといる所を見たことがないため意外だと思った。 前までは葛木達とも居たが職場見学での事があってからか一緒にいるところを見なくなった。そうして話している内に、空も茜色に染まってきたので二人で帰ることにした。
「香織の家って徒歩で帰れる距離なのか?」
「学校に通うために引越ししたんだよ」
学校のためだけに!? と驚いていると香織は話を続ける。
「それに私はこの学校に来れてよかったよ」
そう言って悲しそうに笑った
忘れていたが、香織は親の作った借金のせいで、お姉ちゃんと大変な思いをしてきたと言っていた。そうなると今まで高校生活なんてまともに送ることが困難だったはずだ。
俺は涙ぐみながら「幸せな高校生活を送ろうな」と告げた。
そしたら「何で泣いてるの?」明るく笑った後に、小さく「ありがとう」と香織は呟いた。
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