第11話 日常に続く
「香織、起こしてあげて」
「うん!」
大野さんと香織の声で目を覚ました。
「いえ、起きたから大丈夫です」
「それは良かったわ」
「えーと、今どこにいるんですか?」
「あなたの家の前に止めてるわ」
「俺って家の場所言いましたっけ?」
「機密情報よ」
いや、怖ッ!ってそんなことよりも。
「今回の仕事は無事に終わった感じですか?」
大野さんがここにいる時点で終わったとは思うが一応聞いておきたい。
「もちろん、あなたのお陰で何の問題も起きなかったわ」
「あはは…めんぼくない」
そう苦笑いする香織を横目に見て、俺は安堵の息を吐いた。改めて無事に終わったと分かると、凄い安心するな。少し可哀想だし横で苦笑いをしている香織を褒めてあげるか。
「香織が居たからもありますよ。俺一人だったら絶対にできなかったことですし」
「晶くん…!」
眩しいくらいキラキラした笑顔を向けてくる香織を見て、こっちも笑みが零れる。そんな風にお互い笑いあっていると大野さんからも一言声がかけられる。
「後、これがあなたの取り分よ」
そう言って、大野さんは分厚い封筒を渡してきた。
「え!?いやいやこんなに受け取れませんよ!」
その中には50万近くのお札が入っていた。
「正当な対価よ。それにもし、あなたが注意を引いてくれなければ、屋上から他のビルに移る時にバレていた可能性も高いわ」
そうなるとお金は全部パーになってもおかしくなかったと大野さんは話す。
「流石にお金は持っていくよ」
「本当に?」
圧を感じるような笑顔になる大野さん
「ごめんなさい嘘です。多分お金を落としている可能性もあります」
「分かればよろしい」
大野さんと香織のやり取りを見ながらお金について考える。50万なんて大金すぎる。借金の返済だってあるのに、こんなに渡してもいいのか…ただ大野さんからは絶対に返すなという圧を感じるし、とりあえず受け取って貯金しておこう。
「ありがとうございます!」
その言葉に満足したのか大野さんは笑顔になる。
「さて、それじゃあ溝口くんは、ここでお別れね」
「あっそうですね」
「また怪盗の仕事ができたら連絡させてもらうわ」
電話番号が書かれた紙を渡される。
「一つ言い忘れていたわ」
何か嫌な予感がする…
「月曜日から香織もあなたと同じ学校に通うから是非ともよろしくね」
「同じ学校!? てか、よろしくって何ですか!?」
「香織が変なことを言わないように見張ってねって事よ。それに二人は相棒なんだから大丈夫よね」
「私達は相棒だから大丈夫! だから月曜日からよろしくね!」
何度目かになるキラキラした顔を見ながら思う。不安しかないんだよな。そしてさようなら 俺の平和な生活…
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