第9話 隠された財貨
「やけに警備が手薄だな」
屋上から侵入してみたがビルの上層階には全くと言っていいほど人がいない。
「何かの罠の可能性もあるかも」
そう言いながらも軽快に前を歩いていく。
「そう思うなら曲がり角はせめて覗き込んでから行けよ」
「大丈夫だよ 人の気配がしないから!」
「超能力でも持ってんのかよ」
緩い会話をしながら警備が厳重そうな階層まで降りていく。
「ちょっと止まって!」
香織が声を上げる
「どうしたんだ?」
「この下の階から人の気配がする。多分警備が厳重だと思う」
慣れてきた人外発言は無視して「なるほど」と呟く。
「あなた達、今どこにいるのかしら?」
突然イヤホンから声が聞こえた
「うわっ!?びっくりした…」
突然だったこともあり、驚きのあまり大きな声を上げてしまう。
「声が大きいバレちゃうよ?」
「悪い…」
「順調のようね。それと警備の見取り図を入手したわ」
優秀すぎるでしょこの人、俺は要らない子だわ
「マジですか尊敬します!」
「嬉しいわ。それにしても上の人も考えるようになったわね。私達、警察が警備を指定された階層は9階で、実際の金庫は12階にあるそうよ」
「12階ならさっき通ってきたけど、確かに警備は居なかったですね」
そう俺たちは今10階にいる。
「警備が多くいる場所はブラフよ。そこであなた達を待ち構えているつもりよ」
「いや危な…」
「そうと決まれば、今から引き返してこっそりお宝を盗みだす?」
それもありだが、そうなると一つ懸念がある
「あの思ったことがあるんですけど、その情報の通りに12階へ直行した場合、情報の正確さから内部犯を疑われる可能性もあるのでは?」
あくまで可能性だが、結構有り得る話だと思う。
「確かにそうね…」
「金庫なら私が持ち運べると思うから、晶くんが陽動をするのはどうかな?二人いることを宣言したら金庫が無いことに気づいたって事にできるし」
えっ、香織のやつ普通に賢くね? 普段はポンコツだが頭が回る方なのか…しかし問題がある、俺が陽動に行けば確実に捕まると言うことだ。当たり前に言うが逃げ切れるわけがない、一般人だぞ俺は。
「それだと彼は捕まるわ」
流石です姉御。
「警察の服を10階のトイレに隠しておくわ。それを着て警察に紛れてちょうだい、逃げる時に何かアクションを起こせば怪盗の一味だと思われるはずよ」
なるほど確かにアリだ。アクションとなると窓からフックショットを使って逃げるぐらいか…幸い俺の使っているフックショットの安全性は確認されてるからアリだな。
「分かりました。それで行きます」
「それじゃ通信を切るわ」
そう言って通信がプツリと切れる。てか香織のやつは静かだな、ふと香織の方に目を向けると変なポーズを決めていた。
「フッフッフッ! それじゃあ頼むよ相棒」
何だそのテンションは、まあ仕方ないが乗ってやるか。
「そちらこそしくじるなよ相棒」
そんなにキラキラした目で見るな。
「よし作戦開始だね!」
「ああ」
そして俺の初陣が始まった…
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